終末のヴァルキュリア 第三十五話 日差しそして を更新しました。

2018年12月8日

第三十五話 日差しそして

 黒のヴァルキュリアは天を仰ぐ。青い空から温かい日差しが彼女に差し込んできた。

「そうか私は負けたのか……」

 体は光に包まれている。ゆっくりとした時間が流れていく、彼女がもっていた最後の命の光りだ。

「最後の敵としては最高の敵だった。悔いはない」

 黒いヴァルキュリアが目を閉じると姿は消え去り、ただ石造りの塀が残すのみだった。当たりは静かだ。

「佑月(ゆづき)! 私たちは勝ったんだな!」

 メリッサが抱きついてくる。

「ああ、そうだよ。僕も信じられないくらいだ」

 メリッサの笑顔に勝利を実感する。僕はあの大男に勝ったんだ。しかも完勝。ふつふつと喜びがわいてくる。

「作戦を聞かされたときは、半信半疑だった。相手をフラフラになるまで追い込んで、むかしは戦車の装甲をぶち抜くように作られた対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)で打ち抜くなんて」

 メリッサは小さい体を飛び上がらせてぴょんぴょん跳ねた。

「僕の腕じゃ動いてる敵は狙撃できないだろうからね。距離も近くないといけない。弱らせる必要があった。
 やはりバレットM99のマグナム弾相手では貫通力を殺せなかったようだ。もし、あれでもはじかれたら僕の世界の文明の終焉を感じただろうね」

「一撃でも食らったら致命傷という中でよくやったな佑月! お前を選んで正解だった流石だぞ! 完璧だった、すごいぞ!」
「メリッサのサポートがあってこそだよ。黒のヴァルキュリア相手によく上手く立ち回り僕に武器を与えてくれた。君の活躍がなければ僕はあっさり死んでいた。ありがとうメリッサ」

 喜びのあまりメリッサは首に手を回しキスをしようとする。でも身長が届かず、ぴょんぴょん跳ねている。僕は膝を折り熱いキスのプレゼントを受け取った。

「ん……ん……ん…………」

 とろけるような熱いキス。僕は勝利の喜びを感じ絶頂の気分だった。舌を絡めつけ唾液の糸を引く。これが大人の快感というものなのか。

「佑月お前は最高のパートナーだ。私はここまで成長してくれて嬉しい。もっともっと私を喜ばせてくれ。お前といると楽しくてたまらない」
「僕もだよ、メリッサ」

 もう一度口づけをかわす。僕とメリッサがつながってる気分になる。かつてない幸福感を味わっていた。

 ――突然武装した人々が僕たちを囲んできた。

「この騒ぎを起こしたのはお前たちか!」

 武装した兵士がよくわからない言葉で叫んでいた。

「どういうことだ。メリッサ」
「警護の兵士に見つかった。これだけ騒ぎを起こせば当然だな」

 兵士が叫ぶ。

「お前たちこちらに来てもらう、抵抗すると命はないぞ」

兵士は僕の手を引っ張る。
「何をする! 離せ!」

 僕は叫ぶが言葉が通じない。

「佑月(ゆづき)! 抵抗するな! おとなしく相手のなすがままに任せろ」

僕とメリッサは兵士たちに引き離された。

「メリッサ!」

 僕は何が何だかわからないまま兵士たちに連れられ牢屋に入れられた。

――――――――――――――――――――――――――――

 暗い暗い石造りの牢屋。窓は縦横15cmほどで光がほとんど入らない。
 何もすることがない。時折よこからうめき声が聞こえる。何故このような場所に入れられなければならないのか。僕には理解できない。騒いだのが原因か? 彼らにとって奇妙な武器を持っているからか? はたまた外人だからなのか? 考えめぐらせるが泥沼。鬱になるだけだ。

 メリッサはどうしているだろう。ひどい目に遭わされていないだろうか。まさか彼女の体を狙って――ふつふつと怒りが沸き起こる。

「おい! ここから出せ! メリッサに会わせろ!」

 僕は叫ぶ。

「うるせえぞ! 黙れ! 訳のわからない言葉でわめくな!」

 怒鳴り声が聞こえるが僕は気にしない。

「出せ! 出せ!」

 僕が叫び続けると兵士たちが集まり牢を開けた。やつらはガントレットをはめたままで僕を殴った。僕が言葉を出し続ける限り殴られ続けた。

 僕が押し黙ると、兵士は牢の鍵を閉めて立ち去っていく。くそっ! なんなんだ一体!
 武器さえあればこんな奴ら……。口から流れる血を拭い歯ぎしりをし始めた。

 メリッサは何故、抵抗するなと行ったのだろうか? こんな野蛮人銃で全部……。
 思い浮かんだ発想でぞっとする。自分がずいぶんと野蛮化したものにきづいた。環境に慣れるとは恐ろしいものだ。今の僕は平気で人を殺すだろう。

 少し自分が嫌になる。それでもメリッサさえいれば自分が保たれてきた。孤独は人をおかしくする。僕はメリッサに救われているのだと改めて気づく。

 食事は一日一回。粗末で硬いパンとまずいスープが運ばれてくる。最初は食べるのをためらっていたが、腹が空いてきたため仕方なく食べる。

 まずい。どうやったらこんなにまずい飯を人に食わせられるのか。この世界の舌のおかしさに絶望する。

 メリッサの料理はうまかった。メリッサの食事が食べたい。

――二日目――

 なにもない。ぴとぴとと水滴の音がする。石の上では眠れない。壁にもたれかかって数時間寝て起きるそれをずっと続けていた。

――三日目――

 なにもない。水の音がうるさい。うめき声がうるさい。やめろやめろ。こいつら外に出たらこの牢ごと爆破してやる。楽しみだ。

――四日目――

 何もかもがめんどくさい目を開けるのもめんどくさい。手を動かすのもめんどくさい。足なんて動かさなくていい。

 男の足音が聞こえる。何だ飯の時間がはやいじゃないか。僕の牢が開けられ。兵士たちに連れて行かれる。館をめぐっていき、大きな扉の目の前で止まった。
 ここに入れというのか。兵士たちが扉を開けた。そこで目にしたものは――

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