純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第二十話 見えない敵②

2018年5月29日

第二十話 見えない敵

「佑月!」

 駆け寄るメリッサ。

「メリッサ! 伏せるんだ!」

 僕の言ったとおりにしゃがみ込む。彼女が立っていた場所に矢が飛んでくる。メリッサは慌てる様子なく僕の足を挟んでるトラバサミを解除しようとした。

「少し待ってろすぐ外せる。よしできた。足大丈夫か? これは……骨が砕けているな。とりあえず矢が飛んでこない場所に移動しよう」

 僕はメリッサに肩を預けて巨木の裏側に身を伏せる。メリッサはリュックから布を取り出し腹の出血を止血する。

「困ったことになったなこのままだと動けない。傷が治るまで時間稼ぎをするか? エインヘリャルなら傷の治りはかなり早いからな」

 できればそうしたいところだが相手は攻めてくるだろう。難しいな。とりあえず状況を整理してみよう。

 僕のほうは、ボロボロ。肩は傷つき、右足はトラバサミで骨が砕けている。歩くのもやっとだ。

さらに腹から出血。血の気が引く。出血で体力が奪われている。動きはかなり制限される。

 相手は、おそらく無傷。僕を殺そうと今か今かと待っている。

 ただし目は奪った。僕たちの居場所を知らせていたヴァルキュリアは縄で縛っている 。僕たちの居場所を探っているのが今の状況だろう。

 整理してみると心が静まる。僕はこういう危険な状況が好きな人間かもしれない。

 ここからどう挽回するか。考えをめぐらす。また矢が飛んでくる。敵はでたらめに矢を撃ってきた。目を奪った以上、僕が撃ち返さないからどこにいるかわからないんだろう。

 だったら何故近寄って居場所を探らない? 考えつくのはおそらく相手は遠距離特化の能力なんだろう。近寄ったら、不利な状況になると踏んでいるんだな。

 ならいっそ近寄ってみるか……?

「メリッサ。作戦が決まったよ」

――――――――――――――――――――――――――――

「本気でそうするつもりなのか? お前まともに動けないだろう?」

 メリッサは不安げに僕を見つめる。

「大丈夫だ歩くくらいならなんとかできる。相手はこっちの武器を知らない。おそらく同じ世界からきた人間じゃないだろう。なら勝機はある」

 その台詞にメリッサはため息をつく。

「わかったよ、お前の言うとおりにする。頼りにしているぞ」

 可愛いよ、素直で助かる。

 合図をすると矢が飛んできた場所に制圧射撃を行う。

 そしてメリッサはゆっくりと動き回る。草木が動く。メリッサのほうへ矢が飛んでいく。

 ――弓は狙ってうつもの、つまり狙撃用武器だ。相手の居場所がわからなければ意味がない――

 僕はメリッサの方向へ飛んでくる矢から相手の居場所の大まかな場所を特定する。MP7A1が火を噴く。
 
 ――僕が持つ短機関銃は弾幕を張る武器だ。制圧射撃を行い相手の行動を制限させ、動きを封じたところで相手にとどめを刺す。狙撃を点を攻撃する武器とすれば、制圧射撃は面を攻撃する武器だ――

 相手から反撃が来ない。さては何発か当たったな。制圧射撃の有利なところだ。狙って撃たなくても相手に当たることがある。

 僕はもっと近寄っていく。僕の方向に鋭い矢が飛んでくる。だが、しょせん苦し紛れの射撃。かわさなくても自然にそれていく。矢が飛んできたところに今度は狙いを定めて、バースト射撃をおこなう。流れうなっていく三つの弾。銃口から飛び出し弾丸が敵を切り裂く。

「ぐあああ!!」

僕は足を引きずりながら近寄っていった。そこには20代後半の茶髪の男が、胸から血が流れているのを必死に押さえていた。コイツが敵か。意外と凡庸そうだ。自分が言えたことでもないが。

 男に言葉をシンプルに投げかける。

「何か言い残すことはあるか?」

 男は叫ぶ。

「なんだそれは、俺を殺す気か? やめろ! やめてくれ――――!」

 僕はフルオートでのこり全部の弾をたたき込む。肉片があたりに飛び散り血の海ができた。横たわるのはただの肉の塊。男はもう何も語らない。

「終わったようだな、佑月よくやった。今回は上出来だ」

 メリッサが駆け寄って、ねぎらいの言葉をかけてくれた。

「まあまあだよ。僕はかなり痛い思いをしたからね」

 僕は苦笑している。今回は僕の戦い方と相性がいい敵だった。だからこんなにも簡単に始末できた。次の敵もそうだといいが……

 ――そのとき――僕は油断していた。このとき確実に勝ったと思っていた。何事も例外がある。例外が――

 光の閃光がこちらに向かってくる。何が起こったのかわからない。目にうつったのは、僕の左手が腕から離れ宙に舞う。静かに僕の左手が大地に横たわる。

――何だと……!?

突然の出来事に僕はパニックになった。吹き出る血と汗。独特の鉄の匂いがした。メリッサが叫びだす。

「佑月! 危ない!」

 とっさに身を伏せる。光の大きな閃光が僕が立っていた胸あたりに光の筋を作る。最悪のシナリオを考えた。

 まさか……

「まさかエインヘリャルが二人いたのか……!」

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