純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百四十話 頂上での戦い

2021年8月11日

 襲いかかってくる剣先! 僕は体を反らし赤い剣の残像を見送った! なっ、剣先が伸びていく? わずかに避け、空気が切り裂かれ、上半身を襲った赤い刃は宙を舞う、僕は体勢を立て直しメリッサに言葉を放つ

「――ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」
「――イメージをしろ、お前は何を思い描く――」

 手にするMP7A1短機関銃、慣れ親しんだ武器は僕の右手にしっかりと手の内に収まった。銃床(ストック)を引き出し、左手でグリップを握り、銃口を敵の剣士に向ける。

「お前こんなところで勝負をする気か?」

 辺りは狭い山道、一歩外れれば、雲の上にそびえ立つ山から真っ逆さま。敵はマントのフードをのけて顔を見せる。何――女!? 黒い肌をしていて、頭に天然パーマがかかっていて髪の毛が赤く短い。

 フード付きマントに独特の民族文様のネックレスを付け、体にぴったりと付いた薄い黒いシャツに白い防寒着を着て、短パンに黒いソックスを膝まではいている。
 
 細身の体がうかがえるけれども、さっきの体躯の扱い方から相当身体能力が高い。じっとこちらにらみ、それは威風堂々、気圧されそうなピリッとした感覚を受ける。

 ブライアンが叫んだ。

「あいつ、あいつです! 僕の仲間を殺したのは!」

 赤い髪の女剣士はブライアンをちらりとにらむだけで、興味はなさそうだ。彼女はゆっくりと口を開いた。

「エインヘリャルだからエインヘリャルを殺すのは当然だ。あんたらみたいにゾロゾロ連れ歩いて行動するのがおかしい」

 それに対し僕は、

「闘技大会があるのを知らないのか」

 と問うたことに女剣士は苦笑して、

「あたしには関係ないね、戦いたい時に戦う。飯を食うのと一緒さ」

 そう言いつつ静かにジリジリ間合いを詰めてくる女剣士。僕は先手をとってセレクターをセミオートに合わし丁寧に弾幕を張る。リズミカルに制圧射撃、それを斜め方向に避けようとする女剣士! 

 だが、その場所はすでに弾が置かれている、それを気配で感じたのか飛び上がり僕を切り裂こうと振りかぶった、僕は冷静に女剣士を視線で捉えてバースト射撃を行う! 

 だが、女剣士はそのまま振り下ろし弾を切り裂いた。何だと――!? だが、弾は全て切り裂かれたわけではなかった、破片が女剣士の右肩を撃ち抜く、しかしコイツはかまわずそのまま僕に斬りかかって来た!

 僕は袈裟(けさ)斬りに振り下ろされた剣を、退くのではなく、敢えて前に進み女剣士と交差するように避けた! 僕の後ろにあった岩が切り裂かれた、後ろに退いていたら真っ二つだった。

 かまわず女剣士はやや斜めから胴を薙ごうとし、剣が襲ってくる!
 
 前にも後ろに避けられずに僕は後ろに倒れ込む、悠々と伸びてくる剣先、後ろに避けられないというのは苦しいな。どうやらロストテクノロジーで脳内は活発化され、最適化された反射神経は研ぎ澄まされたらしい。起動しなくても十分に戦えるようになっている。

 間合いを詰めようとする右足を僕は冷静に撃ち抜く! ドォンと鳴り響き弾丸は女剣士の太ももを貫通した。よろめく女剣士、その間に僕は立ち上がり銃口を構えた。

 自分を鼓舞せんかのように唸るけたたましい女剣士の雄叫び!! 中段に構えた剣は、剣先はそのまま僕の喉まで伸び、僕を突こうと片手突きをしてきた! その高速の突き、僕はとっさに右に上半身を傾けてかわす。

 女剣士は足を運び、突きから袈裟斬りに剣筋(けんすじ)を変えて僕に襲いかかった! 前に足を運ぶことで向かいざまになんとか鋭い剣戟(けんげき)を避ける僕。剣が振り下ろされたその瞬間だった――剣が地面に跳ね返り、斜め上に剣が僕の腕を薙ごうと襲いかかってくる、ツバメ返しとかの亜種か! 
 
 右膝を無理矢理かがめたが僕の肩を一センチほど切り裂いた! これ以上好きにさせないように、すぐさま撃ち返す。しかし、女剣士は銃口から出てくる弾丸の軌道をよんだのか、後ろに体をそむけて、銃弾をかわす!

 お互いに間合いを取り直す。無理に右膝をかがめたため右足を少し痛めてしまった。後は肩、筋肉まで切り裂かれているだろう、右手に力が入らない、だが相手も一緒だ。肩と太ももを撃ち抜かれた女剣士は立つのも辛そうだ。

「佑月!!」

 僕の状態を見たメリッサが心配して叫ぶ。

「──大丈夫さ」

 このくらい今までの困難に比べたらへっちゃらだ。ブライアンが興奮して、

「僕も加勢します!!」

 と前に来たがっていたので僕はすぐさま言葉を返す。

「来るな!」

 ブライアンを使うつもりはない、彼は貴重な戦力だ、万が一があっては困る。第一、相手を本気で倒そうと思ったら、最強のヴァルキュリアであるエイミアなら相手の剣技を何とかするだろう、だから、囮にして、後ろから僕が敵をライフルで撃ち抜けば相手は即死だ。

 それだけのことを考える頭は僕にはある。だが、僕は相手の力を見測る必要がある、仲間にふさわしいかとね。

「フフフ、ははは――!」

 女剣士は笑い始めた。

「そうだ! そうじゃなくては面白くない。あたしが、この山の頂上で待っていたのはアンタのような相手に出会うためだ!」

 よく言う。またもや女に口説かれるとはな、僕は苦笑する。最近は何故か女性にモテてしまうのが困る。どうせなら生前にモテて欲しかった。まあ、昔はただのダメ男だったので女が寄ってくる理屈が通らないが。

 女剣士が八相構えでこちらを伺(うかが)っていた。
 
「アンタ、名前は?」
「佑月だ」
「そうかい、あたしはシェリー。これでお互いの墓標に困りそうにないね」

 僕は笑みを浮かべたシェリーは僕を好敵手と認め、間合いを詰め始める。そして叫んだ。

「いくぞ!」
「来い!」

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