終末のヴァルキュリア 第八十八話 百合の花②

2021年1月16日

 僕はフード付きのマントに身を包んだ。顔を闇に潜め、フードの暗い奥から光をのぞく。神経をとがらせて、蟻(あり)一匹も見逃さない、SG552の安全装置をセミオートにスイッチを合わし、一度構える。幻影が行き交う中、一人の影に向かって引き金(トリガー)を引く。おそらく僕の弾丸は目標をとらえただろう、そう確信すると速(すみ)やかに作戦に入る。

 少女たちの声が聴こえた時、身をわき道に隠し、静かに目標(ターゲット)を確認する。

「もう、ララァったら、ひどいんだ、スカートをめくられて恥ずかしがってるのを、かわいいだなんて」
「だって、貴女の初心(うぶ)に恥じらう姿を観たら、ヴァージンだなって」

「やめてよ、そんなガキじゃないって、ただ、さ、驚いただけだって」
「ほんとにそうかしら」
 そう言った後、二人は顔を見合わせて、少し頬(ほほ)を染めて笑い合った。

 そっと静かに銃口をリリィの頭に向けて、照門(リアサイト)に合わす。焦点(しょうてん)が照星(フロントサイト)と直線に交わった時、僕は引き金(トリガー)をしぼった。

 その刹那(せつな)リリィの頭の一部がふっとび、脳みそを路上にぶちまける。赤く染まった髪がさらに紅(くれない)に染まった。

「リリィ!」

 ララァがそう叫び、瞬間、二人の姿が消え、僕は目標を見失う。その時、後ろから声が掛(か)けられた。

「ま~だ、わかんないかな。無駄だって」
「ふう、もうそろそろ、決着をつけましょうか。この街にも飽きてきましたし、まあ、さっきの狙撃は焦りましたが」

 無傷の彼女たち。その姿を確認すると、僕は二人に背を向け走り去った。

「また逃げる気だ、今度は逃がさない」
「まってリリィ相手の動向を見た方が良いわ。リリィ!」

 二人はこちらを追ってくる、しかし女の脚では男について行けない。僕もいい歳をしているから衰(おとろ)えているが、流石に並みの女より脚力(きゃくりょく)はある。日向さんだったら即効に首根っこ捕まえていただろうが。

 途中、身体を隠し二人の動向を見守る。リリィが先行して、ララァと距離を離した時、僕はララァを後ろから抱きつき、羽交い締めにしながら小さな口を塞いだ。

「ん!?  ん……う……!」

 ララァは抵抗しない、時間変革能力も使う様子もない。こちらの手を探っているのだろうか、大人しい、まあそちらのほうが都合いい。

 ララァを連れ込み袋小路に追い込む。そこで彼女の口から手を離した。

「ぷはっ、はあ……はあ……」

 息が苦しそうだ。鼻は塞がなかったけど、もしかして興奮しているのかこの娘は。変に色っぽく顔が赤いぞ。

「わたくしを、どうなさるおつもりですか?」
「さて、どうしようかな」
「まあ!」

 急に体躯(たいく)をよじらせ、上目遣いでこちらを見つめていた。

「そう……ですね、この状況で男と女が二人っきり。やることはおそらく一つです。無粋なことを申しましたね。いいでしょう、さあ、どうぞお好きにしてください」
「それでいいのかい?」

「以前申したとおり、貴方はわたくしの好みです。それなら相応の覚悟が出来ます。ご自由にどうぞ……」

「言っておくが、僕をそこら辺の男と一緒にしてもらっては困る……」
「なっ、ええっ……!? アブノーマルなんですか!」

 急にララァはまるで、初めて恋を知った少女のように、頬に手を当てて、体を左右に振りだした。

「そ、そんな方だったんですね! なんということでしょう! わたくし、想像がつきません! ど、どうされるのかしら、わたくし!」

 急に息切れを始めた。なんか誤解しているようだが、まあ面倒だしそっとしておこう。

「まさか……道具を使うのですか?」
「僕はね、最近はこの銃ひとすじだよ」
「……うそ!! そんな……、そんなものを使うんですか!」

 突然ララァは股間の辺りをギュッとつかみ、嫋(たお)やかに、そして、黒き銃口を熱っぽく見つめ始めた。

「そんな大きい物入りません! 無理矢理入れたら血が出てしまいます!」
「無理矢理は嫌いかい?」

「え、あ……えっ……と、実は……その、大……好き……です──!」

 自分の体を力いっぱいと抱きしめるララァ。そして突然、身震いをし出す。

「いや、ああ、ときめきが止まりません! どんなことをされるんでしょう! 私、興奮が止まりません! 何するんですか、何をされるんですか!」

「君の好みだといいね」

「え、本当ですか‼ 選ばせていただけるのならば、服をビリビリに破いていただくと……その乱暴に。で、でも、駄目です、すべてはいけません、服の形を残して! そして可憐に、ああ、わたくし、可哀そう!

 軽くなら顔をぶってもかまいません。お尻ならもっといいです、いっぱい叩いても! ああなんてことでしょう!

 飢えたオオカミに無理矢理!! ひどい、そして、獣(けだもの)の貴方はわたくしを貴方のもので……、いや、そんな! そんな恥ずかしいことを何故なされるの!

 い、いや、やめて! で、でも非力な私では抵抗虚しく、足を開かれ、無理矢理、その、よ、欲望を注ぎ込むんですね! そうなんですね!」

「いろんな方法があるね」

「それだけじゃないんですかあ! ああ! それなら後ろからかしら! 二人ともケモノのような格好をして、荒ぶるんですね! なんてことなの! わたくしはウサギ、貴方はオオカミ、好きにし放題。ま、まさかその手にある物をわたくしのお尻に!? いや! 入らない!

 だめだめ、いやあ! そんな、硬くて太い物入りません! ダメ、入らないです、無理です。そして、わたくしは痛みをこらえながら欲情をかき立てられ、頭が真っ白になって……。

 ──この先どうなってしまうのかわかりません、ああ佑月さん! わたくし、どうなってしまうんでしょう!」

「君のことは知らないな」
「ああ、なんてことなの! わたくしは奴隷、貴方はご主人様。毎日毎日、責め苦を受けるんですね!

 快楽と堕落にまみれて、わたくしは堕(お)ちていくんですね! 官能小説のように!

 そして愛玩動物(あいがんどうぶつ)として扱われて、貴方の欲望の趣くまま、為(な)すがままにされて、わたくしは徐々にそれが好きになる。

 いや、ダメ! 駄目です! そんなことなされては、わたくしが壊れちゃう。でも壊されたい! 壊れたくない! いやでも、無茶苦茶にされたい!

 ああ……もう、駄目……、わたくしは、……虜(とりこ)……」

 とりあえず、そのままにしておくと、勝手にショックを受けていた。妄想がはかどったらしい。居心地が悪いが、触れると怖いのでそっとしておいた。

「ララァ――! どこにいるんだ、ララァ……」
 やっとリリィの声が聞こえてきてくれた。なんか知らないが僕はひどく疲れた、ことを先に進めたい。

「リリィ! ああ、ダメ! リリィっ! わたくしたちこれからなの! これからがすごいんです! さあ、ご主人様、あの子に気づかれないよう早く!」

 僕は無言で銃を背中のほうに向けた。その瞬間、ララァは何を思ったのか僕にはよくわからないが、まあ、いいだろう。

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