純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百五十一話 乙女心

2021年8月23日

「そろそろ集め終わったな」

 僕たちはこの周辺の森に居た毛むくじゃらの犬みたいな動物を、メリッサの指示のもと集めていた。メリッサの言葉にああやっと終わったかと、みんな一安心していた。動物を捕まえるのは難しい、罠にかければ簡単だが、動物を傷つけるなとメリッサの命令で手間が余計にかかった。

「こんなに集めて、まあ可愛いけど、どうするつもり?」

 エイミアの質問にメリッサは自信ありげに答えた。

「ひと休憩をした後、フォーメーションの実戦を想定した訓練を始める」

 おそらく前言っていた5-1-3-1のフォーメーションの訓練をしようって言うんだな。さてどうなることやら。

 休憩をはさんだ後、メリッサ教官のもと戦術訓練が始まった。

「毛むくじゃらの動物、あれはヤカバというが、ヤカバを敵と想定して、フォーメーション訓練を始めるいいな!」
「おおー」

 掛け声を上げるがさすがに疲れていたため元気はない。

「サラ、私の指示のもとヤカバを捕まえている檻を開けてくれ」
「……わかった」

 そう言ってサラはちょこちょこと歩きながら、遠くに置いてあるヤカバの檻のもとへ行った。

「ではフォーメーションの説明をする」

 みんなに前語った、フォーメーションの戦術説明をした、こういうことになれていない僕以外のみんなは不思議そうな顔をしていたが、結構かなり高度な戦術なので、そんなもんかと取りあえずよくわからないが納得したようだった。

「よしみんな配置につけ!」

 その掛け声のもと、5バックのミーナ、レイラ、ブライアン、アデル、ダイアナは伏せ撃ちの構えを取り、エイミアは僕の後ろに立っており、ユリア、僕、メリッサの攻撃的中盤が立ち撃ちに、最後にシェリーが前に立つ。メリッサはさらに指導を続ける。

「違う違う、距離感がバラバラだ、近すぎても遠すぎてもスペースが生まれる。空間(ゾーン)を意識するんだ」
「はい!」

 細かく皆に指示を送るメリッサ、大体、所定位置が決まったようで、訓練が始まった。

「サラ! 檻からヤカバを出せ!」
「は、はい」

 いくつもの檻から一つずつヤカバが飛び出していく、ヤカバの大軍、人懐っこいのかこちらにものすご勢いで寄ってくる。

「シェリー! 囮(センターフォワード)として激しく周りをみつつヤカバを捕らえて離せ!」
「ああ!」

「後ろの盾(ディフェンス)陣はヤカバを撃て、狙わなくていい足止めをするんだ」
「はい!」
「わあった!」

 彼らはAKMでヤカバの大軍に制圧射撃を行う、といってもペイント弾だ。実弾を使うと、動物愛護団体がうるさいからね、でもペイント弾とはいえ当たれば結構痛い、弾が当たるとキャンキャン言いながらヤカバが逃げていく、また銃の音に怯えて、逃げていくヤカバもいた。

「ユリア、佑月、私は矛(ストライカー)として近づいてくるヤカバを狙い撃つ、いいな!」
「わかった!」
「はい!」

 僕たちは勢いよくイキのいいヤカバを狙い撃つ、流石に的として激しく動くうえ、小さくなかなか狙撃が難しい、ユリアとメリッサは苦労しているようだ。

「エイミア! 中盤が突破された! 盾(ディフェンス)に向かうヤカバを一匹でも多く捕まえろ!」

「はいはいー、わかったわよ、メリッサ、おおみんな可愛いね、いい子だよー」

 エイミアは動物好きなのか喜んでヤカバを捕らえて反対側に逃がしていく。それでも漏れて後ろに向かうヤカバもいる。

「ブライアン、壁を作れ、その間レイラは狙い撃て、佑月もカバーしろ!」
「わかった、メリッサ!」
「はい!」

 ブライアンは壁を作り、その間にレイラと僕で狙い撃った。ヤカバの大軍も最初は勢いが良かったが、徐々に勢いが弱まりみんな逃げていった。

「よっしゃあ、勝った!」

 アデルの声が上がり、メリッサも皆を労(いた)わる。

「みんなよくやった、今が実戦を想定した訓練だ。これからたびたびやるから、次はもっと短い時間で効率よく、ヤカバを追い払え、以上だ。皆、休憩に入れ!」

「うっし!」
「ふうー」
「疲れたー」

 各々(おのおの)が声をあげ休憩の時間に入った。僕も慣れない集団戦闘で疲れたな、ゆっくり休もう。

 みんな、休憩となってくつろいでいる、お喋りを楽しんだり、エイミアとナオコとサラとミーナは一緒に遊んでいた。あれ、そう言えば、シェリーとダイアナがいないぞ、特段何かあるとは思わないが、裏切りとか策謀してあったら困る、少し様子を見に行くか。

 森を捜していると、女の嬌声(きょうせい)が聴こえてきた。何かと思って探ってみると、それはシェリーとダイアナだった。

「──ダイアナ、好きだ……その乳房も瞳も」
「シェリー、可愛いわ、もっと気持ちよくなりましょう……」

 そうしてお互い半分肌をさらけ出しながら愛撫を始めた、これは……⁉ あまりのことに僕は閉口してしまった。その瞬間だった、ダイアナがこっちに向かってにらみつけた!

「誰……⁉」

 ──しまった、ヴァルキュリアはエインヘリャルの気配を感じ取れるのだった。逃げようかどうか迷ったが、僕は正直に二人の前に姿を現した。

「佑月……!」
「佑月さん……!」

 驚いている二人を見て、僕は落ち着かせるよう冷静に正直に話す。

「いや、みんな休憩している中、二人がいないことに気になって、もしかして何かおかしなことを考えているのかと思って少し探したんだ、そしたら……その……のぞき見をするつもりはなかった、すまない」

「……あ、ああ、なら、別に、隠すもんじゃないしな、なあダイアナ?」
「ええ、まあ……」

 そう言って衣服を整えた二人と僕は少し話をしてみることにした。僕たち三人は岩に持たれながら座っていた。

「その……君は、レズビアンなんだね?」
「……ああ、そうだよ」

 僕は聞きにくそうに尋ねた。踏み込んでいいかどうか躊躇(ためら)いがあったが、今後仲間の事を知っておくにこしたことがないので、あえて尋ねた。

「そっか、そうなのか……」
「……なんだよ、アンタも気持ちが悪いって思ってるのか! 別にいいだろ女が女を好きになったって!」

「まってくれ、僕はそんなつもりはない。誤解しないでくれ」
「いや、そう思ってるに決まっている! 私が生きていた時もそうだった! 私が子どものころ、孤児院に居た私に優しくしてくれる女友達がいた。

 その時は何故だかわからなかったけど、彼女といるとドキドキした、うれしかったんだ。でも女同士でそんなことはないと思ってた。でも違った、私は本気だったんだ!

 ある時彼女に言ったんだ、好きだって。彼女も私も貴女のこと好きだよって言ってくれた、そして私が舞い上がって彼女の唇にキスしたんだ。その時だ、彼女はどんな反応をしたと思う? 吐いたんだ、私の目の前で。そして言った、“気持ちが悪いから、私に二度と近づかないで”と。

 ショックだった、拒否されたこともそうだし私自身を否定された気持ちになった! しかもその後、孤児院でみんなが私の事を見下した眼でキモイキモいって言い始めたんだ。彼女が言いふらしたんだ、きっと冗談交じりに、私を罵りながら侮蔑してさ! 私を笑ったんだ! ただ女が女を好きになっただけなのに!

 みんな誰もわかっちゃくれねえ! ダイアナだけは私の事を普通として扱ってくれた、好きだって言っても笑って許してくれた。でもなあ! ほかの奴らは違うんだ! みんな、みんな……! ああっー! くそっ、ムカつく! ──くそっ!」

「……別に僕は変だと思わないよ」
「ああっ⁉ 何だよ……」

「別に女が女を好きになろうと、男が男を好きになろうと別にいいじゃないか。人にはそれぞれ人の愛し方がある。僕とメリッサは今のところ最後までつながれないけど、確かに愛している。何も不思議なことじゃない、神様がこのように生命(いのち)を作ったんだ。なら、いろんな愛の形があっていいと思う、君もきっとそうだろ?」

「……え? ……あ、あたしは、その……べ、別に……くっ……!」

 そう言ってシェリーはほろりと涙を流し始め、黒い肌の頬をつたいキラキラと輝いていた。優しくダイアナが涙を拭きながら抱きしめ、こう言った。

「──よかったね、シェリー……」
「……よ、よかった? ……そうか……、よかった……のか? あたし、私は……? うっ、ううぅ……!」

 そう言って彼女はダイアナの胸で大泣きを始めた。誰にでも触れられたくない心の傷がある、彼女はその傷が深い分だけ大粒の涙を流した。彼女が落ち着いた後、僕はほかの誰にも言わないと約束し、シェリーと少しわかり合えたことにほっとした。彼女も人間なんだ、僕と同じね……。

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