純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第二十一話 森は笑わないを更新しました。

2018年6月10日

第二十一話 森は笑わない

 光の閃光が木々を破壊する。巨木すら粉々に砕けあたりが更地になっていく。僕はメリッサに肩を借りて光の嵐を過ぎようとした。

「メリッサ!ちょっとまってくれ」

 僕は目の前の足下に小石を投げる。いきおいよく仕掛け弓の矢が飛んできた。ひやりと肝を冷やしながらも、周りをよく確認する。

「罠まで張っているのか」

 メリッサはうんざりした感じで相手の用意周到さに驚く。

 この場所はやつのテリトリー、狩り場だ。罠に警戒しながら、息をひそめてこの場を離れようとする。身体中からにじみ出る汗。感覚のない左腕に違和感を感じながら、一歩一歩を噛みしめるようにしてこの場を後にした。

 敵はそこらかしこに光の閃光をまき散らす。だが、手応えがないのを感じたのだろう。時期にあたりは静かになった。

「ここにも仕掛けてある」

 メリッサが枝を投げると落とし穴が現れる。周りを探り無事なのを確認すると、僕たちはそこにひとまず落ち着いた。

「左手……大丈夫なわけないよな」

 メリッサの心配そうなまなざしが余計に痛みを感じさせた。痛いのを我慢して、彼女の心を悩ませないようになんとかこらえていた。

「それよりもエインヘリャルが二人いたことだ。メリッサはどう考える?」

 僕は痛みを紛らわすため、わざと話題を変える。

「二つ考えられる。
 一つはヴァルキュリアとエインヘリャルのコンビが二組いた場合。
 もう一つはヴァルキュリアが二人のエインヘリャルと契約していた場合。前者の場合特殊能力が異なるはずだ。後者の場合同じヴァルキュリアから力をえるため同じ能力を使うはずだ。おそらく後者だろう」

 メリッサは考えをまとめながら語る。

「二人と契約するとかあり得るのか?」
「ヴァルキュリアは原則一人のエインヘリャルと契約する。それはヴァルキュリアの力が与えられる容量(キャパシティ)が決まっているからだ。二人と契約すれば力が二つに分けられてその分弱体化する。
 いきなり矢が強力な閃光になったのは、弱体化した能力がもとにもどった、そういうことだろう」

 つまりもとからエインヘリャルは二人いて同時にこちらを攻撃していたということだ。弓矢なら弱体化したとしても、人数を増やした方が有利だ。狙撃用の武器だからそうかんがえたのだろう。

 この森は体を全部隠せる。二人で攪乱(かくらん)しながら罠を張ってエインヘリャルを狩っていたんだ。

 おそらくあの金髪のヴァルキュリアと相談して考えられた作戦だろう。よく練られている。

 ここは僕が回復するまで時間稼ぎをするか。相手もこちらの居場所がわからないだろうし。メリッサはあたりを見渡し小石を投げる。地面が盛り上がり、木のとがった枝がついた板が横から飛び出してくる。

 それを察知したのだろう光の閃光がこちらへと向かってくる。あたりの木々をなぎ倒しあさっての方向へ飛んでいく。

 メリッサは何も言わない。どういうつもりだ、何か考え込んでいる。メリッサが口を開く。

「私はベトコンの人生を見ていてこういう罠は慣れている。心配するな私がついていれば罠に引っかかりはさせない」
「それはありがたいね、安心して休める」

 メリッサはあたりを警戒する。森は静かだ。お互いのカードはみせた。あとは心理戦だ。この視界の悪い森でいかに相手の裏をかき最初にダメージを与えるかそれにかかっている。

「メリッサ。そう言えば弾切れなんだ武器をもう一度創ろう」そうして、僕たちはいつものかけ合いをし、MP7A1をもう一度創る。

 敵の襲撃に備える。だが相手はやってこない。メリッサは不満げに、「とんと解(げ)しかねる。相手から見れば敵は手負い、仲間はやられたなら勝負を仕掛けるのが戦いだろう」と言う。

 メリッサは立ちっぱなしでずっと警戒に立っている。イラついてきたんだろう。

「それはメリッサが強いからだ。メリッサ、武芸はどれくらいできる?」

 メリッサはこちらを向いて少し怒りながら、「私の武術を疑っているのか? 心配ない。お前一人、大男からでも片手一本で守ってみせる」

 誇らしげだ。ずいぶん安心したよ。エインヘリャル以外で戦いが起こっても僕以上に活躍しそうだ。

「だからさ。最終的には自分の力でねじ伏せられる自信がある。僕みたいに戦闘訓練を受けていない人間は、自分の武器を無効化されるとただの案山子(かかし)、めったなことはできない。だから先手を打てないし後手に回る。
 相手の動向をじっと待つ。それが人間の心理だ」

 メリッサはそれに同意しない。

「おまえは常に先手を取って戦いに勝ってきたではないか。お前の言っていることは矛盾している」

 言われてみれば確かに僕は積極的に攻勢に出てきた。僕はちょっとおかしいかもしれない。

 まてよ、相手の気持ちになって考えよう。自分のテリトリーで相手は手負い。回復には時間がかかる。あちらこちらに罠を張り巡らせている。

 自分の能力で当たれば一発で仕留められる。急ぐ必要はない。なら時間というストレスを与えて相手の出方を待つ。これが一番効率のよく確実に仕留められる方法だ。僕は手負いだから無理に攻めてくることはしないと踏んでいる。だから相手のミス待ち。そういう思考か。

 僕の取るべき道は二通りある。このストレスの中回復するまで待つか、攻勢に出るか。いやちょっと待てこのままだと夜になる。

 夜の銃撃戦はこんな森の中じゃ行えない。相手はそれを想定してはいないだろうがこちらにとってだいぶ不都合だ。体を休めていると少し体力が回復してきた。なら答えは一つ。

「メリッサ。こちらから打って出るぞ」

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