純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百三十三話 大所帯

2021年8月5日

 僕たちのグループは一気に大所帯になってしまった。レイラにアデルにサラとユリア、考えるとため息をつきたくなる、ただでさえ女が多いのに僕の居場所が小さくなっていく。

「へえ、佑月さんへメリッサさんからアプローチしたんですか、なんか意外です」

 もうレイラはメリッサと仲良くなった様子で、料理を一緒に下準備している、順応が早いなあ、女性は。

「うんそうだ、で、話は飛ぶが結婚式でどんなドレスを仕立て上げるのか、今から布を合わせて準備しているんだ、私はそれが楽しくてな」

 メリッサは嬉しそうにレイラに微笑みかけていた。ほのぼのとした風景だ。女性同士が和気あいあいとしている風景を見ていると何故だか微笑ましい。

「自分で仕立てるんですか。すごい器用なんですね、私なんて全然で」
「なあ良かったら手伝ってくれるか、作業が大変なんだ、私が教えるから」
「ほんとですか! ぜひやってみたいです」

 笑顔がまぶしかった。目を横にやると、エイミアとナオコが遊んでいた。その横でサラが仲間に入りたそうに見つめている。

「ねえ、サラお姉ちゃんも遊ぼうよ」

 ナオコは気さくにサラに話しかけたが、サラはいつもの様子で「イジメない?」と上目遣いで見つめる。そうしたらナオコはサラの肩をバンバンとたたきながら、

「イジメないよ、みんなお友達!」

 と男っぷりを示す。その態度に何だかサラは安心した様子だ。

「……うん」

 その光景を見てエイミアは笑いながら、かがんで二人と肩を組む。

「もうお友達ができたんだナオコちゃんえらいねー。サラちゃん、ナオコちゃんとよろしくねー」

 そう言われると美人な見た目をしているエイミアに、小さな少女のサラは気後れしたようで、また、照れてしまった様子でいる。

「よろしく、おねがいします……」
「よろしくー」

 ナオコは笑いながらバンバンサラの肩を叩く。将来大物だ、これは。

 さて僕は僕の仕事をしないとな。ふんずりかえって寝っ転がって木にもたれているアデルに声をかける。

「おい、行くぞ」
「行くってどこへだよ」

 本当はこういう不良タイプと関わるのは苦手なんだけどなあ、まあ、でもこの類(たぐい)は生前工場でよく苦い思い出も含めて世話になった覚えがある、なら、相手の調子に合わせるか。

「狩りだよ、この大所帯を食わせないといけないだろ」
「……二人かよ」

 不満そうにするアデル。この人数分の食糧を狩ってくるには四人は欲しいところだが、メリッサのグループは料理の準備をしているし、ナオコのグループはエイミアがいないと心配だし、ユリアは寝ている。

 彼女はどうやら一日のほとんどを眠っていないと調子が出ない体質らしく、連れて行くと荷物になるだけだ。さて、そうなると、得物が必要だ。
 
「……メリッサいいかい? ちょっと武器を創ろう」

 彼女に声をかけ、そして、僕はクロスボウを手にする、不思議そうにアデルはそれを眺めていた。

「それがアンタの能力?」
「一割ほど当たりだ。お前はどうする」
「それ、よく見せてくれ、いい出来のクロスボウじゃないか、昔作った奴より使い勝手がよさそうだ、だが、それなら俺も作れそうだ」

 そう言ってサラに声をかけたアデルは部品を創作し、手作りでクロスボウを作り上げた。僕はそれを眺めていた、よくできている。これがアデルの能力か、役に立つかと不安であったが意外と掘り出し物かもしれない。こうして僕とアデルは狩りに出かけた。

 日が落ち、辺りは闇に染まった。森は静かになり、虫たちのオーケストラが始まる。夜行性の鳥が目覚めて時にトランペットのような鳴き声が響き渡っていく。僕たちも夜行性のユリアが目覚め、踊っている。

「すばらしい夜です! さあ、みなさま、祝宴を始めましょう!」
「こら、ユリア。座って食べなさい。すみません、ちょっと変わった娘なので」

 レイラはユリアに注意をして、僕とメリッサに謝る。とても気分が高揚しているようだったユリアは笑いながら話す。

「だって、美味いものは久しぶりです。この肉やスープ、こんな素晴らしい食事は初めて食べたと思います」

「ほんとうめえよな、自分で狩った動物がこんな美味い食べ物になるなんて」

 アデルが笑いながら同意する。おまえ、ウサギ一匹しか狩ってないだろ。それ以外は全部、僕が狩ってきたものだ。

「ママの料理は世界一! ね、そう思うよね、サラお姉ちゃん」

 料理に舌鼓(したつづみ)を打つナオコに、サラは首を縦に振って同意した。

「うん……とても、美味しい」

 続いてエイミアも声を上げてはやし立てる。

「美味しい~メリッサちゃんサイコー!」

 次々と賛辞の言葉を投げかけられたメリッサは照れた様子だった。

「……別に、普通に作っただけだ」

「メリッサさん、顔赤いですよ」

 レイラの投げかけに顔を下向けるメリッサ。ヒューヒューとヤジが飛んでくる。僕も自分の妻が褒められるととても胸が温かくなる。

 スープを口にすると、僕の捕った野鳥のダシがきいていてうん、旨味が濃いな。鳥の肉を口にすると。とろけるような肉に鳥のジューシーで爽やかな旨み、トロトロとした食感に舌をころがし、口から胃までメリッサの味がする。

 鹿のような肉のステーキを口に運ぶ。肉臭さなど全くなくブドウの味がする甘いソースに肉汁が絡みとられている。肉を噛んだ時、山を駆け上ったしっかりとした濃い野性的な肉の味が広がっていく。

 猟師とその家族だけが許される、格別で至高の食。肉を噛めば噛むほど自分の顔が笑顔になっていくのがわかる。
 
 そして柔らかくて白くて甘いパンをかじりながら、ブドウジュースを飲む。ああ、美味い! 幸せだ!

「メリッサ、今日の料理も最高だよ!」

 僕の率直な言葉を伝えると、メリッサは僕の肩に頭を乗せてささやく。

「うん……ありがとう。世界中の誰に言われるよりも、お前にそう言ってもらえると嬉しい」

 彼女の言葉に体が熱くなる。賑やかな食事、温かい空間でみんながワイワイやってる中、僕とメリッサはこっそりキスをし、ちょっとした背徳の気分で情事を楽しんだ。

 

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