純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百十九話 アウティスへの回廊

2021年7月16日

「はあぁ───!!!」

 エイミアが兵士の中に突撃していく。長剣を巧みに剣でさばき次々と兵士をなぎ倒していった。

 これはチャンスだ。門の兵士たちがエイミアに気をとられているうちに館に侵入しよう。……たぶんエイミアなら大丈夫だろう、しぶといし。むしろ兵士のほうが心配だ。

「佑月! お姉さんが前線を張ってるうちに援護をって、どこ行くの!」
「後は任せた!」
「任せたって、ちょっと! 私の扱いひどくない!? ばかああ──!」

 館の庭のよこを突っ切り、裏口から入っていく。

「うぁあ! 何だ!?」

 そこには召使いだろうたちがせっせと料理の支度をしていた。敵愾心(てきがいしん)はなさそうだ。だから、彼らを無視して館に侵入する。人が集まってきたのだろうバタバタと音がする。

 僕は部屋の中に入り誰もいないことを確認すると、鞄の中からロープを出し、家具とずっしりとした椅子の足にそれを結び、扉の前に仕掛け、少し扉を開ける。

「誰かいるのか!?」

 部屋の中に飛び込んできた兵士がロープに引っかかってこけた! ──鎧を着けた兵士は重さで転びやすいものだ。首を守っているチェインメイルの上からショートソードを刺す。

 ウガッと血を吐きながら喉から血がこぼれ出した。その兵士の手にはクロスボウが握られていた。これは使える……!

「どうした!?」

 別の兵士が部屋に入ってきた。迷わず兵士の心臓を捕らえる僕のクロスボウの矢だった。

 この威力にはこの時代の鎧も形無しだろう。兵士が生きていないことを確認すると、廊下に飛び出る。

 息を潜めて歩を進める。四人の兵士がこちらに向かってくる。剣を抜いているのが二人、残りはクロスボウ。僕は荷物から二つトラバサミを出し廊下の角に仕掛けた。

 僕は奴らがこちらに曲がってくるのを待つ。剣を持つ二人の兵士が姿を現した時、トラバサミが鎧の上から肉を食いちぎった! 
 
「うをっ!?」

 つまずく二人の兵士、肉体が前のめりになった瞬間、僕は見逃さなかった。クロスボウの矢がそいつらの胸を貫いた。急いでクロスボウの弦(つる)を巻き取る。もう一人の剣を持ってトラバサミに絡め取られている兵士の胸を貫いていく!

 どうやら残りの二人は弦を巻き取っているようだ、急いで近づく。

 対応の早さに驚いたのか、こちらの位置を確認していなかったのか、クロスボウに矢を設置しないまま、うろたえている。一人の喉にショートソードを突き刺し、もう一人はクロスボウのストックの部分で頭を殴り続けた。

 頭から血を流し気絶したのを確認すると、クロスボウに矢を設置して胸を貫いた。なーにちょうどいい矢の補充も出来た。……ここまで順調だな。

 館に侵入されることを想定していなかったのか、それとも僕が暗殺者として覚醒しているのか、バラバラに遭遇する兵士たちをどんどんトラップとクロスボウで始末していく。

 一階をしらみつぶしに探したが、メリッサはどこにもいないようだ。階段を上り、二階に上がっていく。

 前を見ると 窓の外を見ていた二人の兵士を見つける。一人はさっさとクロスボウの矢で背中を貫き通し、もう一人の兵士にはショートソードを喉に当てるとさっさと武器を落とした。

「た……助けてくれ」

 僕はこの世界の言葉はわからないがニュアンスは大体わかる。どうやら、抵抗する気がないのだろう、僕は少しずつ喉に突き刺していく。

「やめろ! やめてくれ! アンタ、銀髪の女が狙いなんだろう案内する。案内するから」

 何やら指をさしている。案内役を買ってくれるらしい、いいだろう、そういうわかりやすいのは好きだ。

 巨大な空間の中に大きな扉があり、その前に二人の兵士がいる。距離は20メートルはあった。とりあえず邪魔な案内役の兵士を蹴り倒す。

「うぉ!!」
「なんだ! どうしたんだ!」

 いきなり空間に男が倒れ込んだのを見て、動揺する扉の前の兵士たち。僕は冷静に扉の前の一人の兵士をクロスボウの矢で胸を貫く。僕が弦を巻いている間、扉の前の兵士はうろたえて扉を叩いていた。

「アウティス様! 開けてください! 敵です! 敵です!」

 その兵士の手には短い槍しか持っていなかった。矢に抵抗する武器がない。どんどんと叩いているが、扉が開く様子はない。あっさりと扉の前の二人目の兵士の背を矢が貫いた。

「アウティス様……たすけ……て」

 ゆっくりと兵士は崩れ落ちていく。

「ひぃいいいい!!」

 案内役の兵士が狂ったようにその場から離れる。矢で後ろを貫いてやろうかと思ったが、まあいい僕にはそんな趣味はない。僕の趣味はメリッサだ。何かオルガンのような音楽が聞こえる。

 扉を開けると広い空間があり中央には巨大な十字架が刺さってあった。やはりパイプオルガンの音だったのか。見ると奥の方でアウティスがそれを弾いていた。

「佑月!!」

 中央の十字架にメリッサが真っ白のドレスを着て張り付けにされていた。

「メリッサ!!」

 僕は叫んだ。途端にパイプオルガンの音が止み、こちらへ向くアウティスだった。

「ようこそ佑月……待っていたぞ」

 アウティスが立ち上がった、僕はそれをにらみつける。

「……メリッサを返してもらう……!」
「好きにするといい、だがそれは私に勝った後にすることだな」

 コツコツと足音を立ててゆっくりと中央に立つアウティスだった。

「佑月! コイツは危険だ! 逃げろ!!」

 叫ぶメリッサに対してアウティスはにやりと笑う。そしてゆっくりと口を開いた。

「さあ、聖戦の再開だ……!」

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