純愛異世界ダークファンタジー終末のヴァルキュリア第三十三話 僕とメリッサ②を更新しました。

2018年11月26日

第三十三話 僕とメリッサ②

 僕はラミディを地下道に誘導した。ここは道が狭く標的が絞りやすい。その代わり僕に逃げ場がなくなる。これは賭けだった。逃げられないという恐怖に戦いながら、大男に立ち向かわなければならない。深呼吸すると腹は決まる。

 自分に勝てないととても戦っていられない。臆するな。こみ上げてくる恐怖を押さえつけていると、狭い道にラミディは現れた。こういう細い道では、現実以上に大きく見える。臆病風に吹かれながらも、慎重に頭部を狙う。

 SG552から放たれた銃弾は3発中2発命中、順調だ。ラミディが前に進むと僕は距離を取る。およそ80m程度。距離感を間違えれば一瞬で殺される。心を落ち着かせて相手をよく見た。ラミディが足を進めるとトラバサミが奴の足を襲う。

「グオオオオオ!」

 奴が痛みに苦しんでいる間、すかさず左足の膝下に精密射撃をおこなう。痛みで足下がふらつきラミディがつまずく。奴が無理矢理進んでくると弾幕を張り、距離を取った。

 目の前に敵が襲ってくるというプレッシャーとストレスに潰されそうになりながら慎重に攻撃を積み重ねた。仕掛け弓が奴を襲う。ラミディがそれに気を取られていると頭部に向けて射撃をおこなう。僕は自分が思っているより優秀な兵士だった。

 狙ったところによく当たる。近距離で奴と同等に対峙していた。ラグナロクに参加した最初の頃では想像がつかない進歩っぷりだ。

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 僕は対峙しつつ上手く立ち回った。ふと天を仰ぐ、地下道の天井の隙間が崩れており、上で何が起こっていたかよく見えた。そこにはメリッサと黒いヴァルキュリアが屋根の上でお互いの隙をうかがっていた。

「地下道にラミディを誘い込んだらしい。予想超えて間抜けなパートナーだな、銀色の。自ら退路を断つとは、どうやら私が何もしなくても時間が過ぎれば勝手に勝ちそうだ」

 黒いヴァルキュリアは言う。

「黒の戦士。お前は佑月(ゆづき)を知らない。あいつは自ら逆境に飛び込んで勝機を勝ち取るそういう戦士だ。何もしなければ消えるのはお前だ」

 黒い女は高く笑う。

「よくもまあそんな世迷い言を。落ちたものだ、銀色の。さてはあの男に惚れておるな。なかなかいじらしいものよの」
「その通りだ黒いの。私は佑月が好きだ。信じている」

 メリッサが平然と言い放つと黒いヴァルキュリアは唇をかむ。

「いちいち気の触る奴。まあその顔を拝むのは今日で最後だ。寛大に許してやろう」
「それはありがたい、その間十分絶望を感じてくれ」

 メリッサは盾を相手の盾に激しくぶつけた。黒い女は、それに付き合わず、距離を取って体制を固める。こうなるとメリッサはやりにくい。

 メリッサは盾を蹴る。彼女は構えを崩している。黒いヴァルキュリアはそれに対して
剣を切りつける。手首を回したメリッサはその剣戟(けんげき)を払うと、返す刃で相手の鎧と鎧の隙間を刺す。
 体重が乗ってない分深く刺さらなかったが相手に確実にダメージを与えた。

「貴様、よくも!」
「さっきの余裕はどこに行ったのか、黒いの」

 黒いヴァルキュリアは守りを固め距離を取った。ここぞとばかりにメリッサは剣を鋭く切りつけていく。

 天井を仰ぐのもそこで僕はやめた、ラミディが暗闇から現れてきたのだった。奴は確実に削られていた。足を引きずり足取りもおぼつかない。自暴自棄になったのか、攻撃が当たらないストレスなのか、狭い通路の壁を叩く。壁にはひびが入り地下道は地震が起こったように揺れる。鳴り響く雄叫び。迫り来る巨体。僕は恐怖と戦いながら、射撃をおこなう。

 銃が火を噴いてラミディをとらえた。奴の左足の膝下に全弾命中する。ラミディは前屈みになり、手を地面について痛みをこらえる。すかさず、頭部に精密射撃をおこなう。
 ラミディはうずくまっていた。だが、ボロボロになりながらも戦闘意欲は途絶えていないようだ。こちらに向かってくる。

 ふと弾倉(マガジン)を見る。残りの弾は5発。途端に僕の体温が下がっていく、危ない……!
 冷静に立ち回り方を考え、セミオートで一発当てると距離を大きく取る。作戦は成功している。後は武器の交換だ。この先には地上に出るはしごがある。

 もう一発奴に叩き込む、後3発。弾切れの恐怖におびえながらラミディの動きを鈍らせていく。

 ラミディは抵抗が薄いのに気づくと一気に距離を詰めてきた。僕は手が震えるのを押さえて額に一発おみまいする。ドスーン! と音がしてラミディが倒れた。

 その間に急いではしごのもとへ急ぐ。はしごの下にたどり着くと、僕は中腰になりラミディを待ち構える。

 ラミディが襲ってきた。あらかじめそこに仕掛けておいた剣が奴の足下を襲う。大男の巨体が崩れた。そこにうずくまっている奴の後頭部に一発命中させる。

 ラミディは転げ回り痛みを全身で表現する。
 うなり出し苦悶の声が地下道に響き渡り音が反射していく。その声を聞いて流れる汗をふきながら、長い長いはしごを登った。

 出口ではしごの穴に向かってSG552を構えた。ラミディが上ってきている。ラミディの顔が見えたときその額に最後の一発を捧げた。顔は大きくのけぞり、ラミディの巨体は暗闇へと落ちていく。

 弾は尽きた。急いでメリッサを探さないと。
 周りを見渡す。地下道の出口は高さのある塀の上にあり周りがよく見える。メリッサが屋根の上で黒いヴァルキュリアと盾の押し合いをしているのを見つけた。僕は叫ぶ。

「ヴァルキュリアあああ――!!!」

 メリッサはそれに気づくと盾を敵の後ろ足に引っかけて相手を倒す。倒れた黒い女は盾で全身をかばう。メリッサはそれを思いっきり踏みつけつづける。たまらず黒いヴァルキュリアは転げ落ち、屋根から落ちた。
 それを見るやいなやメリッサがこちらに向かって走ってくる。

「佑月いいい――!!!」

  メリッサはこちらの塀に飛び移り僕に抱きつく。

「――ヴァルキュリア! 僕に力を貸せ!」

 僕はメリッサから武器を手渡される。それを、大きなシャベルを担ぎラミディを待ち構えた。

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