純愛異世界ダークファンタジー小説終末のヴァルキュリア 第二十八話 戦慄

2018年11月4日

第二十八話 戦慄

 金髪の大男は勢いよく殴りかかってきた。僕は寸前でなんとかかわす。拳は僕の後ろの壁に突き進んでいく。

 どういうことだろうか、目を疑う現象が起きた。素手で壁を大きく砕き、壁に突き刺さっていた。大男はのそっりと壁から手を引き抜き、ぱらぱらとコンクリートの破片が飛び散り落ちていく。

「強化系か!」

 メリッサは叫ぶ。強化系?  その言葉から考えると筋肉を硬化させて壁を打ち砕いたのか。
僕は這々(ほうほう)の体でその場から離れる。敵に対して正面向いて後ずさったため、尻が地面を這いずり服が破けそうになった。

 大男は上半身裸で金髪の髪の毛は長く後ろで縛っていた。筋骨隆々で筋肉が外から見てもわかるような盛り上がり方をしており、僕のウエストぐらいの太ももをしていた。

 改めて砕かれた壁を見る。コンクリートの壁は粉々に砕けており、衝撃で屋根が落ちかかっている。あんな物を食らうと体がはじけ飛ぶぞ。

 大男は大声で叫んだ。辺りの空気が張り詰め地震が起きたかのような感覚に陥る。この敵は危険だ。

 僕は慌てて迎撃態勢に入る。MP7A1が火を噴く。

 放たれた弾は敵を貫くことはなかった。フルオートで射撃をしたが、盛り上がった筋肉から弾かれ、弾が貫通しない。嘘だろ・・・アサルトライフル並みの貫通力があるんだぞ。短機関銃の弾の威力では効かないのか。

 あわててその場から逃げ出す。 僕はまたもや致命的なミスをする。メリッサとはぐれてしまった。大男は僕に向かって直進してくる。邪魔になる障害物、人や木箱などは弾け飛ばしていく。

 おいおい、これが現実かよ、あの巨体がすごいスピードで駆けてくる。僕よりスピードは断然上だ。僕はとっさに壁を背にして巨大なこぶしをかわす。大男は何故か大振りで殴りかかってくるため、なんとか僕の動体視力でもかわせる。壁にのめり込んでいった男を後にして、埃が大男の視界を閉ざしているうちに、僕は姿を隠す。

 何だあれは、あんなものと戦わなければならないのか。思い返せば最初の女以外正面から襲いかかってくる敵はいなかった。今回の敵は格が違う。まともに拳を食らえば即死。短機関銃は効かない。スピードはあっちが上。立ち回るだけで命がけだ。

 どうしろっていうんだよ。

 冷静になれ。とりあえず武器を変えよう。そのためにはメリッサと合流しないと。メリッサはどこに行ったんだ。初めてきた場所で脇道にそれてしまった。

 なら、どうやって合流する?

 走りながら考える。メリッサは僕を見つけるのは困難だろう。僕がメリッサを見つけるのも同様だ。でも、メリッサが大男を見つけるのは……?

 たぶんたやすいことだ、さっき表通りの人混みの中で一瞬で目についた。僕は大男に向かってMP7A1を撃ちつづけていく。もちろん効かない。男はこちらに気づき、猛スピードで向かってくる。よし、ついてきてくれよ。

 僕はこぶしをなんとか、かわせる距離感を保ちながら、人の気配が多いところへと向かっていく。2回、3回、4回、5回。拳が宙を切り裂く。

 何度恐怖で体が凍り付きそうになったか。僕はなんとかかわす。人の気配をたどっていくうちに大通りに出た。よししめた。僕は人混みに紛れて突き進んでいく。

 僕をメリッサが見つけるのは困難だ、それと同じように大男が僕を見つけるのは困難だ。
金髪の大男は人間を振り払いこちらへと向かってくる。

 また、つづいて、相手はヴァルキュリアを連れてきていない。つまり敵側のエインヘリャルの気配を察知できない。それに比べてヴァルキュリアであるメリッサは大男を感知できる。
おおよその方向へ向かってきているはずだ。

 僕が人混みに紛れて大男が暴れているのを見れば、メリッサは状態を察知できるだろう。

「メリ……ヴァルキュリアいるなら返事してくれ!」

 大声で叫ぶ。

「ヴァルキュリア! ヴァルキュリアアア――!」
「佑月(ゆづき)!」

 声の主を探してあたりを見渡す。メリッサは家屋の屋根に上って上空から事態を把握しようとしていた。

「どこだ! どこにいる!」

 メリッサは叫ぶ。僕は返事する代わりに轟音で答える。MP7A1を上空に向けて発射した。その音でメリッサは僕の位置を把握すると、メリッサは屋根をつたって突っ走ってくる。僕は銃を途中で鳴らしながら、メリッサを脇道へ誘導する。

「佑月!」

 なんとかメリッサと合流できた。

「状況を説明しろ! 佑月!」

 僕は端的に答える。

「相手が強すぎる。この銃では効果がない。新しい武器が必要だ」
「わかった。武器を創れ!」
「――ヴァルキュリア! 僕に力を貸せ!」

世界が歪む。青く沈んだ世界に僕たちは二人っきりになった。

「――イメージしろ。お前は何を思い描く? ――」

 メリッサから銃が生み出され、それを、SIG SG552を手渡された。

「なんだアサルトライフルじゃないか、相手に効くのか?」

 メリッサの言うとおりSG552はアサルトライフルだ。弾はNATO弾である口径5.56mm 全長730mm重量3.2kg 装弾数30発有効射程300mで射撃精度が非常に高い銃だ。そのため非常に高価で、各国の特殊部隊などしか配備されていない軍用銃だ。民間用も売っているが装弾数が違い通の趣味に近い。

「効くかどうかはわからない。だが命中精度、命中距離が全然違う。僕の腕でも止まっている敵なら100mは当てる自信はあるよ。それに試したいことがあるんだ」

 そう言うと、メリッサはイラ立った様子で、

「遊びじゃないんだぞ! まともなものを一発でも食らえばお前の体は粉々だろう、悠長なことを言っている場合か!」

「ふ~んそうやって武器を創るんだ」

 女の声がする。声の元を探ると屋根の上で黒い髪の鎧姿をした女が長い髪を風になびかせている。

――敵のヴァルキュリアか!?

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