純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第十五話 メリッサの夢

2018年4月29日

 

第十五話 メリッサの夢

「ふふ、よく食べるよく食べる」

 昼、僕の隣でメリッサは町に流れる川の魚にパンくずをやっていた。本人いわく、この時代のパンは貴重でパン一斤で人殺しが起きると言っていたのに、それを惜しげもなく川の魚に与えている。

「この魚はだな、この世界でルズといってとても人なつっこい。お前もやってみろ」

 メリッサが楽しそうに笑っている。通る町の人々が奇妙な目で見ていた。

 僕はその光景を美しく思えたが、それは価値観の違いだろう。

「なあ、エインヘリャルってどんな国からもやってくるのか? 最初の女も次の婆さんも、とても日本人には見えなかったけど」

 そう言うと、メリッサはこちらに向いた。

「なにをいっているんだ、何人とかそういうレベルじゃない。全く違う世界からやってきた人間だ」

 違う世界? つまり僕の世界と違う世界があるというのか。僕は不思議そうな顔をしているとメリッサは、

「言っておくがパラレルワールドではないぞ。時間が平行ではなくお前の世界の時間と他世界の時間の進み方は全く違う。逆に進んだり、途中で途切れたり生まれたりする」

 なら疑問が生まれる。

「ならなんで同じ人間の形をしていたんだ。宇宙人とかそんなのは全く違う体をしてもおかしくないはずだ」

 メリッサはやれやれとあきれた様子で魚にエサを与えているのをやめ、こっちにやって来る。

「何を夢見ているんだ。どの世界も宇宙人なんていない。人間という存在を神が創った。それはどの世界も一緒で、神が創ったものだ。神が創ったものに違いがある必要性はない、個体差があるだけだ。
 なんで好き好んで変なガスを吐く生き物を創らなければいけないんだ。同じ神が創った物なら同じ形の物を創るだろう。似たような生物を創るし、似たような環境を創る。どの世界も一緒だ。人間で言うとそれが創る側の個性という物だろう」

 よくわからないが創る側の美学という物だろうか。タコみたいな生き物が言葉を話すのはわざわざ創りたくないかもしれない。

 メリッサは付け加える。

「その世界たちの上の次元にヴァルハラがあるんだ。どの世界の人間の魂もあそこに保管されている。魂の安置場所だ。
 ヴァルハラの面積は無限大だ。永遠とつづく。
 私は、他の世界の魂の安置場所に行ったことはないが、他のヴァルキュリアとあったとき、同じ場所がつづくと言っていたから多分そうなのだろう。
 まあ別にミズガルズに同じ世界から何人来ようとかまわないが」

 そうなのか。だったら同じ文明の敵と戦うことになるかもしれないな。

 昨日クレア・ヴァルキュリアが言っていたヴァルキュリアたちが戦う理由。時間もあるから、それを聞いておいた方がいいかもしれないな。気になるし。

「なあ、なんでお前たちヴァルキュリアはここまで手を貸して戦ってくれるんだ? 別に体を張る必要もないだろ」
「なんか相手のヴァルキュリアに言われたのか?」

 見抜かれている。余計なことを話すと女という生き物は男にとって理解できないことを言い出すから、気をつけよう。

「別に何も、ただ気になっただけ」

 僕は言う。メリッサはどこか嬉しそうに空を見上げて話し出す。時間が止まる。あたりは静かだ。

「この生存戦争に勝ったヴァルキュリアは人間になれるんだ」

 そう言うとメリッサはなんだかモジモジしだして、

「べ、別に人間に憧れているわけじゃないからな。ただ、普通の女のコになって、普通の恋をして、普通の結婚をして、普通の幸せを手にしてみたいだけなんだ」
「なら、僕と同じじゃないか」

 そう言うとメリッサは立ち上がって怒り出す。

「違う! 全然違う! 次元が違う。夢とロマンが違う! おっさんといっしょにするな!」

 可愛いなこの娘は、ときどき十代の少女が出てくる。年を食った僕にはそれがみずみずしくて甘酸っぱい。

 こちらも変な気分になって突拍子もないことを言う。

「普通の幸せなら今の状態でもなれるんじゃないか?」

 自分で言って、しまったと思った。これじゃあ告白じゃないか。年甲斐のないことを考えている。恥ずかしい。

 すると銀髪の美少女は顔を赤く染めて、

「それなら……もっと……私のことをもっと大切にして欲しい……」

 二人とも顔を真っ赤に染める。何照れてるんだ。やめてくれこういうの苦手なんだ。なんて言っていいかわからない。

 メリッサは物欲しげに上目遣いでこっちを見つめる。お、おいなんだよその目は何が言いたいんだ。
 メリッサが何歳か知らないが精神年齢は十代の少女とおっさんだぞ。釣り合うのか? 釣り合わすのか? 釣り合わすのが男だろう。
 よし、腹はくくった。

「なら、僕についてこい。離れるなよ」

 するとメリッサは満面の笑みで。

「そうか!よかった……」

 メリッサは僕の腕に彼女の腕を絡ませる。当然柔らかい胸が当たる。破顔しそうで死にそうだった。
 彼女は何も言わない。モジモジと僕の言葉を待っている。よし、一言かまさないと。

「いい天気だな……」

 自分のボキャブラリーのなさに驚いた。メリッサは目をぱちくりしている。 すると小悪魔的な笑みを浮かべだした。

「そうだな、いい天気だしデートしようか。もちろん私のリードでな」

 寒気がする。痛いのは勘弁してください。お願いですから。

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