小説,終末のヴァルキュリア

 門をくぐると、世界がカラーパレットに彩られていた。

 赤い屋根、青い店の看板、薄く黄ばんだ煉瓦造りの家、植えられた街路樹の緑、濃紫の教会。前に見えるのは透き通った水色の噴水、屋根が光りに照らされ橙(だいだい)色に輝く。

小説,終末のヴァルキュリア

 風に吹かれて戦乙女の銀色の髪が舞う。揺らめく黄緑の木々の葉が囁(ささや)くように、僕たちの旅路を歓迎する。葉の間隙(かんげき)からオレンジ色の光が差し込む。柔らかな森の只中、僕たちは一歩一歩足を進めていく。

「ママ~!  ...

小説,終末のヴァルキュリア

 朝日が窓から差し込んだ。天(あめ)から降り注ぐ光が僕には眩くて、胡乱(うろん)げに目をしかめる。

 椅子に座りティータイムに勤しむ僕は、俗世との乖離(かいり)を憶え、何か優越感に浸っていた。

 この茶葉はこの ...

小説,終末のヴァルキュリア

 日は沈み、静かなる安息の夜を迎えた。昼間の騒動も落ち着き、人々には休息が必要だった。もちろん僕たちにも。

 僕とメリッサとナオコは宿屋の大きなベッドで川の字で目をつぶっていた。無論真ん中はナオコだ、変な想像はよしてくれ。 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 僕は街道を駆けめぐった。巨大飛行艇アルキメデキスから距離と角度を測り、正確な弾道が取れるポイントを探す。何せ相手は空高く飛んでいる、なら重力を考慮して軌道を測定しなければならない。丁寧に銃の照準で調べていると、側面を取るに最適な2階 ...

小説,終末のヴァルキュリア

「ヴィオネス様! 武器をお換えください。地上戦では不利です!」
「そうか、あれがあったな」

 どんどんヴィオネス達の地面が盛り上がっていく。何事かと銃を構えた。バチリと電気が弾ける音を上げ雷光が迫ってくる。僕は電流 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 そうだ、あの女の子が危ない! 思わず僕は駆け出した。足を大きく踏み出し、膝を高く上げる。SG552を両手で持ちながら、肩で息をした。──間に合ってくれ。

「メリッサ、君の方が足が速い。先回りを頼むぞ」
「わかった ...

小説,終末のヴァルキュリア

「佑月! 一気に潰すぞ」
「それは得策ではないんじゃないかな。相手の能力自体が非常に高い、能力を生かして守りに入られると厄介だ。あの性格だとすぐにやってくるだろう、それを迎撃したほうが効率がいい」

「何故消極的にな ...

小説,終末のヴァルキュリア

 蒼い空に顔を向けると鳶(とんび)に似た鳥が羽ばたき鳴いた。眩しい日差しに金髪を照らし十代後半だろう、長い髪の毛を後ろにくくった少年が大きな家の屋根に上っていた。顔は陰になって見えないが、隣には鎧をまとった女性がいた、間違いないエイン ...

小説,終末のヴァルキュリア

「あきれたものだ。連れて帰ってくるとはな」

 メリッサは眉をひそめて、じっとりとした湿っぽい目でこちらを見る。僕が日向さん似の女の子を連れて宿へと帰った時、そろりと部屋に入った途端、浴びせられた最初の小言がこれだ。 ...