純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第十八話 嵐の前の静けさ

2018年5月6日

第十八話 嵐の前の静けさ

 僕たちは次の街へと移動するため森の中に入っていた。あいもかわらず射撃訓練を行っている。MP7A1のトリガーを引くとまっすぐに的を貫く。木の枝からぶら下げた大きな果実が粉々にくだけ、後ろの大木の木の破片をまき散らす。

 僕は大木に近づいて弾痕を調べていた。的から距離は50mほどで撃った。その距離でも短機関銃で狙撃できるほど腕が上達している。

 命中精度や貫通力を考えてアサルトライフルをつかってみるか。

 あれこれ銃の種類を思い浮かべる。好きこそものの上手なれというやつか。僕はこの世界をある意味楽しんでいた。銃を持ったこの手の感触を気持ちよく感じてる。

「なんだか嬉しそうだな、なによりだ」

 メリッサが食事の支度をしている。僕がクロスボウで撃ち落としたカモらしき鳥を4匹ほどさばいている。メリッサも僕の表情を見て嬉しそうだ。

「そろそろ夕暮れだ。手伝うことはないかい?」

 僕は尋ねる。

「それなら、火をおこしてくれ薪はあつめてあるからよろしくたのむ」
「わかったよ、お姫様」

 夜、薪を囲みながら夕食を取る。相変わらず料理がうまい。メリッサの作る料理は僕の口に合う。鳥の肉汁が舌に絡みついてとろけそうだ。旨みが甘い。食感、味付けも完璧。素朴な焼き鳥は豪華な懐石料理よりも勝る。

 木の器にこの森でとった山菜と町で買った野菜で作られたサラダをつまむ。手作りドレッシングをかけたサラダは素材の味を変え生まれ変わる。パンをほぐして作った、パンスープに僕は舌鼓を打つ。メリッサはなんでこんなに女子力が高いんだろうか。

「ヴァルハラで料理していたのかい?」

 そう僕がいうと、メリッサは奇妙な目をして、

「あそこに食材があったか? まさか人肉とかいうじゃないだろうな。食事中にやめてくれ気持ち悪くなる」

 けほっ、けほっ。僕はせき込む。変なことを聞いてしまった。気分が悪い。

「私は他人の人生がのぞける。女の人生は興味深い。料理、裁縫、家事、とても面白かった。暇を持て余すうちに、プロの料理人とかの人生を見ていた。じっさいに体験しながら学ぶ料理は私にとって良い娯楽だった」

 知識が十分にあったということか。それを実践できるということは元々才能があったのだろう。つぎは話題を変えてみよう。

「どんな街が僕たちを待ち受けているんだい?」

 メリッサは食事の後片付けをしながら答える。

「次の街はフリューナグといってリッカよりもっと大きな街だ。市も街道も整備されていて法も整備されている。裁判所や市役所があるぞ。教会も大きい。警備も厳しくて、滅多なことはできないから気をつけてくれ」

 そうか、そんな大きな街なのか、僕は期待に胸を膨らませる。綺麗な風景は見ているだけで癒やされる。異世界の眺めを楽しむ、そういう年代に僕はなっていた。旅とは見知らぬ出会いを求めるもの。

 てきぱきと食事の後片付をすまして、僕たちは寝る準備をする。メリッサと僕の距離はずっと近くなっていた。精神的なものだけではなく物理的に。

 毛布にくるまった、メリッサと僕はとなりで顔合わせて目と目を合わせる。言葉もなくじっと見つめ合ってる。

 するとメリッサは、

「おまえ、こう見るとカッコいいな、髪型変えてみたらどうだ」

 おいおい何言ってるんだろう。僕はモテた経験がないぞ。それなのにじっとまじまじと見て僕に言う。この娘の趣味なのかな僕が。自分で考えて体が熱くなる。でも照れるな。こんな可愛い子にカッコいいとか言われるのは。なんだかむずがゆい。よし、それなら、

「メリッサのほうこそ可愛いよ。とても素敵だ」

 恥ずかしかったから、メリッサに同じ思いをさせてやろう。

「知ってる。でもお前にそう言われると、私うれしい」

 相手のほうが一枚上手だった。僕は逆に顔が熱くなるのが感じた。敵わないなこの娘には。満面な笑顔で僕を見つめる彼女は天使だった。

「もうすぐ寝るぞ、何か忘れていることがないか?」

 メリッサは低いトーンで甘く言う。そういう言われ方をすると胸がドキドキしてくる。

 なんだろう? 忘れていることって。メリッサは近づいてきて耳元でこうささやく。

「……お休みのキス……」

 え? あ、いやそうか。て、え? キスした方が良いのか? 彼女はそう言うと、目をつぶって僕からのアクションを待っている。少女が僕の唇を求めていた。自分は年の差を感じながらも、彼女の素直な気持ちを受け止めたいと思っている。

 なら、女に恥をかかせてはいけない。僕は恥ずかしくて死にそうな思いを横にやって、彼女の期待に応える。

「ん……んんっ……」

 僕は彼女の唇を襲う。甘い匂いがする。彼女の唇が軽く開いた瞬間メリッサの口の中に舌を入れる。

「ん?……んん?」

 彼女との舌を絡ませる。少し間を置く。彼女の反応を待つ。

「こんなキス……私知らない。なんだか……切ない――」

 そう彼女が呟くと再び彼女の唇をむさぼる。それを3分ぐらい続けた。

「はあ……はあ……はあ」

 彼女の顔は真っ赤だ。可愛いな。襲いかかりたい気持ちを抑えて彼女をじっとみつめる。紳士に真摯に。僕は揺さぶられる理性をなんとか保つ。しばらくすると、メリッサは静かに呟く。

「……甘くて、切ない。胸が締め付けられる。私、幸せだ……」

 僕はメリッサの頬をなで頭をなでる。お互いに好きだと呟く。彼女は僕の手を取り柔らかな胸のあたりに持ってくる。手を絡ませ合う。

 僕たちは笑顔で見つめ合い、おたがいどっちが先に寝るか、何も言わずに競争し出す。たぶん先に寝たのは僕だろう。記憶が途切れるとき、メリッサの笑顔の残像が残っていた。

 朝になる。どうしたのだろう隣にメリッサがいない。まわりを見るとメリッサが立ち上がっていて、武装している。

「エインヘリャルが近寄ってくる――」

 僕は飛び上がって準備をする。

「――メリッサ・ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」

 僕は慣れたMP7A1を選んで彼女から銃を受け取る。

 あたりがざわめく。鳥だろう声が騒ぎ出す。そこらかしこに動物が走り回る気配がする。
 その時――

 ビュンと言う音がして光の閃光が僕の頬をかすめる。何が起こったのか冷静になって確かめた。地面を見ると光の矢が刺さっている。

「ヴァルキュリア! ここは開けた場所で相手から的にされる。森の中に入るぞ!」

 メリッサはうなずく。僕たちは森や草木を盾にして、相手の的にならないよう走りながら相手の気配を探る。

――こうして見えない敵との攻防戦が始まった。

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