純愛異世界ダークファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第二十二話 森は笑わない② を更新しました。

2018年7月9日

第二十二話 森は笑わない②

僕はゆっくりと敵に近づこうとした。

「そこには罠が張ってあるぞ」

 メリッサの声がした。僕は足下を見る、トラバサミだ。危ない、慎重に進む。しばらくすると、メリッサが何やら合図をしている。

 彼女が石を投げると、先のとがった木が上空から、投げた石の場所に勢いよく降りてきた。

 それに反応したのだろう、敵が、光の閃光を撃ってくる。あそこにいるのか。僕たちは距離を縮めた。追い打ちにもう一度光の閃光。同じところから伸びてくる。どうやら相手は移動する気がないらしい。

「メリッサ、さっき言ったとおりにしてくれ」

 僕が諭すように言う、対してメリッサはため息をつく。

「できれば真っ正面から戦いたいものだが」

 僕の戦い方は彼女の美学に合わないみたいだ。不満げにしながらも、それでも従ってくれるから、非常にありがたい。

 メリッサと別れた。僕は敵がいるだろう場所にMP7A1を構える。MP7A1はストックをしまえば拳銃のように片手一本で撃てるようにできている。左手を失った僕に最適な武器だ。

 当たりをつけて弾を並べていく。制圧射撃だ。森の中に銃声がけたたましく鳴り響いた。

 今では片手だ命中精度は期待できない。なんとか敵に近づいて、致命的なダメージを与えないと。相手の反応を待つ。僕の意に反して、同じ場所から光の閃光が走る。

 敵は動くつもりはないのか? 何故? 考えをめぐらす。もしかして動けないんじゃないのか。

 ダメージを受けた? いや反応が早い。その考えは早計だ。ひょっとして罠を張って自分が動けない状況にあるんじゃないのか。

 ここまで長期戦になるとは思っていなかっただろう。詰めとしてここら一帯に罠を張り巡らして自分も動けなくなっているんじゃないのだろうか 。

 予想が当たっていればこの先は死のエリア。より慎重に進まなければ。メリッサがいない以上自分で感知するしかない。僕は距離を縮めていく。

 罠がそこらかしこに張ってあった。やはり当たりだ。

 この先にいる。

 こうなったらどちらが先に見つけるかが勝敗を決める。あたりを探る。どこだ……? どこにいる……?

 非情にも先に見つけられたのは僕のほうだった。閃光が僕に向かって走る。ダメだよけきれない。僕は体を投げ出して閃光を必死に避けた。自分の体を調べる、どうやら僕の靴をかすっただけだ。

 そのあとが最悪だった。

 ロープが首を巻き付けて僕を宙づりにした。ギリギリと荒縄が首を締め付けて圧迫する。
あぶり出された僕は格好の的だ。光の閃光が僕に向かってくる。僕は避けようにない。閃光は僕の体を粉々に打ち砕く。

「やったか!」

 金髪の男が草陰の中から飛び出す。命中したのを確認すると。手を叩き、大喜びする。

「やった、やった!」

 ストレスから解放されたのだ。満面の笑みを浮かべる。僕を殺したのを確認しようとする。これでもう終わりだろう。

――そのように見えた。

 僕はフルオートで金髪の男の背中を打ち抜いてやった。

 「ぐああ――!!?」

 片手だ反動で急所には当たらない。だが、背中から腹にかけて何発も打ち抜いてやった。

「な、なぜだ? お前は死んだはず!?」

  男は後ろを振り返り僕の顔を見る。

「あれのことかい? よく見ろお前の大切なお仲間だろう?」

 僕は宙づりになった死体を親指で指し示す。その言葉の真意を金髪の男は理解した。

「まさか、死体を使ったのか!?」

 女の声が遠くの方から聞こえる。

「どうやらエインヘリャル二人と契約すると片方が生きている限り、死体は消滅しないらしいな」

 メリッサだ。

「よくやってくれた。メリッサ。完璧だ」

 僕は彼女をねぎらう。

「死体のところに戻って佑月にみせかけて死体を罠に投げ入れるのは、ちょっと大変だったな」

 メリッサは首や肩をならしながらため息をつく。金髪の男が狼狽しながら吐血した。

「……そんな!あれは完璧にお前だったはず。一体どうして!?」

僕は冷静に静かなトーンで口を開く。

「そう見えただけだ。お互い見えない敵だ。姿形なんてわからない。人間を見れば敵だと錯覚する。お前をあぶり出すのは大変だったよ。何せ臆病で自分の罠に自信を持っている。敵を仕留めたと思わない限り姿をみせなかっただろう。
 だから逆に考えれば勝ったと思わせれば何もしなくても自分からやってくる。確認しないと誰を倒したかわからないからな。相手が見えない以上そうなる」

 満身創痍(まんしんそうい)の男にやられたのが信じられないのだろう。男は納得できない様子だ。

「しゃべってないで早く仕留めろ」

 メリッサは少しイラついている。

 「ああ、そうするさ」

 僕が引き金を引こうとすると、鋭い剣が僕に向かって振り下ろされる。

 「――何!?」

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