純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百話 勇者ナオコ④ を更新しました。

2021年6月4日

「ここかい? メリッサ」

 僕とメリッサは街の郊外の小さな家の前にやって来ていた、どこも不自然な点は見当たらない、人の住んでいることがわかるように生活感があり、薪や生活用品が樽や木箱の中に入っていた。

「ああ、ここだ、ナオコと他のエインヘリャルがいる」

 メリッサは語る、ならナオコはまだ生きているということか。あの子の気配は独特で、微弱なエインヘリャルの気配だと前言っていたからメリッサには判別つくのだろう。

「ならここに押し入るか、メリッサ、弾を無駄にしたくないから頼む」
「了解だ」

 彼女は鎧姿に変化して、ドアの錠を壊すため切りつけた後、扉を蹴りつけて破って中に入ると、部屋の中は外とは裏腹に、生活用品がなく、ただ地下へと続いていそうな鉄の蓋が地面に埋まっていた。鍵などはかかっていなく、ふたを開けると、地下へと続く階段が続いていた。

 その奥に進んでいくと、堅く閉ざされた鉄扉があった。

「どうする? 私では無理だ」

 メリッサの問いに僕は、

「ノックするさ、武器を創るよメリッサ」

 いつものやり取りを交わした後、RPG-32つまり、短距離擲弾(てきだん)発射器を僕は受け取り、ドアに向けて、発射し大きなノックをした。

 壮大に鉄の扉は粉々に砕け散り、中に入っていく、石造りの地下部屋は、いかにも怪しい雰囲気に包まれていた。

 ──突然、騒ぎを聞きつけたのだろう、若い男と金髪の女性がこちらへとやってきた。

「佑月、あの男がエインヘリャルだ」

 メリッサが先に察知して、後から遅れて、金髪の女性が、若い男に告げる。

「キャラディス、あの男、エインヘリャルよ!」

お互い状況が把握できたようなので僕はキャラディスとかいう男に話しかける。

「どうやら、うちのナオコが君のところにお世話になっているようなのでね、挨拶しに来たよ」

 落ち着いた様子で僕は言い放ったのでキャラディスは不意を突かれて動揺してしまっている。

「なっ……、何を……!」

 言葉に詰まったということは何か後ろめたいことがあるのだろう。僕はゆっくりとRPGを彼に向けた。

「ひぃ⁉」
「……ナオコを返してもらう」

 キャラディスは押し引きが苦手なのか、狼狽(ろうばい)してしまっていた。すぐに金髪の女性に向かって叫び始める。

「セシリー! あの子を使うぞ、人質だ! 僕は戦闘準備をする」
「ええ! しくじらないで!」

 そう二人は方針を決めてこの場から立ち去った。

「RPGは使い捨ての単発式なんで、今のあいつには何の危険もないけどね」
「佑月よくやった、とりあえずナオコは無事のようだな」

「ああ、問題はこれからどうするかだね」
「で、どうする? ヴァルキュリアを追ってナオコを確保するか? それとも、キャラディスとかいう男を倒すか」

「キャラディスを始末しよう、とりあえずエインヘリャルはあいつしかいないんだろ、人質に使う様子だし、命の心配はなさそうだ。それに、ヴァルキュリアの身体能力だとこの先迷路になっていたら、敵を見失う場合がある。

 エインヘリャルはメリッサが気配を追えるし、さきに始末したほうがかえってナオコは安全になる」

「私としてはナオコが心配だが、合理的に考えればやむなしか、よし、それでいこう」

 メリッサは感情的にならないから好きだよ、僕にとって最高のパートナーだ。喧嘩していたのも忘れて手伝ってくれる。流石だ、良い妻を持ったよ。

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 話はナオコのほうに戻す、刺されたのも癒えて体が自由に動くようになったころ、脱出する機会を待っていた。この娘は、本当に賢い子だなっと話を聞いて今回改めて思ったよ。

「どうしよう?」

 男の子は戸惑っていた。彼とは言葉が通じないが、わかり合えたという。子ども同士ってなんだか不思議だな。

「何かさっき音しなかった?」
「そう……?」

「多分パパだ、来てくれたんだ!」

 ナオコは助かったと喜びの声を上げた、これで第一条件はクリアだと、後は自分のところに誰が来るかが問題だと考えたらしい。僕の娘だな、力がなければ頭を使え、いつの間にか僕似の素直ないい子になっているじゃないか。

「どうすればいいの……」
「ちょっと待って足音が聞こえてくるよね……? 私、隠れるから、ここお願い」

「えっ‼ えっ……どういう……」
「言う通りにするの!」

「うん……」

 ナオコの耳の通りにセシリーはこの部屋の鍵を開け、急いでこの部屋に入ってきた。が……目的のナオコが見当たらない、部屋を見渡すが、どこにも確認できなかったようだ。男の子に鬼気迫る顔で問いただす。

「おい、ガキ、女の子はどこ行った! あんたが刺した子だよ!」
「わからない……」

 そう言って男の子が首を振ると、セシリーは切羽つまって見るからに慌て始めたようである。

「クソ……ナオコちゃーん、出ておいで、良い子だから、かくれんぼやめよう──!」

 彼女は中をうろつき探し始めた、それを見計らってタンスの陰に隠れていたナオコは素早く回り込んだ……!

「──ここだよお姉さん」

 言い放つと同時にナオコはこの部屋に常備されている足枷(あしかせ)をセシリーにはめた。

「なっ! このくそがき……しまった!」

 足枷をはめられたことに気づきもがくが、鎖につながれていて身動きができなかった。

「へへ、お姉さん意外と間抜けなんだ、鍵もらっていくから、あとはごゆっくり──」

 ナオコはセシリーの腰に下げていた鍵束を取り上げて、さっさと部屋から男の子といっしょに出ていった。うまく完璧にカタにはめたな。

「待ちなさい! よくも! くそ、足が……。このクソガキ────!」

 そして、ナオコはちゃっかりこの部屋の鍵を閉めてこの場を後にしたのだった。

 部屋から出ると、廊下はいくつもの小部屋が続いており中で男や女の声が聴こえてきた。
「……どうしよう……」

 助けを呼ぶ声に戸惑う男の子にナオコはためらいなく「助けるの!」と言い、ナオコは一つ一つカギを開けていった。

「助かった! ありがとう嬢ちゃん」
「これで殺されずに済む!」
「ありがとうお嬢ちゃん……!」

 人々の感謝の声にナオコはうんうんと言って嬉しがっていた、だが、ある大部屋の鍵を開けてしまい事態は混乱へと変わっていく。中には、虫に取り憑(つ)かれ正気を失い、屍人となった人たちがナオコたちを襲ってきた。

「しまった!」

 噛みつこうとナオコに近づいてくる、だが、動きは鈍く、子どもの足でもかわすことができて、距離を取ることができた。屍人たちに追いかけられながら、悲鳴を上げる一般人とナオコの逃走劇が始まった。

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