純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第十三話 紅い月のもとで③

2018年4月24日

 

第十三話 紅い月のもとで③

 ヴァルキュリアと交換しただと、まさかメリッサと? いや違うな、元から脚力があった。

 そうか! 宿の部屋でメリッサが刺されたとき、メリッサはその異様さに気づいたんだ。

 メリッサは武術の心得がある。不意を突かれたとはいえ間合いの取り方は、熟知していただろう。なのにあっさりと刺されてしまった。

 そのとき、老婆の脚力に脅威を感じたんだ。狭い空間ではあっさりと間合いを詰められ、銃は不利だろう。

だから、僕に逃げろと言ったんだ。

 僕はなんと愚かな選択をしたんだ。わざわざ老婆を、こんな狭い空間に招き入れるなんて、自殺行為だ。

 それにしても、老婆のショートソードの切れ味は鋭い。木とはいえさっくり切ってみせた。

 そうか! これを利用すれば――

 ショートソードを持つ老婆の手を防いでいる僕の手の力を緩める。

徐々に光の刃が僕の顔に近づく。刃が僕の顔を刺そうとするその瞬間――!

 僕は素早く顔を傾け刃をかわす。老婆は体重をかけて力を込めて刃で僕の顔を貫こうとしていた。その力が余って、硬いコンクリートの床に光の刃が刺さる。

 それをなんとか引き抜こうとするが、光の刃は鋭く、深々と刺さっている。僕は老婆との間に足を入れ、蹴り飛ばし。体を起こす。武器を探すと、さっき捨てたMP7A1が地面に落ちていた。

 リトラクタブル・ストックをしまい、そのストックの部分で老婆の頭を殴る。一回、二回、三回、僕は硬いストックの部分で殴りつける。老婆はよろめく。そのとき光の刃が床から抜ける。

 襲ってくる光の刃――

 僕はとっさに利き手の右手で顔をかばおうとする。すると、光の刃は僕の右腕を切り落とした。

 血がドクドクと流れていた。僕はその場から逃げ出した。振り返ると老婆がよろめきながら頭を押さえている。

 脳しんとうだろう。今のうちにこの場から離れよう。

 町中に戻る。

 早く、早く会いたい。

 メリッサは大丈夫だろうか。僕は一心不乱に探す。

 「佑月(ゆづき)!」

メリッサの声が聞こえる。

 「メリッサ!」

 僕は呼びかけに答える。喜びのあまり声がいつもよりも高くなった。

 僕はメリッサの姿を見て、衝撃を受ける。服は切り刻まれ胸、肩、太ももがむき出しになりながら、深く切り刻まれ、血で真っ赤だ。

 他の部分も刺し傷で血で真っ赤に染まった民族衣装で、顔は片目が刺されたのだろう。血が目から流れており、頭も赤く染まっている。全身切り傷でいっぱいだ。

 メリッサは口から血を吐きながら。

「お互い無様な姿になったな、なんだ私に見とれているのか?」

 僕は発狂寸前になりながら、彼女を強く抱きしめる。

 「よかった……よかった……また会えて」

 僕の手は震えていた。彼女の頬をなでようとする。すると僕の右手がないことに改めて気づく。

「あの老婆の気配がする、まだ倒したわけじゃないんだな」

 メリッサは冷静に状況把握をしていた。とりあえず僕たちは老婆から距離を取ることにした。老婆の気配が途切れたとメリッサが言ったところで、僕は老婆との戦いを詳しく話した。

「そうか……ヴァルキュリアの体を部分的に奪ったのか、むごいことをする」

 僕も同感だった、あの老婆の狂気じみた考えに怖気を感じる。メリッサは僕の瞳をまっすぐ見つめ、

「それで、勝算はあるのか? お前は利き手じゃない片手だぞ。武器もまともに扱えまい、どうする?」
「僕に考えがある」

 それを聞いてメリッサは胸をなで下ろし、

「よかった、武器を創れ」

 僕は静かに呟く。

「――メリッサ・ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」

世界が歪む。僕とメリッサ二人だけになる。

「――イメージしろ。お前は何を思い描く? ――」

 僕はメリッサから武器を手渡される。その武器を見てメリッサは不思議そうに言う。

「そんなものでいいのか? もっと……」

 僕は答える。

「いや、これでいい。この武器でやつを倒せる。必ず」

――――――――――――――――――――――――

 紅い月のもと、真っ赤な返り血を浴びた老婆は獲物を探す。(今回の獲物はしぶとい、しかし手を切ってやった。次で仕留めてやろう)

 点々と続く血を老婆はたどる。すると天井が低い、窓やドアが取り外された、狭い空き家へとつづいていた。人の気配を感じる。

 エインヘリャルがそばにいることを強く感じた老婆は獲物の存在を確信する。

(おやおやまた同じ手かい? やつの武器はわかった。こんどこそ……!)

 老婆は銃弾に気をつけてドアがあった入り口の空間に身を潜める。すると影が建物側に伸びているのに気づく。老婆は勝利を確信する。あちら側からは老婆の影が見えない。銃に照準を合わさせる暇もなく距離を詰められる。

 老婆は笑みをこらえきれない。老婆は叫ぶ。

「さあ最後の時間だよ! 死ね坊や!」

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