純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百二十六話 新たなる仲間?

2021年7月26日

 ガラスの窓から光りが僕たちを照らし出す。それは白く濁った光で太陽をわずかに拒む。世界が僕たちを引き裂こうと、この唇は止められない。頬を染め合う僕とメリッサ。そこには少年と少女がいた。

 この世界の果てで抱きしめ合う体、僕の人生という孤独の旅で出会えた、たった一人のかけがえのないひと。もはや神に許しを請わずとも、この娘を愛する。もう止められない。僕にとってたった一人の女性、──メリッサ。愛している……。

「僕は君と生きるためこの異世界で戦ってるんだ、誰も君を奪わせない」

 メリッサは首に手を回しきつく抱きしめ合う。

「私をもっと強く抱きしめてくれ、もう寂しい思いなんてさせないでくれ。佑月、お前がいるだけで世界が変わって見える、私の、唇を愛してくれ」
「当たり前だ。この唇は君のものだメリッサ」

「嬉しい……。お前を選んで良かった。誰でもないお前を」
「どんなに悲しい歌が聴こえても、僕たちが交わした言葉の音楽は永遠と頭の中で繰り返す。この気持ちを絶対忘れない」

「私も……お前と交わした思い出はダイヤモンドよりもサファイヤよりも美しく輝いている。この世界が終わってもこの輝きは色あせない、だから私を信じてくれ。お前のことだけを愛していると」

 そして何度も口づけ合う。初めてキスしたかのような新鮮な気持ち。どんどん安らぎと優しさがあふれてくる。本当にこの娘と出会えて良かった……。

「──ちょっと良い雰囲気のところ悪いんだけど」

「なら僕たちの邪魔をしないでくれ」
「佑月……」
「メリッサ……」

「いや、だから重要なお知らせがあるんだって」
「もう、なんだエイミア」

「エイミア……? まさか……!」

 メリッサの様子がおかしかったがとりあえず、僕たちは入り口のほうを見る。長い金髪で白の色っぽい服を着たエイミアがニコニコしながら手を振っている。

「えーと、ね。お姉さんあまりにもアウティスにむかついたから、館に火をつけたんだけど、油を思いっきりまいたら、火がぶわっーとなって。館が火で閉じ込められちゃった。ねえ、どうしよう?」

 僕とメリッサは顔を見合わした。

「それをなんでもっと早くに言わないんだ! エイミア!」

 メリッサは思いっきりエイミアに怒りをぶつけた。

「お姉さんは空気読めるほうだから、ずっと情熱的なキスを楽しみながら愛をささやいている運命の恋人たちをみて、ああ良いなあって気分良く眺めてたんだよね、若いって良いねー」

 はあ、ああもう、この人も面倒くさいな。

「――メリッサ・ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」
「――イメージしろ、お前は何を思い描く――」

────────────────────────

「二人とも僕に捕まってくれ」

 僕は窓の外にパラシュートを広げた。そしてパラシュートをつかみ、一気に外にかけ出す。

「ああーん、お姉さん気持ちいい!」

 風が僕たちの頬をなでた、ゆっくり二階から地上に降りていく。館を見ると炎で包まれており、外に逃げようと館の家人たちが駆け出し逃げていた。

「よく燃えて、お姉さんすっきり。あー、面白かった」

 メリッサはエイミアをにらみつけた。

「──何でお前がここにいる? エイミア!」
「ああ、アウティスのヴァルキュリアだから、私」
「はあ⁉ 何でお前がこのラグナロクに参加してるんだ、別にお前にとって意味のない戦いだろ!」

 え、なんだどういうことだ、二人は知り合いなのか……?

「だって、なんかラグナロクとかいって面白いこと始めたから、そりゃあ私もヴァルキュリアだもん、いっちょ参加してみよっかって」
「そんな軽いノリで参加する奴がいるか! パートナーが負けたらお前も消えるんだぞ!」

「知ってるわよそんなこと、私貴女と違って長いこと生きてきたからそろそろ死のうが生きようがどうでもいいし、ヴァルハラでつまんない時間過ごすくらいなら、遊んでみようと思って」

「道理でアウティスの能力がけた外れに強いはずだ、ヴァルキュリアの能力によってエインヘリャルに与えられる能力も力も違う。お前が参加するなんて創造神が許すものか!」

「知らないわよ、私ルール以外神の声を聴いていないし、気分が盛り上がったからやってみただけで……やっぱ迷惑だった?」

「当たり前だろ! この戦争の趣旨を理解してないのか! 一万人の中の人間から神になるにふさわしいつまり契約の民になれるような、人間を捜すための戦いだ、お前が参加してしまったら……」

 やっぱり二人は知り合いだったのか、まあヴァルキュリア同士なら知っているやつがいるのも考えてみれば当然だが、エイミアが参加すると何かあるのか,僕にはよく意味がわからない。

「なあメリッサ、エイミアと知り合いなのか、僕にはさっぱり言っている意味がわからないから彼女を紹介してくれないか?」

「お前知らずに、エイミアと話していたのか……エイミアは自分の説明すらしなかったんだな。一応前置きとして、ヴァルキュリアの能力によって、与えられる能力の強さが違う、そして……」

「そして……?」

「エイミアは過去の神々同士の戦いで名をはせた英雄のヴァルキュリアで、また、ヴァルキュリア大戦での唯一の高位ヴァルキュリアの生き残り。そして神階第一階層ただ一人の存在で、現存しているヴァルキュリアの中で最強のヴァルキュリアだ……!」

 えっ……? エイミアが最強のヴァルキュリアだって⁉ ただの色ボケねーちゃんじゃないのか!

 とりあえず僕はナオコがいる館に向かう道すがら、エイミアとの旅の経緯をメリッサに話した。もちろん、夜襲われたことは秘密にして。

「ああ、なんか、混乱してきた……」

 メリッサは頭を抱えた。僕はため息をつきながら、
「まあ僕も混乱してる、というかあの人が混乱そのものだから」

「ねえねえ」

 エイミアは、僕のほうに顔を思い切り近づけて満面の笑顔を浮かべる。

「お姉さんどうしよう、アウティスとケンカしちゃった。行くところないなー。困ったなー」

 そんなの知るか、また、何故にやついているんだ。

「……ああ、そうだ! ねえ、メリッサちょっといい? 佑月ってね……」
「ん、何だエイミア」

「──ちょっと待った!」

 エイミアがどうせろくでもないことを言う前に言葉をさえぎる。

「何が目的だ」

 僕は、低い声でエイミアを牽制した。

「うーん、お姉さん、寂しいんだー、だから、佑月の旅に一緒に行こうと思うの。ね、ナイスアイディア」
「ことわ……」

「──いいんじゃないか」

 今度はメリッサが僕の言葉をさえぎった。え? どういうつもりだ?

「ヴァルキュリア同士、思うことがあるし、ちょっと私の見ない間、佑月のことで何かあったのか聞きたいことがあるからな」

 ……まて、何かちょっとメリッサがキレていないか。

「あら、お姉さんの心は、佑月のモノより固いわよ」

 とんでもない発言に僕は吹き出してしまう。

「違うでまかせだ! 適当に言っているだけだ!」
「そうか、なら、じゃあ、なんでそんなに慌てるんだ?」
「いや……それは……」

 メリッサの氷の目が僕の心を突き刺す。

「さあーお姉さんと楽しい旅をしましょうね、メリッサ」
「ええ、とても、とても楽しみですわ、エイミアお姉さま」

 笑顔でブチギレ始めたメリッサと面白がっているエイミアが火花を散らす。僕の平和が壊されていく……。助けて……。

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