純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百二話 逆襲②

2021年7月4日

 ひたりと水雫が石畳のもとに落ちる、ここは僕がメリッサに頼んで借りてもらったミランディア役所の監獄の一つ、石造りの地下室で、どんな声が聴こえようとかまわない、ここなら周りに気にせず自由に僕は能力を発揮できる。

「……こ、ここは……?」

 どうやらキャラディスは気づいたようだ、そして自分が手足を鎖でつながれて壁にはりつけにされていることを自覚したようだ。

「キャラディス!」

 部屋の隅には鎖につないでいるセシリーの姿がある。彼女が恐怖でひきつっている顔をしていることでキャラディスは自分の立場を理解できたようだ。

「僕をどうする気だ……?」

 キャラディスの問いに対し僕は静かに言葉を紡いでいく。

「君はずいぶんと、おかしなことをしてくれたようじゃないか、お前の地下室には、300を超える住人の死体と、500を超える屍人がいた、生き残った150人くらいの住人たちは今療養中だ、何の必要があったのか問いたいね」

「実験の被検体は多いほうがデータがとりやすい、そう考えたからだ」

「違う、それは違うな。ここまで被害を広げる必要はなかった、君は自分の力を住人を使って試したかった、しかしエインヘリャル相手では自分の命が危うい、だから弱い人々を実験に使った、そうじゃないかい?」

「……そ、それは」

 僕は静かにキャラディスの顔を掴む。

「そしであまつさえ、女子供に手を出した、……僕の娘のナオコまで実験体にさせられた、どうやらその実験とやらで、子どもを使ってナオコを刺したそうじゃないか、そんな必要あったのか……?」

 僕の指先に力が入る。キャラディスは「うっう……」と唸ったままで何も言えない、僕はその手を放し天井を見つめる。

「この世界というのはやはりうまくできていてね、罪というものには、罰というものが付属しているらしい……」

「ど、どういう意味だ……?」

 動揺し始めるキャラディス。僕はそれを横目で見ながらゆったりとした口ぶりでこう告げる。

「君にも実験体になってもらうのさ、僕の武器の性能を試す人体実験の相手としてね……!」
「ひぃ⁉」

 キャラディスは恐怖で顔がひきつった。

「君も知っているだろうがエインヘリャルの体は人間とは強度が違う、ちょっとやそっとじゃ死なないし、再生する。……僕も必要だと思ってね、自分の武器がエインヘリャルに対しどれくらい有用で、どこを狙えば効果的か、データが必要だ……!」

「な……、僕を実験に……?」
「そうだよ」

 そういうと同時にSG552で右腕を貫く、やすやすとちぎれ、血が吹き飛ぶ。

「うがあぁ──!」
「ふむ、SG552の威力ならエインヘリャルの腕ぐらいなら吹き飛ぶようだね、なるほど……」

「やめて! こんなことして楽しいの⁉」

 セシリーの問いに対し僕は「別に……」と返す。

「別に⁉」
「当然だ、僕に虐待の趣味はない。ただ罪に対し罰を、実験に対し実験をしているだけだ」
「……」

 そう僕が告げるとセシリーは黙ってしまった。自分に思い当たる節があるからだろう。続けてキャラディスの太ももを銃弾で貫く、肉が吹き飛び、壁にべったりと血まみれの肉片がこびりつく。

「ぐああぁ──!」
「ふむ、流石にSG552でも太ももを吹っ飛ばせるほどの威力はないか……」

「はかどっているか? 佑月」
「──メリッサ……」

 メリッサが地下室へ入ってきた、ちょっと僕は戸惑ってしまった、正直好きな女性に僕のこういう一面を見せたくはなかった。だが、メリッサは一癖も二癖もあるお姫様だ。

「ナオコが世話になったからな、こいつには、どういう声で啼くか興味がある。それに武器交換が必要だろ? お前には」
「ああそうだな……」

 そしてアサルトライフルからサブマシンガンに交換しフルオートで奴の腹にぶっ放した。

「あああああああぁ──‼」

 奴の腹は中身ごと吹き飛び、痛みで気絶してしまったようだ。

「気絶したようだな」
「そうだね、意外とサブマシンガンも腹にぶち込むという選択肢がとれるようだ。残弾数と相談しながらだけどね」

 彼女の対し冷静に僕は答える。メリッサは木の桶に入った水を持ってきてキャラディスの顔にぶちまけた。

「ぐはっ、かはっ、があ……!」
「起きろ、まだ始まったばかりだ……」

「もうやめて! キャラディスに罪があることは認めるわ! でも、こんなこともうやめて!」
「何故? 罪に対し罰が軽すぎるじゃないか」

 僕の問いかけに対しセシリーは泣きながら、

「あやまるから……、私たちが悪かったって認めるから助けて……」
「あやまるくらいなら最初からするな! それに謝って済む問題と済まない問題があるだろ!」

 メリッサに続いて僕も畳みかける。

「お前たちの前で罪のない人たちが何人命乞いをしたか、想像に難(かた)くない。それに対し君たちはなんて言ったんだい?」
「あっ……! うう……」

 セシリーは泣きながら押し黙ってしまったので、メリッサはため息をついた。

「続けろ、存分にやれ」
「ああ……」

 メリッサの協力で、ライフル、アサルトライフル、バトルライフル、マシンガン、サブマシンガン、擲弾発射機(てきだんはっしゃき)、爆薬など、僕が作成可能な武器を試し続けた。死ぬぎりぎりで止めるため不死の体がキャラディスの痛手となり、何度も意識を失い、そして死んでから生き返る体験をし続ける、当然痛みで奴は発狂し、何も言えなくなっていた。

 セシリーもその姿を見て泣きわめきついに狂ったように笑いだして気絶した。僕は淡々と武器をあれこれ変えながら試した。残酷な時間だったが、僕にとって得難(えがた)い武器のデータが取れた。これでエインヘリャル戦でより効果的に武器を選択し、またその交換時間を考慮しながら戦う戦術が僕の頭の中でイメージができた。

 狂気の時間が過ぎ、メリッサもだいぶ飽きてきたようで、何も言わず協力していた。そろそろ終わりにしようかと思った瞬間、ドアを叩く音がした。僕はびくっとしたがその声を聴くとむしろ逆に驚いた。

「ママ―、パパ―、私お腹空いたー。夕食にしよう」

 ナオコの言葉に僕とメリッサはどきりと目を合わせた。

「佑月そろそろ終わりにしよう、食事の支度がある」
「そうだな、子供に悪影響だ、そうしよう」

 キャラディスは気が付き、狂い笑いを始めたのでバトルライフルで頭を吹き飛ばし、奴らは光へと化した。

 一時間ほどたって僕たちは夕食の時間になった、今日はハンバーグをメリッサは作ってくれた。甘いケチャップに似たソースと肉汁たっぷりのハンバーグにナオコは大満足したようだ。

「おいしーい」
「今日はお前が頑張った記念にナオコスペシャルコースだ、たんと食べろよ」
「うん!」

 その母子の微笑ましい姿に僕は笑みをこぼさずにはいられなかった。でもナオコはふと何かに気づいたようで不思議そうな目で僕とメリッサを交互に見つめた。

「どうしたんだい、ナオコ? 僕の顔に何かついてるかい?」
「お前の顔についてるのはおっさんの顔だろ」

 僕とメリッサの会話に三人は大笑いをした。でもナオコはまだ腑(ふ)に落ちない様子だった。

「ねえねえ、パパとママは喧嘩してたんじゃないの、いつの間に仲直りしたの?」
「うーん? ママとパパは喧嘩なんかしてないぞー、ナオコの勘違いじゃないか?」
「えっ⁉」

 メリッサの答えに僕とナオコは顔を合わせた。

「いやだって、パパがママにひどいことしたって」
「何のことだか存じません」
「でもでも、ママが私にパパよりママのほうについて来いって……」

「う~ん? 何か勘違いしてるんじゃないかー。何もなかった、そうだよな、佑月?」
 微笑む姿に恐怖を感じた僕は、即座に答えた。

「えっと、はい……」
「だよなあ、ははは……」
「ははは……」

 メリッサにつられて僕も空笑いをする。たぶん、気分の悪いことは記憶の中から消去したのだろう、もはやなにも言うまい。こうして仲睦まじく、三人の生活が再スタートした。

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