純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第十九話 見えない敵

2018年5月11日

第十九話 見えない敵

 あたりの草木は 僕の全身を隠してしまえるほど背丈が長く、木々は枝が多くて視界が悪い。だというのに――

 敵は正確にこちらに向かって矢を放ってくる。僕たちは走りながら移動しているため命中することはなかったが、確実にこちらの位置を把握している。

 僕は制圧射撃を試みた。バラまかれる銃弾。手に伝わる激しい振動。相手を動けなくするために弾を置いていく。フルオートで射撃された銃弾が森に生える野草を散らせ葉が舞い散る。相手がひるんでいる間、僕は距離を縮めようとした。

 すると

――ヒュン!

 光の矢が僕の顔を向けて飛んでくる。とっさのことだったが瞬時にかわし矢が頬をかすめる。赤い血が僕のほほから流れ落ちた。僕はあわてて木の裏に身を隠す。

「メリッサ。与えられる能力は一つだけなのか」

 メリッサは考え込む。

「複数の能力を持つ可能性があるのかということか? それはない。ヴァルキュリアから与えられる能力は一つだけだ」

 なら何故こんなにも場所を把握していられる。考え込んでいると斜め方向から矢が飛んでくる。突然のことなのでよける暇がなかった。

 だが矢は当たらず、僕の近くに落ちた。完全に把握しているわけではないのか。少しでも狙われないように、僕はしゃがみ込む。

 矢が放たれる。光りの閃光をたどってみれば、さっき立っていた胸あたりに矢が飛んできた。

 危ない。一瞬の判断が命取りになる。僕は矢が飛んできた方向に制圧射撃を行う。静かな森林にけたたましく鳴り響く銃声。

 その間僕はここから移動しあたりを探る。また、僕が移動するまえの場所に矢が飛んでくる。計算すると矢を構える速度は約10秒ぐらい。

 僕は相手に弾を返す。だが、手応えはなく別方向から斜め向きに僕の方向へ矢が飛んでくる。しまったことにかわしきれず肩に矢が刺さった。矢が僕の肉に食い込む。

 肉を食らった矢はすっと消え、僕に傷だけを残す。

「大丈夫か!?」
「大丈夫だよメリッサ」

 威力はそんなにないらしい。だが急所や足に当たったら動けなくなる。消耗戦か。これはこれで厄介だ。

 まずはこちらの位置を把握できるトリックを解かないと、一方的にやられる。

 一カ所にとどまっていればただの的だ。急いで移動した。僕がわざとゆっくり移動し、周りを観察する。見ると僕がいた場所に光が照らされているのに気づく。まさか、あれで?

 光が僕を追いかけてくる。僕は太陽を見る。僕たちは太陽に対して正面に向いている。後ろから太陽光を反射して場所を教えていたのか。

 なら回り込んで……いや、敵はそう易々と太陽を背にさせてくれないだろう。なら答えは一つだ。

「佑月(ゆづき)! どこへ向かう!?」

 僕は光が反射している場所に向かっていく。まず始めに制圧射撃をしておいて敵をおいそれと動けなくする。息をひそめ草木の動きに注目する。

 ざわめく草。その動きを察知して、移動するであろう場所にバースト射撃を行う。スリー、ツー、ワン。小気味よく飛び出した銃弾は相手の反応を持って威力を知らしめた。

「キャ!?」

当たった! しかし女の声だ、しかも若い。僕はその場所に急いで向かう。よく見れば鎧を着た金髪の少女が足を血に染めて、もがいている。

「ヴァルキュリアか……」

 メリッサのほうを向き僕はつぶやく。

「メリッサ、ヴァルキュリアはエインヘリャルの戦いに介入できないんじゃなかったのか?」
「直接的にはな。だが私が前にやった、お前を無理矢理逃がしたり、今回みたいに居場所を知らせるくらいは大丈夫だろう」

 曖昧な基準だな。ため息をつく。金髪のヴァルキュリアは鏡のように磨かれた剣を持っていた。これで太陽光を照らして居場所を知らせていたのか。

「どうする佑月?」

 僕にこの少女の処遇をメリッサは聞いてくる。

「縛っておこう。無抵抗の女をいたぶる趣味はない」

 するとメリッサはおかしげに屈託なく笑う。

「ならお前のリュックからロープを出せ。私が縛る」

――――――――――――――――――――――――――――

「こらー!何よこの縛り方!最低!」

 金髪のヴァルキュリアは不満を叫ぶ。あたりまえだ。メリッサは金髪の少女を亀甲縛りで縛っている。しかも裸にひんむいて。僕は目も当てられずあさっての方向に向いている。

「メリッサ、気が済んだだろう。その辺にしておけ」
「ここから面白いんだぞ。ロープを引っ張ると――」

 メリッサはロープを手荒く引っ張る。すると金髪の少女の肌に荒縄が食い込み、嬌声が腹の奥から流れこぼれ落ちて、色っぽく喘ぐ。困った奴だな、メリッサの好きなようにさせてその場をあとにしようとした。

だが、僕は油断していた。突然、足に激痛が走る。

「――なっ!」

 僕の足はトラバサミにとらわれていた。鋼鉄の刃が肉に食い込む。血が流れ、ギリギリと骨を押しつぶすように絡みつく。激痛をこらえ、なんとか罠を解除しようとするが、どうしてなかなか離れない。

 くそ、こんな陳腐な罠に……! そして見計らったかのように矢が飛んでくる。

しまった! この展開を読んでいたのか!? 矢は確実に僕の腹をとらえて深々と肉を貫き破った――

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