純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百四十九話 パーティ訓練 

 森の中けたたましい音が鳴り響き、鳥たちが騒めき逃げ出した。僕たちはコルドで世話になった老神父や館の主人に礼を言って、マハロブへと移動途中射撃訓練を行っていた。僕は教官で、他のみんなの射撃指導をしている。

「こ、こうでしょうか?」

 ブライアンが自信なさげにAKMを構えて撃つが全く木の的に当たらない。僕はなるべきわかりやすく丁寧に、かつ優しく教えた。

「構えに癖があるな、僕の構え方を見て」

 僕もおなじAKMを使って射撃体勢に入り、そして的に対して撃った一辺40センチほどのひし形の木の板の的を冷静に撃ち抜く。真ん中に当たったな、弾痕は確認していないが。

「す、すごいです……」

 レイラは唖然(あぜん)と僕の射撃を讃えた、僕は平然として言った。

「これは慣れだ、最終的に上手い下手はあるが、きちんと訓練すればあのくらいの的なら必ず当たるようになる、それ以上の才能を僕は求めていない、きっと君もうまくやれるさ、レイラ」

「はい!」

 そうしてレイラも射撃の構えを取ったので僕は丁寧に教える。アデルもやっているが彼は短気だ、外れたらすぐに不貞腐(ふてくさ)れてやめてしまう。だが、みんなが熱心にやっていると、次第に自分からやりだすので僕はその時を見計らって指導する。

 そしてアデルの銃弾が的をかすめて彼は大喜びをした。
「やった……! 当たった!」
「いいぞその調子だ、もう少し肩の力を抜いてまっすぐに的に対して銃を構えたほうが良い、こうだ」

 僕が例を見せて、彼も真似をする。シェリーは自分から射撃のコツを聞きに来て、非常に熱心だ。わりとみんなの士気が高い。ヴァルキュリアたちの方に向かうと、メリッサも訓練をしていたので銃の指導をしながら状況を話した。


「メリッサ、調子はどうだ?」
「まあまあだな、銃でも使えないことはない、私は剣の方が好みだが、他のみんなの調子はお前から見てどうだ」

「驚いたよ、僕が想像していたのとみんなの上達状況が違う、他のエインヘリャルの中で射撃の才能があるのはレイラだ、彼女は素直に指導に従い、迷いなく引き金を引ける、変に硬くなったりしない。実戦でああだとかなりの戦力になる。

 次に才能があるのはシェリーだな、彼女はとても熱心だ、だが、頑固なところがあって変に力んで、少し悩んでいるようだ、なまじ剣術が卓越しているだけあって変なプライドがあるせいか上手く当てないと、といった感じで焦っているな、まあ、次第にほぐれるだろう。

 問題なのはアデルとブライアンだ。アデルは訓練に熱心ではないし、ひねくれた性格のせいか、早くも射撃に癖がついている。矯正(きょうせい)が必要だ。ブライアンは単純に武器を持つのが苦手らしい、彼の性分か、性格かわからないが、たぶん心の問題だ。

 射撃に慣れてくれるとありがたいが、どちらも戦力としては弾をばらまく係だな」

「レイラに射撃の才能か、意外だな、まあ、お前みたいなただのダメおっさんにも射撃の才能があったのだから不思議ではないか」

「言ってくれるね、僕は独学で射撃の腕を磨いたんだよ、独自の訓練をしたり、狩りで試したりして。知識と実践は全然違う、やってみないとわからない事ばかりだ」

「最初はお前も苦労していたよな、私も内心、エインヘリャルの選択を間違ったかと冷や冷やしていたぞ」

「今となっては笑えないジョーク」
「確かにな」

 そう言ってお互い笑いあった、メリッサは結婚式を成功させたことへの安心感と、戦闘ができるとなって上機嫌だ。いつもこうだと夫の僕はありがたい。

「ところで、ヴァルキュリアたちの射撃の腕はどう見ている教官?」

 そう言ってメリッサは射撃をしながら僕に才能はどうだと尋ねているようだ。

「悪いが、ヴァルキュリアたちの中で一番才能があるのはユリアだ。彼女の射撃の才能は天才的だエインヘリャルだったらありがたかったんだけど……」

「わあ! また当たりました! 佑月さん見てました! やほーい」

 横でユリアが弾を的に当てて歓喜していたので、

「よくやった! 次は的を小さくしてみるか!」
「いいですね!」

 僕の答えにはしゃぐユリア、メリッサも横でそれを見ていたのでため息をついた。

「剣の腕では負けないんだが……、銃は不慣れなものだからな……」
「安心してくれ、ヴァルキュリアの中ではユリアの次にメリッサ君だ。後はダイアナとミーナはどっこいどっこいだ。サラはそもそも体が小さくてアサルトライフルがまともに扱えない、拳銃を持たしても、実戦で当たるよう様な武器じゃないし、戦力外だ」

「それは問題だな、10人が規定だろ、足手まといは流石にごめんだ、ということは……」
「ああ、エイミアにチームに入ってもらおう」

「……そうなるか、でエイミアはどうした? 見た限り射撃訓練をしていないようだが……」
「……ナオコと遊んでいるようだ」

「はあ⁉ みんなで射撃やるって決めただろ、何であいつ参加してないんだ!」
「聞きたいんだけどエイミアは最強のヴァルキュリアなんだろ、ヴァルキュリア相手なら銃が必要かな……?」

「一応そのつもりで私はフォーメーションを考えていたんだぞ! 戦術担当のこっちの身にもなってくれ!」

「僕のせいじゃないけど一応謝る。でも、やる気のない奴に銃を教えるのは難しいんだよ……」
「まあ、確かにな、やってみた感じ、余りにも肉体訓練と違って、神経使うからな射撃は。エイミアの性格からしてやらないだろうな」

 そう言ってため息をついて、メリッサはAKMの引き金を引いたら見事真ん中に当てて木の板を真っ二つにした。

「やった!」
「おお! 流石はメリッサ、ヴァルキュリア大戦の英雄!」

 そう僕が言うと彼女は誇らしげにして喜んだ。こうして射撃訓練は続き、練度(れんど)を上げていく。

 メリッサ教官のもと僕たちはフォーメーション訓練を並行して進めた。まずはメリッサ教官が、訓示を述べ始める。

「皆の者、よく聞け! 我々一人一人は、敵に劣ることなど多々あり得る、しかし、みんなの個性を生かしそれぞれが、それぞれの役目をはたして、個人の弱さを補えばたとえ強敵でも、打倒することができる。

 我々はチームだ、組織だ。皆が協力して一つの有機的な戦闘能力を得れば、すなわち敵など恐れるに足りない! 我々は決して独りじゃない、我々は集まれば獅子だ、虎だ、ならば、おのずと勝利は我々のもとにある! いいな!」

「おおー‼」

 メリッサの激励に僕たちは声を上げて応える。そして具体的な戦術の説明が彼女から始まった。

「戦術とは何か、端的に言うと、勝利の可能性を1%でも上げる効率化だ。あらゆる競争の行われる分野で戦術が語られる、我々はこれから闘技大会へ臨む、私の知っている限り、闘技場は平面で広く、個々で戦えば、各個撃破される。

 そこで私は、佑月の世界のサッカーの戦術を応用する」

「サッカー?」

 ミーナを中心に僕以外がきょとんとしている、僕以外は異世界の人間だ知らないのは当然だろう。メリッサの語りは続く。

「サッカーとは佑月の世界の球技で、11人対11人でフィールドプレイヤーが10人、ゴールキーパーがゴールを守り、球一つを奪い合い相手のゴールを決める競技だ。

 娯楽の一種だが、戦術は極めてロジカルで、また競技の成功者は一生手に余る大金が稼げるほど盛んだ。必然金が集まる以上、より1%でも勝率を上げるためにチーム同士が競い合って、戦術を考えその選手に応じて、有機的に動く。

 偶然にも我々の闘技大会もエインヘリャル、ヴァルキュリアを合わせて10対10の戦い、そして障害物のない平面、すなわちフィールドが基本と見ていい、サッカーの戦術をベースにフォーメーションを決め、戦術訓練を行う。皆の者いいな!」

「わけがわかんないけど、面白そうね! 頑張ってねみんな」

 とエイミアが言ったのに対して、メリッサがびしりと僕たちの能力で出した指し棒を彼女に向けた。

「エイミア! お前も強制参加だ!」
「え⁉ 私も? めんどくさい……」

「前言った通り、参加する以上、例外は認めない。何故なら組織は穴があれば必ず崩れる、例えエイミア、お前が最強のヴァルキュリアでも、穴になる可能性がある以上、訓練は受けろ、いいな!」

 不満げなエイミアに対してナオコが「お姉ちゃん頑張って! パパとママと一緒に戦ってくれるんでしょ?」と言ったので、エイミアはまんざらでもないのか、「わかった、わーった、やればいいんでしょ、やれば!」と結局同意する。

 戦力外のサラも人形を使って、「エイミアお姉さんがんばってー」と人形の手を振ったので、エイミアが「おっしゃあ、じゃあやるか!」と声を上げ皆が続いた。

「シェリー! お前はみんなの盾だ剣だ、最前線に立つんだ、周りや後ろを見ながら行動するんだ!」

 訓練が始まり、メリッサの怒声が飛んでいく。シェリーも、「わかってるよ! でも……
」と言ったのでメリッサは、「戦場にでもは存在しない、できるかできないかだ!」と掛け声をかける。

「ブライアン、ほら、敵の攻撃が来たぞ、レイラとアデルをお前の能力で守れ!」
「はい!」

 と言って氷の壁を作り、投げられた朽木を跳ね返す。

「アデル、レイラ、弾幕薄いぞ! もっと相手の行動を制限しろ」
「は、はい!」
「怒鳴るなよ!」

 そう言ってAKMを使って、弾の厚みをつくり、射撃を行う。

「エイミア! お前は最強のヴァルキュリアだろ! みんなを援護しろ!」
「うっさいばか! やってるでしょ!」

 とエイミアは不満たらたら、横で見守っているナオコとサラが「お姉ちゃん頑張れー」と応援していたので、エイミアは手を振る。それを見たメリッサはエイミアに向かって藁人形を投げ込む! 彼女は一瞬で戦士の顔になり剣を出し藁人形を真っ二つにする。ナオコたちはわあーと歓声を上げた。

「佑月、ユリア、お前たちはこのチームの要(かなめ)だ、矛(ストライカー)だ! もっと効率的に動いて、敵を仕留めろ!」

 と言われたので激しくユリアと場所を変えて、投げられた藁玉を銃でねらい撃ち砕く。ユリアはまだそこまではいかないが、かすめることができた。いけるな。

 こうして訓練は日暮れまで続けられて僕たち男陣は夕食の食材のため狩りにいき、女性陣は料理の準備をする、そういう日々が続いた。

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