純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百五十話 パーティー訓練②

2021年8月21日

 僕たちは旅路の中、射撃訓練、戦術訓練に明け暮れた。射撃訓練は順調で、レイラが10発中5発は的に当たるようになり、ユリアはより小さい的でも止まっている相手なら当てられるほど上達したので、動く敵に相手でも何発かあてられるよう、僕は藁のボールを投げて、彼女に射撃の上達を促(うなが)す。

「ユリア、いくぞ!」
「はい!」

 ゆっくりと投げたボールは規則的に動き落ちる、その動きを予測して撃つ訓練だ、彼女はバースト射撃で五回に一回は当てられるようになっていた。

「やっぱ動く相手には難しいですね……ちゃんと狙っているんですけど」
「いやこの短期間にすごい上達だよ、君は普通に狙撃訓練もやったほうが良いな」

 ユリアの感想に僕は賛辞で否定した。

「狙撃ですか……狙って撃てってことですよね、今もやっていますが……」

「違うんだ弾を当てるのと、相手を殺すことは。人間には急所がある、頭、胸、腹。頭に当たれば即死だがよく動くため当てるのは難しい。腹は当たりやすく行動不能になりやすいが、即死とはいかず、反撃される可能性がある。なら、胸、心臓を狙う。

 心臓を貫けばショック死で即死に持ち込めるし、胴体である以上激しく上下左右に動くわけじゃない。これをバースト射撃、つまり3連続の射撃で一発でも上手く当てられたら、かなりの確率で相手を殺害できる。

 君はそれを狙うんだ、ヴァルキュリアの。ヴァルキュリアを戦闘不能にすれば、相手の数が減り、スペースが生まれ、こちらの攻撃を妨害されることはなくなる。

 僕以外の他のみんなは主に相手の行動制限をするための射撃で、相手の動きが止まったところを僕たちが倒す。どうだい?」

「わかりました、難しそうですがやってみます!」

 彼女に特別レッスンとして等身大の藁人形の心臓部を狙う訓練をやってもらった、まだまだ狙撃には程遠い成果だが、実戦で使えるくらいまでは、訓練すれば上達するだろう。

「さて、問題は……」

 僕はアデルとブライアンのもとに行く。一向に的にまともに当たる様子がない。アデルとかは焦れて、やけになってたびたび訓練をサボったりし出した。ブライアンはいくらやっても上達しない。さてどうしたものか。とりあえず今ここにいたブライアンに助言する。

「何か悩んでるのかい?」
「えっ……?」

「君の弾道は迷いがある、訓練で当たりもしないものは実戦では当たらない、君は何か問題を抱えているようだ」
「……」

 そう言って沈黙がしばし流れて、ブライアンは重い口を開く。

「これってうまく当たれば人が死ぬんですよね?」
「そのための訓練だ」

「僕、人殺しとかしたことなくて、その……血を見るのも嫌だし、相手が可哀そうで」
「敵が目の前にいた時、そのまま無抵抗だと君が死ぬぞ……僕たちが行こうとしているのは戦場だ」

「でも……」

 どうやら人を殺すことに戸惑いがあるらしい、それは人間なら仕方ないことだ、僕はもう慣れてしまったが、普通、人が人を殺すのには相当のストレスとプレッシャーがかかる。実際戦場に出て銃がまともに撃てない新兵はいくらでもいる。そのために軍隊は非人道的に訓練を行わせて、人間性を鈍らせる訓練生活を送る。

 これは人間の性質を考えての軍隊なりの必要なプロセスだ。

「ミーナを見てごらん」
「えっ」

 僕は彼のヴァルキュリアであるミーナの方に視線を向けさせた。彼女の性分はやはり戦士らしく、徐々にだが射撃も向上し、今時分、的に当てた。

「すごいですね……僕なんか……」
「でも君が死ねば彼女も死ぬよ」

「えっ……!」

「僕も最初人殺しなんてしたくなかったし、怖かった、みんなそういうもんだ。でも僕は大切なメリッサとこの世界を生き抜くために、何度も奮起して、訓練して、戦ってきた。エインヘリャルとヴァルキュリアは一心同体だ、君が死ねば彼女も死ぬ。彼女を君は守りたくないのかい? パートナーを」

「それは……!」

 少しずつ顔つきが変わっていく、そして僕は突然座っていた彼の金玉を強く握った。

「うぎゃ! 何をするんですか、佑月さん!」
「モノが縮み上がっている、そんなんじゃ当たる弾も当たらないぞ、もっと肩の力を抜け、いいかい僕の構えをよく見るんだ……」

 そうしてAKMを僕は構えて彼も真似をする。伏せ撃ちの構えを僕が修正しそして囁く。

「今目の前にあるのは木の板だ人間じゃない、静かに呼吸を整えろ、もっとリラックスしてそう自然に、的と照星と照門をまっすぐ合わせて、トリガーに指をかけてゆっくり絞れ……今だ、撃て!」

 僕の掛け声と同時にブライアンは銃を放ち木の板の一部を撃ち飛ばした。

「当たった……⁉」
「今の感覚を忘れるな……銃は腕で撃つんじゃない心で撃つんだ、いいな!」
「はい!」

 どうやら彼にも何か変わったものがあったようで安心した。次は戦術訓練だ。

「ほらシェリー敵がやってきたぞ、囮となって、みんなを守れ!」
「ああ!」

 メリッサの指示にシェリーが従う、犬のようなけむくじゃらの動物をシェリーとエイミアが相手して捕まえた。これを後ろの味方に行かないよう何度も繰り返す。

「ミーナ、レイラ、ブライアン、アデル、ダイアナ、弾幕が薄い! もっと有効的に弾を使え!」
「はい!」
「ああ!」

 彼らは伏せ打ちで弾幕張りの役割のようだ、次に僕たちに指示が飛んでくる。

「佑月、ユリア、足が止まった敵を撃て! 仕留めろ! ユリアはエインヘリャルと、ヴァルキュリアを見極めながら判断する癖を付けろ!」
「わかった!」
「はい!」

 どんどんメリッサは木の朽ち木を投げ込み、的を増やしていく、僕とユリアはそれを正確に狙い定めて撃つ。大体メリッサの考えることはわかった。そして激しく僕とユリアは立ち位置を変えていく訓練を行う、もちろん立ち撃ちだ。

 ひとしきり汗をかいた後、僕はメリッサに話しかけた。

「だいたい役割分担を決めた訓練のようだね」

「ああ、そうだ、射撃適正と戦闘能力を考慮してだ、ミーナ、レイラ、ブライアン、アデル、ダイアナの5バックで弾をばらまき空間を制圧する。シェリーとエイミアが最前線に立ち2トップでやってくる相手をして時間を稼ぎつつ、動きを止める。そして矛(ストライカー)の私とユリア、そしてお前が仕留める。これが基本戦術だ」

「5-3-2か……なあサイドはどうするつもりなんだ、中盤三枚では二人がヴァルキュリアだから突破されるんじゃないか」

「そのためのポジションチェンジの訓練をお前たちは同時にやってもらっている、相手が弾幕を突破し、こちらに近づいたケースは、トップ下に位置する真ん中のお前がサイドのユリア、もしくは私とポジションチェンジをして相手する。

 5バックも2人のヴァルキュリアはサイドバックに配置する。エインヘリャルの法則で敵のエインヘリャルをヴァルキュリアは直接攻撃できない、攻撃したらパートナーの因果律が狂って、ひどい目に合う。

 よってサイドに張って、その誤射を防ぎつつスペースを埋める、これは中央に私たちのエインヘリャルを配置することで、相手のエインヘリャルを集めさせて、集敵しやすくするメリットがある。

 相手はエインヘリャルの撃破が目的だからな、自然、相手の陣形は中央寄りになる、よってトップ下のお前が狙いやすくなる。

 また5バックの中央にブライアンを置いて、中盤を敵が突破した場合、ブライアンが盾となってレイラとアデルを守る、その間お前が敵の後ろから仕留めろ」

「なるほど実に効率的な戦術だと思う、少し提案があるけどいいかい?」

「何だ射撃教官?」

「エイミアを僕の後ろに持ってきて、シェリーをワントップにして、一枚層を厚くして5-1-3-1のフォーメーションにしてくれないか?」

「何故だ? 囮一人では心もとないぞ、なんのつもりだ」
「エイミアがちゃんと戦ってくれるかどうか気になる、彼女はアウティスのヴァルキュリアだ、重要な囮役を任せるのは逆に不安だ」

「ああ……まあな、エイミアは気分屋だし、訓練でも手を抜いているし、やる気が感じられない。確かにヴァルキュリアで囮役としては問題があるな」

「彼女ならエインヘリャルがかかってこようとなんとかできるほど強いんだろ、それを有効的に使いたい、彼女5バックつまりレイラ、ブライアン、アデルの前に配置させて、もし中盤が突破されたとき彼女を戦わせるよう責任を持たせるんだ。きっと彼女の性格上、目の前で仲間を見捨てたりはしないだろう」

「いい案だな、あいつは世話好きだからな。やる気がなくとも、その時になれば行動するタイプだ、それでエイミアをアンカーに配置か、名案だ。5バックのダイヤモンドで5-1-3-1、この基本フォーメーションで行こう」

 僕たちは頷いた。さて、僕はそろそろ狩りに出かけるかな。

 そして夜が更け夕食の時間だ。飯となればギスギスした雰囲気のパーティーも表情が和らぐ、メリッサシェフの最高の料理で、もちろんみんな笑顔だ。アデルですらも談笑しながら、食事を楽しむ。

 大所帯になって狩りが大変だが、それは男の甲斐性、今日は珍しくユリアも起きていて狩りを手伝ってくれて大漁だ。

「ホントメリッサさん料理が上手ですね、どこでそんなメニューが浮かぶんですか? おしえてくださいよー」
「実はなー」

 レイラとメリッサは料理の話題で持ちきりだ、性格は反対だが、共通の話題が出来て最近仲がいい。微笑ましいな。

「そうですねーメリッサさんの料理は勉強になりますよ、わたくしも食が進んで進んで、お菓子が美味しいです」

 その瞬間メリッサとレイラがぎょっとした、いきなりララァが割って入ってきたからだ。

「ララァ! いつの間にかいなくなったと思ったら、いつの間にか現れるな!」

 メリッサの言い分はもっともだ、コルドの町を出た時は一緒だったのにいつの間に彼女は消えていて探そうか一度話し合ったが、やっぱやめとこうと結論を出して放っておいた。で、いつの間にかパーティーに加わっている。神出鬼没だ。

「あら、まあ、わたくしも神様からのお仕事がございまして、お見合いの準備をしていたのですよ、ええそれは大変でした、あ、お土産です、お菓子どうぞ」
「お菓子ありがとう、お見合いってなんだい?」
「それは秘密ですわ」

 僕はお菓子をもらった後、そのクッキーっぽいのをかじりながら尋ねた。答える気はなさそうだ。エイミアが見る見るうちに不機嫌になっているから、僕は彼女にお菓子を分けてあげると、甘いもので沸点が下がったのか、ぶすーとして何も言わない。

「なあメリッサ、マハロブまではどれくらいだい?」 

「ゆっくりいって3週間から4週間だな、開催まで間に合うし、早めについてもすることもあまりなさそうだし、訓練しながらゆっくりいこう」

「まあ訓練ですか! 興味あります! どんなしごきをしているんでしょう、ああ妄想が膨らみますわ! 素敵……」

 ララァはほっといておいて、僕たちの旅路はゆっくりと続いた。時間はまだたっぷりある。そのうちに訓練をして必ず闘技大会に勝たないとな。そう思い仲間たちと同じ飯を食べて静かに眠りについた。

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