純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百二十二話 開戦③

2021年7月20日

 戦いに意味を求めるアウティス。しかし僕の心は乾いている、戦いには現実があるだけ、そこに意味は無いと考えている。だが、意味があるとしたら、僕はちっぽけな戦士で、家族を守ることしかできない、しがない中年だったということだ。

 ただ、それだけだ。

 意気揚々と舞い上がる風の刃、アウティスが凍り付いたような冷たい目でこちらをにらむ! その攻撃は全てイメージの中にある。次々と生まれてくる空気の叫びを難なくかわしていく。接近しないと活路は開けない……! 

 僕は張り詰めた空気の隙間を抜けていった、かわした先にわずかに出来る時間の隙間。MP7A1が火を噴く、そう奴を誘う。やはりアウティスが右手をかざし透明の膜を張った、燃え尽きる弾丸、僕はそれが解除される瞬間を狙って間合いを詰めていく!

 瞬間奴との目が合う。凍てつく視線同士が交わる。咄嗟に銃をアウティスの顔に向けた。だが僕の銃を持つ手をアウティスは左手で払い、そして右手で僕の喉をつこうとする!

 ──これまでの記憶から相手の身体能力を分析……完了。データの中から体術のカテゴリーをピックアップ……完了。三次元シミュレーションを構築、プログラミング完了、アプリケーション構築完了。アプリ実行──

 アウティスの右手の突きを紙一重でかわす。左手が僕の首をなぎ払おうと空気を切り裂いていく! それに対し僕は右足を後ろに出し、上半身をわずかに反らす。腹の部分を貫こうと右手を突き出すアウティス。

 左足を左方向に出し、右半身をわずかにくねらせて僕はかわした、銃を構え、アウティスの額(ひたい)に照準を合わせる。奴はかがみ、左足で僕の右足を折ろうと蹴りを回していく!

 それをかわすため右足を高く上げそのまま地面に僕は倒れ込む。アウティスは中腰のまま、この胴体を突こうと空気を貫いてくる! 転がって奴の側面をとることにし、その態勢のまま銃の火が噴いた。

 ──ドォン!!

 瞬時銃声だけが響き、僅かに静寂が訪れるそして、奴の肩を銃弾がうち抜き肉片が跳ね飛んでいく、これで終わりだ……! アウティスの頭に照準を合わせる。

 ……心が氷のように冷たい。なぜ、こんなにも静かなのか、自分でもわからない。冷静にトリガーを絞っていく。

 突然、身を投げ出し体ごと右足で僕の顔に向かってアウティスは蹴り込んでくる!         

 このままの位置だと構えている銃にあたり、銃が跳ね飛ばされてしまう、僕は仕方なく構えをとき、起き上がりアウティスに向かって銃を向ける。だが、奴は両手を使って飛び上がり距離をとり構え直す。

 ……近接戦闘では奴のほうが上手だ。身体能力が違いすぎる。だが、どうすればいい、このままだとじり貧だ。体力の劣る僕が奴に仕留められる可能性が高い。

 その上でどんどん一進一退の攻防し頭が冴えていく。──そうか、奴の戦い方に合わせるから僕には不利なんだ。僕には僕の戦い方がある……!

「佑月……そんな格闘術まで……どうしたんだというんだ……?」

 メリッサが不安そうにつぶやいている。心配させたくない。
 
「……大丈夫だよメリッサ、その体勢辛いだろう、だからすぐに解いてあげるよ」
「佑月……私の見ないうちに成長していたんだな。こんなにも強くなって。私は……」

「おしゃべりはそこまでにしてもらおうか」

 せっかくの会話に水を差すアウティス。

「……お前空気が読めないとか言われたことないか?」

 僕は不愉快そうに言葉を投げつける。アウティスは眉をひそめる。

「ん、空気とは何だ? 理解しがたい言葉だが……」
「本気で言っているのか、冗談で言っているのかわからない」

 僕はため息をつく。それに対し、しかめっ面のアウティス。

「私は冗談が嫌いだ」
「お前の存在自体が冗談みたいだよ」

「私が冗談? 私は誠心誠意、神に仕える者として生きてきた。他人に侮辱されるいわれはない」

「なあ、メリッサ! コイツのことどう思う?」

 突然、僕はメリッサにキラーパスを送る。コイツの感情をかき乱すヒントを引き出してくれないかという期待でだ。

「え、私か? 何故私にふるんだ……。どうっていわれても……」
「正直な感想でいいんだ」

 メリッサはうんと悩み考え込む。しばらく静かな時が流れる。そして、重い口を開く。

「なんていうか、その……なんで、知り合ったばかりの佑月にこだわるか、私にはわからない。もしかして……アウティスは佑月のことが好きなのか?」

 その瞬間アウティスの顔が凍り付く。

「貴様、私のことをゲイ扱いするのか! 同性愛は聖典で禁じられている! それなのに私に対してゲイという扱いをするのか! 侮辱にもほどがある……!」

 顔を真っ赤にして怒る。コイツにそんな感情なんてあったのか、まあ中世らしくよほどのタブーらしいな。そこは冗談で流せよ、メリッサも真面目な部分がある娘だけど、アウティスはくそ真面目すぎてスルー出来ないようだ。

 角度の付いた煽(あお)りに弱い奴みたいだな。

「今の言葉許せん! 撤回しろ!」

 アウティスの怒声が部屋の中に鳴り響く。

「別にそういうのに差別意識はないが、残念ながら僕にはメリッサがいるのでお構いなく」

 そう言いながら、地面に投げ捨てておいたクロスボウを取りに行く。

「ふざけるな! 違うと言ってるのに勝手に拒否するな! 女! 撤回しろ!」

 あまりの剣幕にメリッサは困った顔をする。ちょっと可愛い。

「撤回しろと言えば撤回するが……別にムキにならなくてもいいじゃないか、違うなら違うで流せばいいのに」

「罪の重さが違う! 私は聖職者だ! 不用意な汚名は見逃せん!」

 僕はクロスボウの弦(つる)を巻き取り、アウティスに向かって構える。

「いや、だから、そうやってムキになって怒るから、むしろ本当なのかなと思ってしまうじゃないか……」

 メリッサはどう対処していいかわからずオロオロとしている。やっぱり可愛い。

「貴様! 許せん! 女というものはつくづく……グッ!?」

 なにも言わず、僕は引き金を引いて矢を放った、アウティスの肩に深々と刺さる。

「きさまあぁ――!!」

 こちらに視線を向け、目を見開き僕をにらみつける。それを見て僕はこの広い空間がある部屋から外に出る。恐ろしい剣幕で、こちらに走り込んでくるのが見えた。そうだ……こっちだ……上手くアウティスを誘い込む。

 ……さて、あいつのこともよく分かったし、僕の戦いを見せつけてやろうか。

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