純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第十二話 紅い月のもとで②

2018年4月23日

第十二話 紅い月のもとで②

「坊や影が少し見えているよ」

ひっそり老婆は呟く。

僕はかまわず一心不乱に老婆にバースト射撃を行った。

激しい音が夜の静寂を破る。連続に弾丸が放たれて反動で手がしびれた。石造りの外壁をこながなにしていく。ゆらりと動く老婆の影。よしこれで……。なっ!?

そこには無傷の老婆がいた。しまった、老婆のつぶやきに動揺したのか? 僕の射撃は外れていた。

 くそっ! 僕はその場から逃げようとする。空を見上げると月を背にしていた。それで、影が見えたのか?

 老婆はすごいスピードで追いかけてくる。速い! 老婆がショートソードを振り上げ光の刃がおそってくる。

 僕が逃げに徹したのが幸いし、なんとか刃をかわす。僕は度々振り返りながら老婆と距離を取ろうとする。だが、老婆の足は速く僕と同じぐらいのスピードで追ってくる。何故こんなにも早い!?

 どうやって距離を取る……? 町を駆け巡る。そう考えているうちに、あたりが騒がしくなっていた。

 祭りだ。夜の中人々が集まり、あるいは踊り、歌っていたり、みたことのないおそらく楽器だろうものを演奏していた。

 この世界にも音楽を楽しむ文化があったのか? 少し感心しながら、ふとあることを思いつく。

 この人混みに紛れてしまえば僕は見つからないのではないのか――? 昼間は明るい。外人がいれば人混みの中でも目につきやすい。だが今は夜だ。顔かたちなどわからない。僕はこの世界の人々が着ている服と同じ服を着ており、フード付きのマントを羽織っている。

 僕は祭りの人々の中に紛れ込んで距離を取ることにした。これで老婆も追ってこないだろう。

 あたりがざわめく。血まみれの老婆が僕に向かって直線的に向かってくるからだ。

なぜ僕の居場所がわかる!?

僕は逃げ出す。僕が殺されるわけにはいかない。メリッサもともに死んでしまう。メリッサのことを思う。

 老婆があんなに返り血を浴びていたということは。相当刺されたと言うことだ。胸が苦しくなる。相当痛かっただろう、あの少女が痛みに苦しむ姿を思い浮かべると胸がはち切れる。

 メリッサ……すまない……

 心の中で懺悔すると決意を新たにする。絶対にあの老婆を倒す。メリッサがうけた痛みは、
千倍にして返す。心が落ち着いてくる。周りを見渡す。

 そこには空き家があった。ドアや窓は取り外されており、硬い石造りの小さな家で、部屋は狭い。中は真っ暗だ。

 その中に入ってみる。外側はぼんやり月明かりで照らされており、外に置いてある木箱やらの影がはっきり見える。しめた! ここは使えるぞ。中の暗い部屋に入れば相手の視界に入らないだろう。

そして、中から外を見れば明るさの差で、敵の姿がはっきり見える。

 僕はここで老婆を待ち構える。しばらくすると、影が伸びてくるのがわかる。

 ゆっくりと足を忍ばせてこの部屋の横をすごそうとしている。老婆の胸あたりに照準が合ったとき、バースト射撃を行う。
 
放たれた銃弾に呼応して影がうごめく。老婆の体が跳ね飛ばされるのがわかった。当たった!

 しかし、老婆はうめき声一つあげずに体を隠す。仕留め損なったか? 近づいて確認してみるか? いや、まてよ。これはやつの手だ。その手には乗らない。

 僕はじっと入り口に銃口を向けて待ち構える。しばらく沈黙の時間が流れる。あたりは静かだ。そうやって時が流れていくと静寂の中に奇妙な音が伝わってきた。

 ズッ、ズッ、ズッ……
何か引きずる音が聞こえる。闇の中から茶色い四角い物が見えてくる。入り口に大きな木箱が現れた。これを盾にして近づくつもりか!

僕はセミオートで木箱を撃ちつくす。木箱がバラバラになる。老婆は……いない?

 ひょいと影が伸びるのがみえる。それを撃つ。

 ドドッと音が鳴り、銃がうなるが途中で音がしなくなる。トリガーを引いてもまん中で固く止まり動かない。射撃が途中で終わってしまった!?  しまった、弾切れだ。

僕は他の武器を探す。火かき棒らしき物しかなかった。僕はMP7A1を捨てて火かき棒に持ち換えようとする。

 それが運の尽きだった。MP7A1を地面に落とした音がしたとき、老婆が一気に襲いかかってくる。

 そうだ、どうせ相手はこの武器の弾の数なんてわからないんだ。このまま銃を構えて外に出れば老婆は警戒して攻撃しなかっただろう。

何故僕は自分の常識を、相手も同じ常識を持っていると思ったのだろう。火かき棒で殴ろうとするもあっさり木の部分を切られ、前のように切れ端を刺そうとするもあっさりかわされる。

 僕は老婆に組み伏せられ。ショートソードの刃を顔の方を向けられ、それを手をつかんで、なんとか攻撃を防ぐ。腕力は僕の方が上だろうが体勢が悪い。体重をかけて光の刃を僕の顔に近づけさせる。

 僕は相手の気を散らそうと話しかけた。

「何故僕をまっすぐ追跡できた? 何故そんなスピードで動ける?」

 老婆は答える。

「教えて欲しいかい?」

 老婆は自分のスカートをまくり上げる。そこには若い少女のような足がついていた。

「ヴァルキュリアと目と足を交換したのさ、ヴァルキュリアの目があれば、たとえ人混みに紛れてもエインヘリャルはわかるし、ヴァルキュリアの足があれば普通の男以上の脚力が持てるのさ。ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

何だと――!

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