純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百二十話 開戦

2021年7月17日

 アウティスは右手を掲げ青き光の球体を生み出す。小さな光の球たちが部屋中に浮かび光り輝く。

 ──僕はぞっとした。アウティスの頬がこけ痩せ細っており、髪が折りくねっている。黒い法衣に身を包まれ目は地獄から天国を見つめるように羨望のまなざしをしていた。

「女とは度しがたい。恋人が来ることを信じてると何度もつぶやきながら、いざ男が来ると、来るなと言う。理解しがたい生き物だ」
「それをいじらしいと思うのが男の特権だ。理屈じゃあ人間を語れないんだ」

「神の前で他人を欺くとは罪だ。許しがたい」
「人間は全て罪人さ。それを知っているか知らないかの違いがあるだけで」

「私に哲学論をふっかけるつもりか、ずいぶんと博識なのだな、佑月?」
「少なくてもお前よりはね、アウティス」

 アウティスは口角を上げいやらしくにやつき始めた。

「貴様とはテーブルを挟みワインを転がしながら語り合いたいものだが、それも叶わぬことだ」
「すまないが、僕は酒が飲めないんだ。語る言葉は銃弾だけでね」

「……ほう、よかろう、貴様の正義を私に見せてみろ」

 右手にある光の球体が輝き青き光を放つ。……別に僕は正義の味方じゃないって言ってるだろ、本当に話を聞かない奴だ。

 光の球体から閃光が生まれ、小さな光がそれを跳ね返し曲がりくねって、幾多の光線が襲ってくる! 眩(まばゆ)い光のいななき! ドオンと大きな音を立てて僕の居場所を石の残骸へと変えていく。

 倒れながら右手側の地につく僕。クロスボウはアウティスの右手を狙い定めていた、後はトリガーを引くだけ。ビュンと音を立てて矢が奴の右手を貫く。すかさず腰に下げているMP7A1がセミオートで火を噴いた!

 ドドドとけたたましく音を立てて飛び出す金の弾丸、奴の体が跳ね飛び胸が真っ赤に染まった。──その瞬間奴の姿は消え、右手方向に無傷で現れる。やはり時間変革能力か……!
 
  アウティスが右手で空(くう)をなぎ払うと風の刃が地上から生み出され、すさまじいスピードで僕を襲ってきた!
 
 僕は礼拝堂の中走り出す、風の刃から、身を守らなければならない。アウティスは右手を払いどんどん風の刃を生み出していく! ……小技に頼るとはどうやらさすがに自分の館を壊すのは嫌らしいな。

 僕は走り込んで中央の奥に張り付けにされているメリッサの元に急ごうとする。

「させるか!!」

 アウティスは、僕の進路に風の刃を待ち伏せさせる。僕は足を止め、銃で制圧射撃行い弾を丁寧にばらまいていく。
 
 狙ってはいないがアウティスの右腹を撃ち抜いた、しかし、アウティスはかまわず風の刃でこちらの動きを封じる! ──くそっ! 奴の前でメリッサと合流するのは難しいか、こいつが堂々とメリッサを見せている理由がわかった。

 なるほど僕がメリッサを目標に行動するのを目の前で防ぐためだ、なかなかやってくれる。アウティスは撃ち抜かれた傷を瞬く間に再生能力で治していく。

「さて、どうするかな佑月、このままで済ますお前でもあるまい……?」

 鼻で笑いながらこちらをじっと見つめる、アウティス。いやな笑い方だ。話しながらクロスボウの弦(つる)をハンドルで巻き取っていった。

「さて、どうかな、前回みたいに上手くはめればお前を倒せる可能性はあるし、はまらなかったら僕の負けじゃないかな?」

「ずいぶんと余裕があるではないか、前回は私は鐘楼塔(しょうろうとう)を思うあまり、能力を制限していたつもりだが、それに気づかぬお前でもあるまい?」

「自分の館を壊したいならそうするんだな。別に僕はその点、興味がない。そんなことよりもエイミアを殺せと何故命令した。ヴァルキュリアだからお前が死なない限り死ぬことはないが、はいそうですかとうなずく女ではないだろう」

「別に私にはもうヴァルキュリアなど不要なものだ。現地の人間と意思疎通出来るし、感知出来る能力も必要ない。敵から奇襲を受けても時間変革能力でなかったことにすればいいだけのことだ」

 それを聞いた瞬間、突如、僕は笑い出した。

「どうして、お前が日向さんに負けた理由がわかったよ」
「……何だと!?」

 見るからに動揺するアウティス。ふっ、だんだんコイツのことがわかってきた。

「他人の気持ちを理解出来ない奴が、相手の心を読めるはずがないな。そりゃあ、複製(エフィーゴ)という優れた能力があればお前より弱い敵は倒せるさ。

 でも、本当に強い相手は能力で勝つんじゃない、頭と精神で勝つんだ。僕は見ての通り貧弱な男だ。でも駆け引きなら自信がある。だからお前は日向さんに追い詰められたんだ。本当の強い相手とは対等に戦っていない、だからお前は負けたんだ」

 その言葉に大声を上げ笑い出すアウティスだった。

「私が強敵と対等に戦っていないだと……! お前に何がわかる。私は常に周囲の期待に応えてきた、そこら辺の奴と一緒にされては困るな」

「なら何故、人質など意味の無い方法をとった? 何故、僕にとどめを刺さず見逃した?

 わざわざそんな手間のかかる方法をとったのは、お前が自分と同等のレベルの奴と戦ってみたかったからだ。……自分で飽いたんだよ、自分より弱い奴と戦うことを」

「……ほほう面白い仮説だ。お前を始末した後じっくり検討してみよう、本一冊分書けそうだ」

 準備が整った僕はクロスボウを構えた。奴は光の球体を出し数々の球たちを生み出していく。──だが僕のほうが速かった。深々とアウティスの胸に突き刺さる矢! しかし、アウティスはひるまず閃光が手から解き放たれる!

 光に反射して曲がりくねって襲ってくる光線たち。……この攻撃は四方八方から光が飛んできてどこから来るかわかりづらい。隙間を見つけて体を閃光からかいくぐったつもりだが、一つの光が球体に反射して、こちらの顔に迫ってくる。

 しまった──!

 ……そのときだった。自然と急に頭の中に浮かび上がる文字! この一度味わった久しぶりの感覚に僕は高揚してしまった。

── The LOST TECHNOLOGY starts on……

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