純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百二十四話 鋼鉄の心②

2021年7月22日

 勝利を得るには二通りのパターンがある。元から自分の力が相手を上回っているか、劣っていると自分を認識しながら戦いの中で活路を見いだすか。自分を知らない人間は弱者に勝てても強者には勝てない。

 僕が今まで勝ててきたのは、自分には限界があると知った上で、駆け引きで勝ってきた。それが僕の戦い方だ。

 トラバサミに足をはさまれ身動き出来ないアウティス! これで終わりだ! 銃の引き金を絞る。その時、奴は信じられない行動に出た――

 少し間合いがあるため奴の手が届く前に僕のほうが引き金を引くほうが早い、トラバサミで挟まった左足を軸足に蹴りなど出来ない。だから奴は身を捨てた。そう、トラバサミで挟まった左足で僕が銃を構えている手をなぎ払おうとしたのだ──!

 力のない弱々しい蹴り、僕は即座に引き金を引いた!

 静かな部屋に響く銃声、だが、僕は目をこらす、信じられない。僕の銃弾はアウティスの頬をかすめ床へとうずくまった。しまった!

 構えている体勢をわずかに崩されただけで銃は狙いをそれる。奴は銃の性質を知っていた。日向(ひゅうが)さんとの戦いで学んだことか! 間合いを詰めて来るアウティス。

 右手の突きが襲ってきた! それを紙一重で僕はかわす。奴は息つく暇も与えず、突きの連撃が襲いかかる! たまらず僕は間合いをとった。
 
 その間、アウティスは無理矢理トラバサミを手でこじ開けて左足を自由にし、傷を回復させる。くっ化け物め……!

 これは流れが悪い、いったん場所を変えるべきだ。冷たい心が判断を鋭敏にさせる。奴を倒すには強靱の精神だけでは駄目だ。必要なのは鋼鉄の心、クロスボウを拾い部屋から飛び出す僕。どこだ……? どこならば奴を仕留められる……!

 二階を走り回っていく。すると、渡り廊下があり、その先に高くせり上がった塔が見える。ここだ!

 暗闇に包まれる塔の中、螺旋(らせん)階段が続いている。下を見るとあまりの暗闇に先が見えない。中央は空洞でここから落ちれば最下層へとまっさかさま、足場は階段だけで不安定。これなら今の僕に適した地形だ。何故なら――

「ほほう、ここを選ぶとはずいぶんと機転が利くようだ」

 暗闇の下部からアウティスの声が聞こえてくる。

「この狭い螺旋階段では、私はおいそれと蹴りは出せない。貴様に向けて階段を破壊すると私が上に上れない。

 また塔の下部に位置する私が閃光で塔を破壊しても、私ごと埋もれるだけで、貴様は階段をのぼっていき、あるいはがれきを乗りこなし、最小限の打撃で済む可能性がある。

 ここから出て塔を破壊するのも一興だが、何せ瓦礫(がれき)に埋もれた貴様の体を発見するのは困難を極める。あいにく人手不足でね。動員している間に貴様が生き返って、私を不意打ちするというのも考えられる。
 
 残骸ごと全て閃光でなぎ払う方法があるが、私は貴様の死を確認出来ない。よって塔を破壊するのは下策」
 
 声が響く中、コツ、コツと靴の音を立てて階段を上ってくる。僕は眉尻を上にあげ少しほくそ笑んだ。

「そうだ、お前は不利とわかっていながら、この螺旋階段の中で近接戦を勝利する必要がある。僕は常に上位の位置をとり、下を狙いやすい。お前は中央に体を落とさないよう制限された格闘戦でしか挑めない。地の利がこちらにはある」

「……むしろこういう試練こそ私が待ち望んでいた。貴様は私を楽しませてくれる。厳しい修練に堪えた甲斐(かい)があったというものだ。感謝しているよ」

 暗闇の中からアウティスの顔がぬっと出てきた。顔はにやけており、心底楽しそうだ。僕はクロスボウをセットし奴の体が見えるのを待つ。ゆっくり、ゆっくりと階段を上ってくる音がする。アウティスの体が見えたその時──、一気に階段を駆け上がってくる!

 クロスボウの矢が奴の左肩をとらえた、しかしアウティスはかまわず左手で突いてきた! 

 僕は一歩一歩前を向き後退して、階段を上っていく。そうするとわずかな空間ができ拳一つぶんで避けていく。襲いかかる突きの連撃! 
 
 僕は一歩ずつ階段を上って間合いをとる。奴の攻撃を止めた時さりげなく僕はしゃがみ込む。アウティスは息を整え右手で僕の頭を払おうとした──が、僕は奴に背を向け一気に階段を上っていく、逃がすまいと距離を詰めるアウティス!
 
 踏み込もうとした瞬間、さっき僕がしゃがんだ時にセットしたトラバサミの元へ奴は足を運んでいく。

「こんなもの二度も食らわん!!」

 アウティスは足でトラバサミをはねのけた! が、それはダミートラップだよ――

 足で払ったため少しバランスを崩すアウティス! 僕はその瞬間を狙って間合いを詰める。

「そうはさせるか!!」

 右手で僕の顔を突いてくるアウティス、だが、それを僕は待っていた──!

「なんだと……!?」
 僕の左上腕に深々と刺さるアウティスの右手! 無論奴は身動き出来ない。

「お前が教えてくれたことだよ。こういった緊迫した戦いで不意に身を捨てた行動をとられると、戦い方の計画が狂うってことを」
「くっ! 離せ!!」

 アウティスが右手を抜こうとする前に、僕のMP7A1が奴のあごをとらえる!!

 銃声の後、一瞬、頭がかち割られるのを確認できたが時間変革能力でなかったことにし、少し間合いをとって構えているアウティス。

 僕はそれに畳みかけるよう間合いを詰めるため階段を駆け下りた、それに対し間合いをとるため右足で前蹴りを仕掛ける!
「どけ!!」

 叫ぶアウティス、かかった──! それに対し僕は体を倒し、スライディングの形で奴の股の間に滑り込む!

「なっ──!!」

 アウティスは前屈みになり、地面に倒れた態勢の僕から上半身は打ちたい放題だ、短時間に連続した時間変革能力は使えない! ──このときを待っていた!

「僕の勝利だ! アウティス!」

 勝利宣言とともに銃がフルオートで火を噴いた! けたたましく塔の中で鳴り響く銃の音が終焉のラッパのように戦いの幕を下ろす──!

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