純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百十一話 対決

2021年7月6日

 アウティスに気づかれないよう遠距離で射撃しないと、空気の膜で弾を防がれてしまう。──なら、距離をとらなければ。

 アウティスが右手を掲げると黄金色の巨大な球体が再び現れた。

「これこそ神の慈悲だ!」

 ほとばしる雷(いなずま)! いかづちが、大きな破裂音で僕の後ろの渡り廊下の屋根を打ち砕いていく。

全力で渡り廊下の屋根を走り、教会の鐘楼塔(しょうろうとう)の窓の中に入る。下をのぞくと、アウティスまで距離約180メートル。有効射程ギリギリだ。いけるか!? 奴を狙い定めバースト射撃で狙撃する。

 どどどっと小気味よく出ていく銃弾はアウティスの胸を貫き、奴は倒れ込む。やった! それを見つめていると奴の死体が消えた。しまった、時間変革能力を複製しているんだ。長距離射撃では時間変革能力を使われて意味が無い、……なら、どうする?
 
 空に浮かび上がる、小さな青い光の球体の数々。鐘楼塔(しょうろうとう)の下にアウティスはいた。

「身を隠せば勝てるというものではないぞ」

 右手に青く渦巻いた球体を手にする、それが光り輝く時、閃光が拡散されていく! 空に浮かんだ青い球体たちがそれを跳ね返し、閃光がそこらかしこに襲い、周りの建築物を破壊していく。

 僕の前の壁が破壊され、この姿が外にむき出しの状態になる。

「そこか……!」

 アウティスの手の光が輝き閃光が生まれていく! 鐘楼塔(しょうろうとう)を打ち壊そうと閃光が襲ってきた。僕は階段を上り、身を隠した。

「アウティス! お前の信仰はそんなものだったのか! 偉大な建築物である教会の鐘を壊そうとすると神の罰が下るぞ!」
「くっ……!」

 ただの煽りだったがどうやら効いたようだ。奴はわざわざ教会の内部に入り、こちらを追っかけようと鐘楼塔(しょうろうとう)を上っていく。コイツの思考パターンが大体わかって来た。

 僕は階段でアウティスを待ち伏せた。コツコツと足音が鳴り響く。MP7A1を床に置き、右手でショートソードを抜きアウティスが現れたところの顔を狙う。それを奴は悠々とかわし、アウティスの右手が僕を切り裂こうと襲ってくる。そう来ると思ったよ――!

 ショートソードを捨て、床からMP7A1を拾い、銃の火が噴く! 制圧射撃で鳴り響く轟音、アウティスは蜂の巣にされた。一瞬消えたあとまた同じところに現れるアウティス、むろん時間変革能力だ。

 僕は冷静に奴をバースト射撃で狙い撃つ。構えられた瞬間アウティスは身をかわした。だが、僕は冷静に狙い定めて、銃を放つと肩に弾が撃ち込まれた。……よし、上手くいった……!

 アウティスは肩に手を当てうずくまった、計画通り時間は変更されない。それに驚いたのは奴だった。

「なに、時間変革能力が効かないだと……?」

「無効化されたわけじゃない。時間が確定されてしまい、時間変革能力を使ったお前は別世界に飛ばされたんだ」

「なんだと!?」

「初め僕はショートソードを使った。これは間合いを詰めるためだ。近距離になってから銃弾を受け、お前は時間変革能力を使った。そしてもう一度銃弾を受けた時、またもや時間変革能力を使った。

 近距離で銃弾を受けたため、数秒戻しても僕から銃弾を受けることは確定している。だから、一度銃弾を受けた前、最初に時間変革能力を使ったときよりも前に、時を戻さないと結果を変更出来ない。

 時間変革能力という大きなエネルギーを使ったときよりももっと前に戻すとなると、巨大なエネルギーが必要となる。

 そうなるともはや別次元に飛ぶほどの因果の流れを変えることになる。つまり、二度時間変革能力を使った別のお前は、新たな別の時間軸の世界を生み出して、そのパラレルワールドに飛んでしまったんだ。つまり、新たな別世界のお前を生み出してしまった。

 今のお前は、二度目の時間変革能力を使った、違う世界軸に飛んだお前から切り離され、銃弾を受けることが確定されたこの世界軸のお前だ。

 だから直近で二度、時間変革能力を使っても、避けることができない、詰めが甘かったな……!」

「──なんだと、理解出来ん。神からいただいた力が、私を拒否したのか?」
「科学的思考を身につけてない、中世に生きているお前には理解出来ないだろうさ」

「科学? なんだそれは。すべては神の導きではないのか……!」

 僕は鼻で笑った。生きている世界が違えば思想や哲学が違うのは当たり前だ。それを理解できないうちはまだ僕に勝ち目がある、たとえこのアンフェアな戦いでも。

「私を傷つけるとはたいしたものだ。だが……!」

 アウティスが力を込めると傷跡がみるみる回復していく。……まさか、ヴィオネスと同じ能力が使えるのか!?

「……何も問題は無い。私の勝利は疑いようのないものだ」

 くっ、コイツはいくつ能力を持っているんだ、まあいい、コイツはヴィオネスと同じで致命傷を与えれば倒せるということだ、まだ勝機はある。
 
 僕は距離をとり鐘楼塔の階段を駆け上る。窓の外を見ると、ミランディアの街の人々が教会を囲んでいた。

 オーディウス神父の妻は言われたことを伝えたんだな、よくやった、これで外から教会団の人間はこの教会に入ることが出来ないし、コイツもおいそれと外に出ることはできない。
 
 教会の中の敵の兵はメリッサ一人で十分だろう。あとは僕がアウティスを仕留めるだけだ。──ところがだ……!

「……なんと醜いことだ……」

 アウティスは窓の外の人々を見て嘆きはじめた。

「これには神の裁きが必要だな――」
「お前、何をするつもりだ、まさか……!」

 アウティスは右手をかざす。街の人々の上に黒い球体が浮かび、血の目が下をぎょろりとにらみつける。これは、リリィの能力、まさかコイツ住民たちを虐殺するつもりか……⁉

「やめろぉぉ────!!!」

 僕は腹の奥から叫んだ!

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