年の差カップル純愛異世界ダークファンタジー 終末のヴァルキュリア第五話 日常

2018年4月18日

第五話 日常

僕はその場にしばらく、へたり込んでいた。それをみかねたメリッサは、

「このまま、こうしても仕方ないだろ。さあ行くぞ」
「行くってどこへ」

この中世の町でいったいどうすればいいか……

「まずは宿だな、金はある」

彼女は一回転すると鎧姿から民族衣装に着替え、腰に下げている袋のひもを解いて僕に中身をみせてくれた。コインがたくさん入っている。

「一体どこで手に入れたんだ?」
「逃げている途中でくすねた」

夢も希望もない女神様だ。
そこは嘘でも魔法で生み出したとか言ってくれ。でも、この格好じゃあまた悪魔扱いされる。
ぼくがTシャツを引っ張っていると、メリッサはいたずらっ子のように口角を上げて女神様から小悪魔へと変化した。

「そうだなまずはその衣装をどうにかしないとな」

メリッサは右手を背中に持って行き、コッと金属が滑る音がすると。長いナイフのようなものを僕に向かって構える。

「な、何をする気だ!?」
「じっとしていろよ、私は案外器用だからな、調子に乗って喉とかアレとか切り刻むかもしれん」

僕は恐怖で震えていた。彼女のなすがままにされ。メリッサに服を切り刻まれ、布きれ一つない真っ裸にされた。
寒い。

「よし、お次はと……」

この小悪魔は近くにあったズタ袋を一つ一つ確認し、お目当てのものを見つけると僕にその中身をぶちまけた。

「うわ、なんだ!? クサいっ!」

見ると生ゴミだった。僕の身体から生ゴミ独特の酸っぱく生臭い匂いがする。

「よし行くぞ!」

メリッサは僕の手を引っ張る。やめてくれ! そう言いたかったが、どうしてだろう。裸にされたら何故だか文句一つもいえず、ただ言いなりになっていた。

泣きたい……。
メリッサは僕を引っ張り大通りに走り出る。

「きゃあアレ何!?」
「美しい銀髪の少女が汚い裸の男をしょっ引いている!?」
「ママ、なに~、あの人」
「し、見ちゃダメ、目を合わせてはダメよ!」
「クセえぞ! この野郎!!」
「今年もそんな季節になってきたか」

周りから蔑んだ目で見られ、何やらわめいている。

なんだろう――

ここまで悲惨だとむしろ気持ちいい。

はははははははは。
不思議と笑顔がこぼれる。裸って最高! 僕は生まれたままの姿で
オリンピックの100メートル競走の選手の気持ちで走る。僕は無敵だ。何も怖くない。
30代中盤になってくると恥ずかしいものなんてないな。むしろ見てくれ。
僕がニコニコして全裸で走っていると、汚い姿をした老人が僕の道を塞ぐ。おそらく乞食だろう。僕の最悪で最強の姿を見るとニヤリと笑い、道を空けてくれた。

「ふむ、ここだな」

メリッサは、古びた石造りでつくられた2階建ての建物で足を止めた。少し他の建物と比べると小洒落ており多くの人の気配がする。中に入ると中年の夫婦らしき二人が出迎えてくれた。だが、僕の姿に見ると目を細め鼻を塞ぐ。

「おやおや、まあまあなんだいその格好は? ずいぶんとひどい姿じゃないか一体何があったんだい?」

中年の女性は何やら僕の姿を見て、眉をひそめた。

「奴隷市場で買ったんだ。いいだろう?」

メリッサは訳のわからない言葉で答える。

「ひっどい匂いだね。ちゃんと役に立つのかい?」と中年の男は言う。

「育ててみないとわからないな、服貸してもらえないか?このままだとアレだろ?」

メリッサは笑いながら僕の股間を握りつぶす。ぐあっ! 何をするんだこの女は!?

「わかった、古着でよければ用意するよ」

中年の男はいそいそと奥に引っ込んだ。

「服はあげるから、近くの川で沐浴をしておいで。このままじゃあ部屋にあげられないよ」

おかみさんは何やらブチブチ言いながら中年の男性から服をわたされ、中身を確かめて僕に渡す。

「メリッサ、どういうことなんだ? ここは?」
「旅人が泊まる宿だよ。川があるから水浴びしてこいってさ。服もただでもらえた。感謝しろよ、この時代の服は貴重品だからな」

なんとなく、さっきの奇行が理解できたけど、大通りを走る必要があったか?

僕たちは近くの川とやらに行った。メリッサはキョロキョロ見渡す。

「誰もいないぞさあ入れ」

僕は生ゴミで汚れた身体をよく洗った。これでも清潔好きなんだ。毎日シャワーに入るし、歯磨きはするし、ひげも剃る。まあ、当たり前のことか。しばらくしていると後ろから川へ走り込んできた。

メリッサが。

真っ裸で。

川にザブンと全身をつかるとその姿があらわになる。

「ああ、気持ちいい!」

肌は玉のように白く輝いており、髪は柔らかく水を吸い込み、彼女の肌を包む。尻はよく締まっており丸く上にあがって曲線美をあらわしている。乳房は豊かで丸く、乳首のとこがツンと上を向いており、その豊かな丸みから股間にかけて水滴の玉が流れ落ちてくる。

……美しい

ただ、その一言しか思いつかなかった。人は感動すると何も言えなくなる。銀色の髪と川と水滴が、光りに当たってキラキラと輝いている。

天使っていたんだな。心が洗われる。神聖な気持ちに酔っていると、メリッサが呼ぶ。

「おーいお前もこっち来て、水のかけ合いっこしないか?」

僕はふと冷静になる。目の前に裸の少女がいる。乳房、乳首、尻、秘部まで光の下にされている。僕は頬から耳まで赤くなる音を聴いた。心臓がバクバクする。呼吸ができない。
全身が熱くなる。

「ぼ、僕はもう上がるからゆっくり遊びなよ」
「なんだよ、つれないなー」

メリッサはすねた口ぶりで水をジャブジャブして、遊びながら天使の身体をみがいていた。
僕は用意された服を着て、一目散にその場を後にする。町の路地に入ると、動悸が収まらない胸をわしづかみにする。

くそ! 普段動かないくせにこんな時だけ心臓が動きやがる。僕は現代人だ、いろんな映像をテレビやネットで見ている。それでもあんな美しい光景は見たことなかった。

美しかった。美しかった。

その光景を僕だけが見られたことに優越感を感じ、メリッサの身体の映像を反芻する。するとまた全身が熱くなり、悶える。

胸が苦しい……。

フラフラ歩いていると、市の果物のかごに当たりひっくり返す。

「てめえ、何しやがるんだ!」

何やら身体の大きな男が叫んでいる。

「ああ、すみませんわざとじゃないんです」
「何言ってんだ!馬鹿にしてんのか!」

僕は男に硬い拳で殴られた。そうだ言葉が通じないんだ。メリッサを通じてでしかこの世界の人間とコミュニケーションを取れない。メリッサと離れると平穏な町が危険地帯に変わる。それを理解するのに安い代償だった。

口の中を切ったのか、少し血がこぼれた。

「おいお前ら静かにしろ!」
「モンターニュ子爵のお通りだ、道を空けろ!」

何やら色とりどりな固い衣装を着た男が馬に乗ってくる。鎖かたびらの上に鉄の丸い胸当てと肩当てをし、武装した男たちがその周りを囲んでいた。

その一団がやってくる。きらびやかで羽のついた帽子をかぶった、馬上の男は周りをまじまじとにらみ、ゆっくりと一団が進んでいく。

僕は直感した。この男たちは危険だと。僕は周りを見渡す。みんな身動きしないまま、
硬い表情でまっすぐ馬に乗っている男を見つめる。僕はそれを真似をした。

僕の前を一団が過ぎていく。馬上の男はこっちをにらんでくる。目を合わせないように男の胸あたりを見ながら。まっすぐ相対した。

僕の前で一団は止まる。馬上の男は僕をにらんでくる。身動き一つしないよう気をつける。しばらくその状態が続くと、男は鼻を鳴らす。

「フン、外人か」

一団は僕の前から去って行く。心の中で一息しながら、この時間が早く終わるよう祈った。
すると一団はまた止まった。

それはさっきの乞食の老人だった。

老人はニコニコ笑っている。

するときらびやかな服を着た男は突然馬を下り、

剣を抜き、

老人の首を切った……。

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