終末のヴァルキュリア 第六十話 スナイパー同士の戦い を更新しました。

 スナイパーのいると思われる山に真っ正面から登らずにのとなりの山に登った。もし、真正面から行くと相手に気づかれるかもしれない、敵は油断のならぬ相手、もしかすると何重にも罠を張り巡らせているかもしれない。なら、横から奇襲をかけるのが常道だと考えた。

 手にはメリッサからL118A1というスナイパーライフル。全長約1メートル12センチ、重量約6キロ、装弾数10発、装填してあるのは338ラプアマグナム弾。命中精度が非常に高い銃でイギリス軍やスウェーデン軍が採用している銃だ。

 派生のL115A3という銃は実際に2500メートルの距離からアフガニスタンのタリバン兵を狙撃したという驚きの記録を持っている。手に持つのは僕には重すぎるが、背負って移動する分には問題なかった。

 慎重に慎重を重ねて、動物にカモフラージュして、毛皮をかぶって山を登る。となりの山をしっかり立って歩いて登った。約4キロほど歩くとさすがに疲れてくる。

 だが、いつ敵のスナイパーに相方のヴァルキュリアが捕まったことが、気づかれるかわからない。なら答えは一つ、日は傾き描けていたが、スナイパーがいる山へ登ることにした。相手に見つからないよう匍匐前進で登る。

 スナイパーの位置まで約5キロ、僕は重たいスナイパーライフルを背負いながらゆっくり進む。安全性を確保するため、あたりを見渡し、じっくり進み、見たことない動植物が視界に入り、ぼくはそれを眺めながらピクニック気分で登っていた。ふと、前にウサギみたいな4つ耳の小動物が塞がった。

 早くどいて欲しかったが変な動作をして見つかるわけにはいかない。その時だった――

 固い物質がウサギの胴体を穿(うが)ち、たちまち肉片と化し、張り裂けんばかりの音が鳴り響いた。何が起こったのか把握するには時間がかかった。ただ、目の前の飛び散った肉片を呆然と眺めていた。どういうことだ、何故銃がこちらに……?

 まさか向いているのか――横から奇襲を仕掛けていると言うのに一気に毛穴から汗が噴き出てくる、まさか気づかれたのか? 思案を巡らし僕なりの結論を出した。

 おそらく相手のヴァルキュリアの鏡を使って示す方法に特殊な合図があったんだ、加えてメリッサのことだから本物の人間を狙撃相手にはずがない。だから気づかれたんだ。

 しかし何故こちらの方向から来るとわかったんだ、あたりを調べ体をもじらせると、ふと足に感触があった。それは古びたロープが遙か彼方から仕掛けられたものであった。

 しまった、こちらにもトラップが仕掛けてあったのか! おそらくこのひもは振動させると相手に音を鳴らして、敵が来たことを知らせるものだ。

 途端に恐怖がわいてくる。相手はこちらの動きを読んでいる――おそらく戦闘経験の豊富なエインヘリャルだ。そいつが一撃必殺の銃でこちらをのぞいている。途端に心臓が手でわしづかみにされた気分になった、続いて呼吸が荒ぶっていく、頭に広がる虚無という恐怖、そう死というものが僕を押しつぶそうとしている。

 敵が見える分なら戦闘意欲がわく。だが、今回の敵は遙か遠くにいるのだ、そいつがじっくりとこちらを見ている、一撃で僕を殺せる武器を持ちながら。

 もはや動く気力すら失ってしまった。日が落ちるまで移動するのを止めよう、恐怖に駆られながら夜を待ったのだった。

 夜になれば僕も移動する勇気がわいてくる、まさか暗視スコープまでもっていないだろう、そうでないことを神に祈る、どうせ神に祈るなら僕の女神に祈ろう。頼むメリッサ……。

 人間の目は動くものをとらえやすい機能を持っている。夜だからといって、フラフラ歩いていたらたやすく長距離スナイプされるだろう。

 当然、匍匐前進で進む。暗闇の中猛獣たちのうなり声が聞こえはじめた、夜行性の獣たちが僕に立ち塞がる。

 最初に出会ったのは巨大なくちばしと羽根を持った鳥の猛獣だ。大きな巨体で、動くものをとらえようと待ち構えている、僕は動きを止める。鳥がこちらに気づかないように、じっとこらえて待つ。猛禽類は10分ぐらいすれば、獲物を探しに旅立っていった。

 つぎに出会ったのは2メートルほどのイノシシのような動物だった、大きな牙がついており僕をかみ砕こうとあたりをうろついている。その体から獣臭い匂いがたちこめ、我慢ならず声を上げそうだった。じっとこらえているとそいつも獲物を探しに立ち去っていった。

 問題はオオカミのような獣だった。耳がとがっており牙は鋭い1メートルほどの獣だったものが軽やかに足取りで、あたりをうろつく。オオカミはこちらを向いた。鼻をならし匂いに導かれてこちらへとやってくる。僕はメリッサに祈ったが、もう夜だ。メリッサも眠ってしまったのだろう……僕の右足を牙が貫きオオカミはその肉片ををむさぼった。

 絶叫を上げそうな激しい痛みが襲うが、それを押し殺してショートソードで落ち着いてオオカミの目を刺す、何度も刺すが、まだこちらの足を放してくれない、頭部の部分を刺すと戦闘意欲を失ったのだろう、そのまま逃げていった。

 やがて血のにおいに釣られて猛獣たちがよってくる。僕は袋の中から長い布を出し止血した、だが血のにおいは隠せない。猛獣たちが襲ってくる、僕はショートソードでなんとか立ち回り、恐怖と暗闇の中、もがき苦しみそして、幸運にもオオカミにかまれた足以外は怪我をすることがなかった。

 日が昇り始める。僕は動くのを止め草むらの中でじっと日が落ちるのを待った、あまりの疲労に眠りそうになるが、面白いように目覚まし時計が鳴ってくれる、対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)の轟音だ。動く動物を敵と見なしてあたりめったら撃ってくる。

 この音が恐怖で眠れなかった。飛び散る血しぶきと肉塊たち。山が赤く染まっていく、もはや疲労と恐怖で頭がおかしくなりそうだった。頼むメリッサ僕を守ってくれ。そう祈りながら日が落ちるのを待った。

 夜になるとようやく移動し始めた。幸運なことに敵が動物を虐殺してくれたおかげで猛獣たちのエサは僕以外にたくさんあった。血のにおいと赤くべっとりとしめった地面を這いつくばってで進む、今日はなかなか距離を稼げた、この調子でいきたいものだ。

 そうおもっていると前を見て絶句した。木や草が根こそぎ刈られている。こんな空間にでたら夜とはいえスナイパーライフルの餌食になる。なんとか迂回を試みるが周りは断崖前壁の崖になっており、通れる場所は目の前の死の空間しかない。僕は決断しなければならなかった。崖を降る――。

 意を決して自ら走り込み崖に飛び込んだ。

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