純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百三十四話 ヴァルキュリア大戦

 僕たちは山道を進み続ける。仲間が増えたため、必然話すことや衝突することもよくあった。何せ自分たちはまだ知り合ったばかりでお互いの事を何も知らない、しかも相手は異世界人だ、当然ながら価値観の違いが如実に表れて、もめごとが起こる。

 しかしながらヴァルキュリアたちは同じ世界で暮らしているためか、自然と話が合う、また女性同士ということもあるだろう、個性的なメンツがそろいながらお互い会話が弾んでいた。逆に男性が少ないため、僕とアデルは無言で歩いていた。

「そうですか、素晴らしいですよね、エイミアさんの強さって、神界大戦以来のヴァルキュリアなんて、もう存在しませんから、貴重な話が聞けてうれしいです」

 ユリアは特に興奮してエイミアの事を根掘り葉掘り聞いていた、ファンっていうのは本当なんだろうなあ。

「本当なら、もっといたのにね、あのひねくれた創造神が高位ヴァルキュリアの討伐を命じなければ、現存していたら、今のヴァルキュリアにもいろんな経験を語り継げたでしょうに」

 エイミアはため息をつきながら不満そうに語る。創造神が命じた? 僕には事の次第が良くわからない。

「そうですよ! 創造神はひどすぎます! 危うく、エイミアさんまで命が取られるほど追い詰められたって聞きます」

「ホントあの時はびっくりしたわ、私と対等に戦えるヴァルキュリアがヴァルハラに残っていたなんて思ってみなかった、みんな死んだって聞いてたのに、あのときはあせったわあ、ねえ、メリッサ?」

「え?」

 エイミアがメリッサに話題を振ってユリアがびっくりしている、そう言えばメリッサとエイミアは知り合いだって前に言っていたな。興味深い話だ。

「お前が好き勝って暴れたからエイミア、お前に討伐の命が創造神から下ったのだろ、なら自業自得だ」

「だってそう言う雰囲気にみんななっちゃったじゃない、誰がヴァルキュリアの中で一番強いかって、ユリアだってそうでしょ?」

「私は下級階層のヴァルキュリアだから、ただなんかわからないですけど、みんな戦ってる、うわーってなっちゃって、とりあえず創造神の命令に従ってただけで、別に戦いに参加したかったわけじゃ……」

 ユリアの戸惑った答えにメリッサが畳みかけた。

「ほら見ろ、お前ら高位ヴァルキュリアが無茶して周りを見ずに戦って、ヴァルハラが崩壊しそうなくらい、危機的状況だったんだぞ、創造神もそれを見て仕方なく討伐の命を出したんじゃないか?」

 メリッサがエイミアに食って掛かった。どうやら二人は立場が違うようだ。

「でもさ、まさか、下位ヴァルキュリアのメリッサに私が追い詰められるとはおもわなかったわ、あのときゃ……」

「──え?」

 みんな瞬間固まった。第一階層の最強のヴァルキュリアのエイミアをメリッサが追い詰めたなんてどういうことだ、初耳だぞ。

「ちょっ、ちょっと待ってください、エイミアさんって最強のヴァルキュリアなんですよね? メリッサさんそんなに強いんですか⁉」

 話についていけないレイラが驚いて二人に問いかけた。僕と同じ感想だ。

「別にいいだろ、昔のことだなんて……」

 といってメリッサが不貞腐れた。どういうことだ、状況が呑み込めない。エイミアはそれを不思議そうに眺めて、ため息をついた。様子が変だし、僕はメリッサのこととなったので話に割って入った。

「なあ、エイミア? 二人で少し話ししないか」
「へ? 佑月なによ、私に愛の告白?」

「違う、ちょっと来てくれ」
「わかった、わかった、もう、強引ね」
「みんなは少し休んでてくれ、頼む」

 と仲間たちに告げ、僕とエイミアで森の奥に入り、落ち着く場所がないか探し、静かに川が流れる場所で僕たちは座った。

「で、話って何? どうせ、メリッサちゃんのことでしょ」
「わかってるじゃないか」

 僕は小石をもって、川へと投げた、水切りをしようと思ったけど一発目で沈んだ、銃はうまくなったが、遊びは子どものほうが上手い。大人というのはどうも遊ぶということが下手になってしまう。

「二人はどういう関係なんだ?」

 単刀直入に僕は聞いた、ホント大人というのは遊びが下手だ。

「べつにそんなに親しいわけじゃないわよ、ただ、ヴァルキュリア大戦で私と戦って彼女は引き分けたってだけ、彼女の詳細の事は後でほかのヴァルキュリアに聞いて知ったの」

「敵同士ってわけか、ヴァルキュリア大戦っていったいなんなんだ?」
「……そうね、あなたは十分強い、いや、調査によれば強くなったが正しい表現ね、なら、闘技大会に出て自分がどれだけ強くなったか確かめたい、そう思わない?」

 エイミアには僕の心などお見通しか。なるほど、戦いの経験を経た者は、やはりどこかで競いたくなってしまう、本能的にね、それが過去に苦労すればするほど。

「私たち上位ヴァルキュリアは神界大戦を経て、成り上がったものも多い、私もその一人、ヴァルキュリアは産まれた時からその個人特有の能力とその力を階層によって力の大小を区別され、与えられ、存在する」

「ヒエラルキーってやつか」

「そう、私はもともと第三階層生まれで、神界大戦で戦って認められて、上位階層へと昇ったヴァルキュリア、みんな戦った成果がレベルに分けられて評価されるのは最初は満足してた、最初のうちは」

「何か起こったのかい?」

「違う、問題なのは何も起こらなかった事。せっかく自分たちは戦う能力を持ち合わせているのに、神の中で今の創造神一人が勝利して他の神々は滅ぼされてしまった。必然創造神が作った世界は平和になったわ、ヴァルハラはね」

「創造神ってどんな奴だい?」
「わかんない」
「わからない?」

「必要な時にああしろ、こうしろって頭の中に声が響いてメッセージを送るだけ、第一階層になった私も直接会ったことは一度もないし、何を考えているかさっぱり話さない、正直わかんないんだよねあのひと」

「状況から予想するに、単に戦争が終わって、平和になったら、戦闘用の戦士であったヴァルキュリアたちが暇になったと」

「正解、最初はほんの数人ぐらいで、遊びでヴァルキュリアたちで戦ったりしてただけ、でもね、規模が大きくなるうちに、どんどんエスカレートしてしまってね、本気になっちゃったんだよね、みんな」

 戦争は始めようと思って始まるものもあれば、勝手に始まるものもある、第一次世界大戦とかそれだ。お互いの国内事情の問題で外交バランスが崩れて、指導者たちはまともに戦争する気はなかったのに、世界を二分する戦いになってしまった。

「別に私はつるんでたわけじゃないけど、ほかのヴァルキュリアたちはムキになって、本気でヴァルキュリアを殺し始めて、それから先は憎しみの連鎖、あいつが憎いコイツが憎いでどんどんことが大きくなっちゃったってわけ。私は面白そうだから参加してただけだけどね」

「創造神が討伐を命じたってさっき言ってたね」

「流石にヴァルハラが壊れるくらい暴れられたんでブチ切れたんだろうね、片っ端から有能な下級ヴァルキュリアに命じてどんどん、高位ヴァルキュリアを始末していった、陰険なのよ、創造神って」

「まあ暴動みたいなものだから鎮圧するのに邪魔になりそうなのを片付けたかったんだろうね、そんなことを繰り返されないように、一気にヴァルキュリアを整理したかったんだろうな」

「整理って……、される方はたまったもんじゃないわよ、ずっと追いかけまわされて集団でかかって来られて、何とか私は生き延びてきたんだけど、最後の方は上位ヴァルキュリアは私一人になっちゃったとそういうわけ」

「そのエイミアに立ち向かったのがメリッサか」

「そう、びっくりしたわ、能力はたいしたことないのにめちゃくちゃこっちを追い詰めてくるもんで、何コイツって。あとで聞いた話だと、私を一人で相手して、時間稼ぎをした後、ヴァルキュリアのほとんどが集まって、それで私を始末する気だったみたいね」

「メリッサって強い、強いと側にいて思っていたけど、エイミアを相手できるほど強かったのか、彼女何も話してくれないから」

「多分産まれの問題でしょうね、彼女もともと神階十二階層のうち第十一階層生まれだから、相当差別受けたんだろうね、ヴァルキュリア大戦で名を挙げて私と戦ったころには第七階層まで成り上がってたらしいけどね」

「メリッサは、今何階層なんだい?」
「第六階層、今のヴァルキュリアの間では中の上、正直あの子の実力なら第三階層に上げていいくらいだと思うんだけどね、創造神の考えていることはわかんない」

「結果はどうなったんだ、引き分けたとか何とか」

「ああ、結果? 見事作戦通り、私はヴァルキュリアたちに囲まれて万事休す、最後の手段で奥の手を使って、存在していたヴァルキュリアの半分を消し飛ばしてやったわ、そこで、創造神が止めの一言で、今後ヴァルハラで戦うなとヴァルキュリアたちに誓約させて戦争終結。万々歳」

「ヴァルキュリアの半分を消し飛ばした!? 君はそんなに強いのか!」

「まあね、伊達に第一階層張ってるわけじゃないから。だから貴方はアウティスに勝ったことを誇っていいわよ、普通第六階層のヴァルキュリアのエインヘリャルが第一階層のヴァルキュリアの連れに勝つなんてありえない。普通じゃ無理なくらい与えられている能力差があるから」

 くそ、ならアウティスを完全に仕留めておけばよかった、あいつは危険だ、この先大きな壁として僕の前に立ちふさがってくるだろう。気が重い。

「ありがとう話してくれて、おかげでメリッサのことをちょっとだけわかった気がする」
「ん、お礼ならいいわよ、体で払ってもらうから」

「体……?」

 そう言うとエイミアは僕にいきなり前から抱きついた。僕は馬鹿力に抱えられて動けない。

「ちょっと待って何を考えてるんだ⁉」
「エッチなことお姉さんとしようよー、私強い男が好きなの、最後までできないけど、ヤりたいの、いいでしょ?」

「僕にはメリッサが……!」
「いいじゃん少しぐらい、エッチしよ、私昔の話をしてきたら興奮してきちゃった、もう収まんない!」

 ぐっ、またこの展開か、エイミアはホントしつこいから、断っても襲ってくる、……仕方ない……。

「いやだから、僕には愛する妻と子どもが……、あれ、メリッサ?」
「え?」

 僕がふと冷静に川の向こう側を見たのでつられてエイミアも腕をほどいて、きょろきょろし始めた。それを見て僕は冷静に彼女を川に突き飛ばした。

「ぶっ!? 何すんの! あんたまた私をハメたのね! 最低! て……えっ……?」

 どうやら人食いサメかなんかが川から背びれを出してエイミアのほうに向かっていく、あの人動物に好かれる体質なのかな。

「……それじゃあ僕はメリッサのもとに戻るからごゆっくり」
「ちょっと待ちなさい! ろくでなし! インポ! きゃあああああああ!!」

 巨大なサメらしき生き物が、大きな口を開けて水面から顔を出し、エイミアへと襲いかかってきた。彼女は必死に泳いで逃げている。流石最強のヴァルキュリア、泳ぎも速いな。

「覚えてなさいよぉぉ──!!!」

 エイミアは捨て台詞を聞きながら僕はさっさとみんなのもとへ帰った、メリッサがやっぱり嫉妬して機嫌が悪かったが、何とか取りなす。その後夕食ごろには歯形がついたエイミアがピンピンとして戻ってくる。丈夫だわこの人。

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