純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百十三話 対決③

2021年7月8日

 静寂が訪れる、僕はにらみ続けたまま動かない、相手のスキをうかがっている、一手間違えれば、即死の戦い。ゆっくりと風が吹く、それは冷たい風、頬をかすめていく。

 今度はアウティスから動き出た、左手が、銃を構えている僕の右手を切り払おうとする。鋭い軌道で空気を切り裂いていく、僕はわざと銃を下ろしてかわす。

 そのままの姿勢でアウティスの左足を撃ち抜く。銃弾は太ももの中心をとらえ、アウティスは膝をついた、よし……やった……!

 僕は、そのまま胴体を蜂の巣にしようとする、だが構えた瞬間アウティスの右手が銃を切り裂こうと襲いかかった──! 僕はいったん距離をとり構え直す。

 アウティスが怪我を治している瞬間、とどめを刺そうと考えた。けれどもアウティスは足を引きずりながら距離を詰めてくる。
 
 コイツは銃に対する戦い方を心得ている……! 日向(ひゅうが)さんと戦った時に学んだことだろうか、奴は十分な間合いすらとらせない。

 体ごと突っ込んでくるアウティス。セミオートで肩を撃ち抜くが奴は動じない。アウティスの右手が僕の腹を狙ってくる。横に足を運んで僕はかわそうとする、だが左足が痛んでいて上手く足を動かせない。──くっ! 奴の右手が僕の左の腹を貫いた。

 くそっ! 奴は僕にとどめを刺そうと左手で首を切り裂こうとする、曲がりくねって襲いかかる手の刃! 僕はあえて奴に体をくっつけアウティスの体を抱え込んで身動きを取れないようにする。深々と僕の右の腹に刺さる手!

 それをこらえながら奴の動きを止めた瞬間、アウティスの頭を撃ち抜こうと右手の銃を奴のこめかみに当てる。

 アウティスは、体を回転させて、力尽くで身を伏せ、右足で僕の左足にまたもや打撃を与えようとした。僕は倒れ込みながら体を伏せ、ほふく前進で奴の攻撃をかいくぐる。

 奴は距離をとられないように手で移動しながら回転し立ち上がり、僕の体に足をたたきつけようとしていく。

 ──僕は少しずつ奴を鐘楼(しょうろう)の中心部へと移動させる。奴の上に鐘が来た時僕は銃を鐘の根元へと狙い定める。

 これで終わりだ―!
  
 ドドドと軽快に流れ出る弾丸、MP7A1が火を噴いた瞬間、鐘の根元が砕け散る。ミランディア教会の鐘は、アウティスを閉じ込めるようにゴォンと音を立てながら落ちていく。これで奴は動けまい……!

「しまった! これでは──!」

「そうだよ、お前は身動きが取れない。これからお前を蜂の巣にするけど、時間変革能力を使ってみるか? 

 これだけ近距離で攻防を行ったことを無かったことにすると、並列世界に飛んでお前自身は生き延びる世界に飛ぶことは出来ても、この世界の時間軸ではお前が死ぬのが確定するだろう」
 
「くっ……!」
「……じゃあな、アウティス神父。僕はお前は天国に行けないと信じてるよ。行き着く先はヴァルハラだ──」

 ――僕は勝利を確信したそのときだった――!

「佑月! 大丈夫か!?」

 メリッサの声が聞こえる。──まずい。鐘の隙間から光がもれてくる。僕は、とっさに階段を上がってきたメリッサをかばって倒れ込んだ。

「なっ……!」

 メリッサがわずかに呟(つぶや)いた。

 鐘から閃光が走り鐘や鐘楼(しょうろう)を粉々に砕いていく。僕はメリッサに光が当たらないよう覆い被さっていた。

「何をやってる、佑月!? 私をかばっている場合か!」

 中央から笑い声が聞こえてきた。

「ふふふ、はははは! なんと愚かしいことか! 私を倒す絶好の好機だったというのに、女をかばってそれをふいにするとは、実に愚かだな、佑月! はははは──‼」

 アウティスは笑い続ける。僕はメリッサを連れて階段を降りていく。

「佑月! どうしたんだ! 佑月!」

 メリッサの問いかけには僕は答えない。いや、答えられないんだ。自分でも愚かだとわかっていながらメリッサをかばってしまった、メリッサはヴァルキュリアだ、アウティスの最後の閃光に焼かれても、僕が生きている限りメリッサは死なない。

 ……でも見捨てることが出来なかった……! 自分でもわかっている、僕は負けたんだ、奴でもない、この僕、自分自身に。

「メリッサ、弾切れが近い武器の交換を」
「ああ、わかった……!」

 またMP7A1を創造する。銃を構え階段からアウティスを待ち構えた。しかし、アウティスは僕の想像以上の行動を起こした。地響きが鳴っていく、メリッサが少し取り乱した。……あいつ……!

「なんだ!」
「アウティス、まさか……!」

 僕の思いついたとおりだった。アウティスは鐘楼塔(しょうろうとう)すべてを破壊した。あたりが光り輝いている。崩れていく塔。僕たちの体は宙に浮き、なすすべはなかった。非情にも瓦礫(がれき)ごと地上にたたきつけられる。

 上を見ると見たことのあるドーム状の乗り物が浮かんでいた。──あれはヴィオネスが使っていたアルキメデキス!? アウティスはそれに乗っているのだろう。ゆっくりと乗り物を降りてくる。

「本来ならば歴史ある建築物を破壊するなど胸が痛むことだが、由緒ある鐘を壊してしまった以上仕方あるまい。……それが出来ると出来ないとでは、全く違うことだ。わかるかな? 佑月……!」

 アウティスは歓喜の笑いを響かせながら語りかけてくる。どんどん意識が遠のいていくが、体がピクリとも動かない。しくじった、すまないメリッサ────! 意識が遠のく中メリッサの安否だけを願い、すっと目の前は暗闇に覆われた。

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