終末のヴァルキュリア 第六十一話 スナイパー同士の戦い②を更新しました。

2020年5月16日

 山から僕の体がずるずると滑り落ちていく、下手に落下運動に抵抗して勢いが削がれてしまったようだ。こんなところをスナイプされるとまずい、体に岩や木やらがぶつかり、僕の肉体を痛めつけた。

 強打され僕の体はボロボロになっていく、そして崖へと体を投げ出された、下を見ると高さ30メートルはあり、落下の恐怖が僕を襲う。重力と緊張感で体が押しつぶされそうになる。

 下は川になっており水の衝撃ならなんとかなると安心していた、しかし川に投げ出された瞬間、岩にぶつかったような衝撃を受けた。水の壁に体を殴られたようだ。

 水中を潜り、痛みで川の激流に流されそうになりながら、体を動かしなんとか泳ごうとするがどんどん流されていく。川の縁の岩に体がぶつけられ、ばらばらになりそうな感覚を受ける。

 岩に捕まり一息つきどうしたものかと悩んでいると、少し崖を登ったところに穴がぽっかりと空いている。洞窟になっているのだろう先は真っ暗だ。

 僕は岩から体を持ち上げ崖に捕まる。身体中が痛んで思うように手足が動かせない。崖にしがみつくので精一杯だ。震える手足で硬い岩に体に身をまかせるが、強風が僕を襲う。メリッサ僕を守ってくれよ……。

 そう祈りつつ体を動かしなんとか洞窟の中へとたどり着く。あたりは真っ暗だ。とりあえず僕は洞窟の地面に体を投げ出した。

 乱れた呼吸、噴き出る汗、水を吸って重たくなった服、6キロのL118A1を背負い、僕の体は動けないほど打ちのめされていた。ふと右足を触ってみると、ひどく青ざめて腫れており、さわってみると関節があらぬ方向に曲がっていた。

 僕は一度右足を両手で引き延ばす、ガクッと抜ける感覚がした、そして右足を関節に入れる。

 激痛で頭が変になりそうだったが、もはや疲労と恐怖で感覚が麻痺していてどうにか声を上げずに我慢できた。呼吸を整え、どっと力が抜けていく。

 ここで休むわけにはいかない夜のうちに距離を稼いでおかないと、より長期戦になる。そうなると僕の精神が持ちそうにない。発狂死はゴメンだ。

 一息つくと真っ暗な洞窟の中、手探りで壁を探し壁をつたって進んでいく、暗闇の中、右手でつたい一歩一歩進んでいき、どれほどたっただろう、真正面に壁が立ち塞がる。

僕は逆方向へ向かい右手を壁について進んでいった。進行途中湖に落ちたり、岩が落ちたりしたがたいした問題はない。

 目の前に光が差し込む、外か! 歓喜で声を上げそうになった。その時だった、僕の腕に激痛が走った。下を見るとまだらで茶色い色をした大蛇が僕にかみついていた。

 とっさにショートソードで切りつけ大蛇を仕留めるが、どうやら噛みついてきた場所がみるみる腫れ上がっていく、気分が悪くなり呼吸が難しくなった。

 体はみるみるうちに熱くなっていき、頭がぼやけてきた、高熱にうなされ、呼吸がどんどんできなくなり僕は倒れ込む。その後は覚えていない、目が覚めると僕は月明かりに照らされていた。

 立ち上がろうとすると吐き気がしその場で嘔吐した。高熱で苦しい。僕はこのまま毒に慣れるまでじっとするか、スナイパーを追いかけるか迷った。

 すっとメリッサを思い浮かべた、僕を心配しているだろうか、もう三日目だ、僕を探しに来たりしないだろうか。あの娘のことだ僕を追いかけるだろうな……!

 途端に頭に冴えが戻ってくる。メリッサが危険だ! もし追いかけてくるとなるとスナイパーはこれを見逃さないだろう。

 愛しい彼女の体が対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)でバラバラにされる。想像しただけで悪寒がはしる、それだけは避けないといけない! 僕は光に向かって進み始めた。

 途中狭い穴になりその中をはって進み、月明かりに導かれ地上へとたどり着く。今どこにいるだろうか、周りを見渡しよく観察すると、どうやら山の上の方に出たらしい、遠くに町が小さく見える。方角からすると北西に向かえば良さそうだ。

 僕は匍匐前進で夜の中、地をはって進んでいく。周りは凄惨(せいさん)だった。バラバラの動物たちがどす黒い血を流し、内臓をまき散らしながら地面を覆っている。

 体に血がべっとりとつく中、慎重に進んでいき、所々で動物の肉が腐っており腐臭がした。高熱と折れた足の痛みをこらえながら必死にすすんでいく。

 少し開けたところに出た、僕はふと町の方向を見てみる。約1500メートルくらいに町が見える絶好の狙撃ポイントだ。

 僕の感だとここに何かありそうだ、周りを観察し、よくみると奥の方に硬そうな布で囲んだテントがあるじゃないか。

 ここは敵のエインヘリャルの寝床だろうか、調べる必要がある。僕は草陰に入りながら慎重に回り込みテントにたどり着く。

 罠を仕掛けていないだろうか、よく観察するがなにもない。慎重にテントの中に入ろうとすると木が落ちてくる。それを振り払い、中に入る。中は空だった、天井は円く作られており、丈夫に作られている。

 ここなら快適に過ごせるだろう。よくできたテントだと、変な感心をした。

 僕は考えをめぐらした、ここは寝床で、今、敵は出かけている最中じゃないのか。なら、ここで待ち伏せしよう、僕は疲れた体を布の地面に投げ出し、入り口に向かって伏せうちの構えでL118A1を構えた。

 来ない……来ない……僕がいくら待っても敵は来ない。何故だ、何故来ない。空が明るくなる。あたりは静かだ。おかしい何故来ない、考え直して、推測した、ここは寝床の一つで他にも狙撃ポイントがあるんじゃないか? 

 それにしてもおかしいこの時間帯なら、動物をスナイプしているはずなのに全く銃声がしない。

 周りを見るか。テントを開け外に出ようとしたとき、下に木が落ちていることに気づく。

 しまった! これは誰か他に中に入ったか示すための罠だ。入れば木が落ちていくように仕掛けていたんだ! 慌てて外に出ないようにした、どうやら僕の予感は当たった。
 
 けたたましく轟音が鳴り響きテントを打ち破った。僕はとっさに伏せていて助かった、つまり、奴は僕がテントの中に入ったことに気づき、逆に待ち伏せしていたんだ。

 一瞬の判断が命取り。テントが崩れ落ちていく、僕はここから脱出しないといけない、テントのあとに隠れながらL118A1を構え撃ってきた方向に打ち返す。

 からりと薬莢が落ち手応えはなかった。後九発、急いで、僕はテントの痕を出て外に出た。敵からすると反撃が来ると、身を隠したり、周りを観察するため、わずかな時間が空く。そうして稼いだ時間を大切にするため、すぐさま草むらに入る。

 奴はどっから撃ってきたんだ。どこにいる、周りを観察する。1000メートル離れたところが少し高所になっており木々でこちらから見えない。

 あそこだろう! 僕は匍匐前進で草むらに隠れながら進んでいき、ポイントから700メートルほどだろうか、山の中今までと違う景色が見えた。

 木々に挟まれたところに僅(わず)かな点のような人影が見えた、いる――奴がいる――!

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