終末のヴァルキュリア 第三十四話 僕とメリッサ③ を更新しました

2018年11月27日

第三十四話 僕とメリッサ③

 筋肉で盛り上がった腕を力一杯はしごをつかんでラミディが僕のところへ登って来た。僕は深呼吸をしシャベルを振り上げ、奴の顔が地上に顔を出した瞬間、僕はシャベルを振り下ろし前頭部に強烈な一撃を与える。

「オオオオオ!」

 ラミディは叫ぶが、僕はシャベルを担ぎ強烈な打撃を加えていく。老婆のエインヘリャルの時は短いシャベルを選んだが、今回は全長120cm、1.8㎏の打撃に特化した軍用シャベルを選んだ。

 これを頭部に一撃を加えると気絶ものだが、ラミディは苦悶の表情を浮かべながらはしごを登ろうとしてくる。

 だが、そうはさせない。僕は絶えず攻撃を加える。ラミディは一撃の重さにひるみ、はしごの穴から頭を隠す。僕は冷静に振りかぶり、奴を待ち構える。奴が顔を出した瞬間、容赦なく振り下ろす。

ゴオオオオン! と、鈍い金属音が鳴り響く。やったか!? しかしラミディはあきらめず手をはしごの穴から残している。

 お互いに相手の出方を探る。奴が目の前にいるミスは即死。呼吸が荒ぶっていく。僕は心を落ち着かせて、振りかぶり奴を待ち構えた。

 すると急にラミディは半身を地上に出し、強引に突き進んでくる。頭部に打撃を加えるが、かまわず這いつくばって登ろうとしてきた。まずい。慌てて頭部に打撃を加えるが奴はひるまない。

 1発 2発 3発、 確実に頭部に打撃を加えるが体を起こしてきた。なんて怪物だ普通なら死んでいるぞ。僕は一心不乱にシャベルを振り下ろす。8発ほど加えたとき奴の動きが止まる。僕は休まず次の一撃を食らわす。

 急に僕の足下が揺らぐ、奴が僕の左足を握っていた。しまった! 必死に振り払おうとするが、奴の握力で左足が動かない。ギリギリと握りつぶされる僕の足首。

 このままではやられる。僕は狂気にかられ、必死の思いでシャベルを振り下ろす。放せ! 放せ! 放せ!

 どれほど打撃を加えただろう。奴の握力は弱まり徐々に体を穴に引き下げていく。息つく暇もない。僕はこの攻防を3分間続けなければならなかった。

――――――――――――――――――――――
 息つく暇もないのはメリッサも同じだ。黒いヴァルキュリアは強引に体格を生かして剣戟(けんげき)を加えていく。塀の上でメリッサは冷静に一撃一撃を流していくが力任せに黒いヴァルキュリアは攻撃を加えていった。

 メリッサは巧みに懐に入り鎧の隙間を刺すが黒い女はひるまない。その姿は狂気とも言える姿をした戦士であった。

 メリッサはその圧力に負け盾で防戦に徹する。距離を取り相手の攻撃を殺す。リーチのある黒いヴァルキュリアはここぞとばかりに剣を振り下ろしていく。

 メリッサは冷静に一撃一撃を処理していく。盾を蹴られれば足を狙って剣を切りつけようとし相手の攻撃を連撃へと結びつかないようにした。

 長くて短い攻防。黒いヴァルキュリアは徐々に息が上がり剣が鈍ってくる。
「あと一分」メリッサは時間を数えていた。お互いに距離を取り相手の動向をうかがう。

「どうした。もうお疲れかな? 黒いの、やはり練度が足りないなそんなことでは張り合いがないぞ」

「あと50秒」

「銀色の。防戦一方のお前が何を言える。私は――」

 黒いヴァルキュリアは少し集中を切らすと、メリッサの反撃で刺された痛みが襲ってくる。しばしの間、疲れと痛みで構えたままじっとしていた。

 メリッサは相手の様子がおかしいのは気づいていたが構えたまま攻撃にうつらない。あと「15秒……10秒!」

 突然メリッサは相手に飛び込んでいく。少し反応がおくれた黒いヴァルキュリアはメリッサを切りつけようとする。
 メリッサはそれをかわし盾のへこんだ部分で相手の足の膝当てに引っかける。

「しまった!」

 メリッサは黒のヴァルキュリアを大きくすくい上げ転ばせた。そのスキに黒のヴァルキュリアの喉を突き刺す。

「があっ!?」
「佑月(ゆづき)!」

 メリッサがこちらへ顔を向けた。
――――――――――――――――――――――

 僕はラミディにシャベルで打撃を加え続けた。徐々にラミディの手は地上から離れてくる。頭を出したところを大きく打撃を加えたところ手がはしごの穴の上部から手が離れ暗闇に落ちていく。
 そこへメリッサが走り込んできた。メリッサ良いタイミングだ。打ち合わせの時間通りじゃないか。

 僕が言う、「――ヴァルキュリア、僕に力を貸せ!」

 いつものかけ合いのあと、メリッサから手渡される銃。ずっしりと重みで落としそうになる。はしごの穴から100mほど距離を取りそれを構える。

 その銃の名はバレットM99 対物狙撃銃で 全長1280mm 重量11.3kg。50口径マグナム弾を装填でき、命中精度は高い。シングルショットで一発しか装填できないが、そもそも近距離でスナイパーライフルを一発外すとそこで命取りだ。この銃はヘリコプターや装甲車を貫くことができる。

 2脚を立てラミディが顔を出すのを待ち構えた。

 あれだけ打撃を加えれば奴の動きはひどく鈍る。僕はこのときを待っていた。
 弾は一発。それで終わり。疲労と緊張感で手が震える。僕の手よ震えてくれるな。この一発で良いんだ、一発当てればすべてが終わる。

 これは最初で最後の一撃(シングルショット)これ以上の他にはない。僕の人生は追い詰められたとき逃げるか他人任せにしていた。今日の僕は違う。

 僕は兵士だ敵が現れればそれを撃つだけ。感情を捨てろ。たった一発、一発で変わるんだ手よ震えてくれるな。

 冷や汗が流れる。外せば死。人生のシングルショット、それを撃ち込む。静寂の時間が流れる。そして穴から手が出てくる。

 まるでスロー再生のように相手の動きが見て取れた。ちらりとラミディの髪が見える、まだだ。額が現れる、違うまだだ。頭部全体が穴から出てきたとき――僕は引き金をしぼっていった。けたたましい轟音とともに魂の一発が解き放たれた。

 ゴオオーーーーーーン。街中に音が鳴り響く。弾は直線を進んでいく、僕は目を見開く。そしてゆっくりと、ラミディの頭を吹き飛ばした――

次→第三十五話 日差しそして
前→ 三十三話 僕とメリッサ②
第一話→現実世界
まとめ→ノベル

にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へにほんブログ村 イラストブログへ