純愛異世界ファンタジー小説 終末のヴァルキュリア 第百五十八話 逆転

2021年9月13日

 レイラはせまってくる風をまとった槍に怯(おび)え立ちすくんでいた、このままだと間に合わない、しまった! 敵の掛け声とともに風が解き放たれレイラの周りの地面のブロックを切り裂き壊していく、まさか、まともにくらった……⁉ 

 ──レイラ……こんなにも早く死んでしまったのか……!

 風の渦から空間が解き放たれ、そこに立っていた姿を見て驚いたのは僕だけではない、風使いの敵も同様だった。

「なっ……⁉ 氷の壁……だと……?」
「ぶ、ブライアンさん……!」

 前にかばって氷の壁の能力を使ったブライアンにレイラは信じられない様子だった、僕も信じてはいなかった、彼が咄嗟(とっさ)に彼女を助けるとは。ブライアンは優しく語った。

「レイラさん……こんなところで、さよならなんて僕は嫌ですよ、まだ僕たちの戦いは始まったばかりじゃないですか。なら銃を持ってください、戦ってください……。貴女がか弱い女性であるのなら、僕が貴女の盾になりますから……。

 今戦わないときっとヴァルハラでも後悔しますよ、レイラさん……」

「──ブライアンさん……!」

 彼女は感動して、気持ちを持ち直したようで目の色が変わった、今なら……今なら、彼女に僕の声が届く……!

「レイラ──! 撃て──っ‼」

 僕の怒声に彼女は反射的に引き金を引いてしまい風の槍使いに弾丸を放つ! その弾は腹を撃ち抜いたが、致命傷とは至らなかった。だが、身体的にはそうでも精神的にはそれは致命傷だった。

 何故なら、敵は無抵抗の女性を攻撃したはずだった、だが抵抗する力があるとみると否や、急に臆病になったようだ。人の心理とは不思議なもので、弱い相手と思ったのが、どうやら力があるとみると、覚悟をしていなかったせいか、戸惑ってしまう。

 一発……一発の弾丸が僕たちの流れを一瞬で変えた、それは風よりも早く、光には及ばないものの、時間の流れではあっという間という言葉に等しい。その風に乗るのが僕、狙撃手(シャドーストライカー)の役目だ。

 レイラの銃声が試合場の時を止めた、氷使いも一瞬何があったのか僕たちの後ろの方を見た。そのスキを僕は突く。──瞬時に僕はターンしセミオートのまま振り返りざまに風使いの背中を心臓めがけて黄金の弾丸を解き放った! 

 ──鳴り響く三発の銃声、風使いの男は即死だった。その感覚は勝利の感触であった。男は何故といった表情浮かべながら光に包まれながら消えていった。

 氷使いの敵は動揺を隠せなかった、上手く行っていた流れが急に変わったのだ、適応できないのは当然だ、僕はその心の弱みを突く。

 すぐさま僕は、後ろが安全になったことで生まれたスペースにバックし、氷使いに対し周り込む。人間は視界が目の特性上限られている。斜めに走り込まれると、視界から消えたように見え、相手を見失う。

「消えた……?」

 奴は呟(つぶや)いた。そう、僕が奴から見て消えた瞬間に、敵にめがけて心臓部に弾丸を叩き込む。精神面から崩れたチームは簡単にも崩壊する、氷使いはそれを象徴していた。彼は倒れ込み、そして、「こんなはずでは……」と言葉を漏(も)らし倒れ込んだ。

 これで相手は二人に絞(しぼ)られた、それはシェリーが相手している。形勢が逆転したことで、僕たちのバックラインも息を吹き返し、敵の残りに弾幕を張って、相手の動きを制限した。……今だ……!

 僕は一気に駆け上がり、相手が行動を制限されたことで生まれたスペースに走り込み、瞬時に裏をかき、AKMに銃を持ち替えて、相手の背後を取った。シェリーはそれに気づきにやりと笑みを浮かべる。

 炎使いはシェリーとやり合っていてはやられると考えたのだろう、僕に向けて対策を取ろうと試みた、しかしすでに僕とシェリーと挟み撃ちの状態にある。雷使いもシェリーに対し足を止めるので精一杯、敵にとって数は圧倒的に不利だった。

 ろくに身動きも取れず、僕はバースト射撃で炎使いを撃つ! 流石に相手に察知されて狙いは外れたが、右肩に当たり、それがどうやら利き腕だったようで、炎の剣をまともに扱えなくなった。

 シェリーは戦士だ。それを見逃さなかった。

「これで終わりだ!」

 彼女の剣戟(けんげき)を炎の剣士はかわしたと思ったはずだ、しかし彼女は間合いが伸びる赤い剣使いだ。彼女の剣の残像が、袈裟切(けさぎ)りの形で敵はもろにくらい、ひざを折る。そのとどめはシェリーが刺した。

 僕はむしろ彼女にその役目を譲った形だ。ここまで炎の剣士の相手をしていたのはシェリーだ。彼女の気持ちを考えてあえて手を出さなかった。さあ残りは独りだ……! 煮るなり焼くなり好きにできる。

 その状態を見てコロッセウムは一気にヒートアップし大歓声に僕たちは包まれる。それは相手も同じだった。雷使いは一気に居場所を失ってしまい、数万人の敵という感覚を彼は植え付けられた。

 明らかに彼は恐怖にかられた表情を浮かべる、決着はついたな……。雷使いはひざをつき両手を肩より上にあげて、こう震えながら言った。

「……降参する、私たちの負けだ……」

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