終末のヴァルキュリア 第六十三話 スナイパー同士の戦い④ を更新しました。

 崖からまっ逆さまに両足を地面にたたきつけられた、戸惑いながらも相手の追撃が来ないよう中腰で走り抜けようとするが足が動かない、転がるようにその場を離れるしか、もはや方法はなかったのだった。

 案の定僕の落ちた先に12.7ミリ弾が撃ち込まれて、崖が崩れていく、それに対し僕は草場に身を隠す。足の状態を見ると、両足が腫れ上がっている、もともと脱臼した上で骨が折れていたが、今度は両足がボッキリいったらしい。

どうせいいさ匍匐前進で進むんだから、足なんて飾りだ、何も問題はない。

 さっき敵が撃ってきたところを這いずりながら探ると、血がついている、かなりの出血だ、おそらくあの重いM107を持って遠くまで行けないだろう、少なくとも今のところは山を下りられる心配はない、血をたどってみよう。

 日は沈み山に静寂が訪れる、僕はこの4日間ほとんど不眠不休で追っかけて、精神も体もボロボロだ、満身創痍(まんしんそうい)で足を引きずりながら血の跡を追っていた、這いつくばって文字通り手探りで探索したため、手がとっくにまともに動かなくなってきている。

 だが、僕は今日は妙に冴えていた。敵に一撃を加えたという手応えがあったためか、それとも精神がいかれてしまったのか、まあ、どちらでもいい。僕にとって必要なのは生きること、そしてメリッサの元に帰ること、それだけだ。

 途中ロープを見つけたがおそらく罠だろう、そのロープを慎重に回避すると、前を見上げた途端、穴が見事にカモフラージュされた落とし穴があった、そんな手には引っかからない。

 草が結んである場所がある、よく見ると細い線でつながっており、たどってみると矢が飛んでくる仕組みになっていたので、線に引っかからないように回避した。

 その他にも罠が仕掛けてあった、僕はそれを見事に回避する、我ながらよく成長したものだ、昔なら10回は死んでいた。これだけ罠を張り巡らせるということは何かしら意味があるのだろう。

 理由はすぐにわかった、700メートル先に何やら違う景色が見える。夜だからまともにみえない、もう少し近づいてみよう、夜だからスコープでも判別がつけにくいはずだ。

 500メートルまで近づいたとき盛り上がった土や岩が見える、あれはまさか……。

 見た瞬間絶望した、塹壕が堀りめぐらされており、丁寧に土が盛って、さらにご丁寧に岩で補強している。まるで要塞じゃないか!

 しかも500メートルの距離までしか身を隠せる木がなく、木に上っても無理だそもそも塹壕がこの地点よりもなだらかな高い丘の位置に掘ってあり、上にポジションを取れる場所がない。近づくにはこの身をさらして突撃するしかない。

 これは無理だ。メリッサが来てくれているのを期待して待つか、もう彼女に祈るしかない。メリッサが来れば武器を交換してグレネードランチャーに変更できるさ、そうでもしないと無理だ、ははは。

 そう思った瞬間、気持ちがぷつりととぎれて、その場で眠りこけた。

 目が覚めるとあたりが真っ白だった。朝霧か、これではどちらも相手が見えないな、――相手が見えない……、なら突破口はある! 奴が何故ここまで脅威か、それはM107の威力とスコープという目があるからだ、今の状態ならスコープも役立たずだ。

 いける! いけるぞ!
 
 幸運なことに両足の骨折は治っており高熱も引いた、ゆっくり休んだおかげだ、エインヘリャルの回復能力はすごいものだ、これならやれる、僕は勇気を出して木々から飛び出し、匍匐前進で要塞へと近づいていく。

 距離400メートル、まだなにも見えない。

 距離300メートル、盛った土がへこんでいるところがあるそこから銃口が見えた
、こちらから銃口が見えると言うことは僕の影が見えると言うことだ。

 やばい!

 とっさに僕は大声を上げ銃口に向かって走り出す。

 途端にとんでくる銃声、はずれたことを確認した、突然の突撃に驚いたのだろう、相手の弾はそれた。距離280……260……240……220メートル!

 また銃声が鳴り、今度は正確にこちらに向かって撃ってくる、だが相手は高所にいることが災いして、角度的に命中精度を上げにくく、弾は上方向へそれた

 距離200メートル! 相手の姿がうっすらと見える、僕は体を伏せ相手に向かって撃つ!

 鼓膜を破りそうな音の中、残り4発。未だ手応えがない、まだだ! まだいける!

 トリガーを引き、排莢、残り3発、くそっ! 手が震えて当たらない、銃口がこちらをとらえてくる、おそらく次が最後の一撃になる、いくぞ、メリッサ! 僕を信じてくれ!

 狙いを定めて引き金を引いた瞬間、天恵があった、残り2発!  相手の肩に当たったのだろう、うっすらと影の部分が弾け飛ぶ、やった当たった、よしいけるぞ!

 だが弾は後1発しかない、しまった、もう弾がない、この弾はとどめの1発に置いておかなければならない、くそっ!

 僕は全力で敵に向かって走り出した、距離150……100メートル。息が切れ心臓が破裂しそうだ。それでも走るのをやめることはできない。相手が、力を振り絞って反撃したらそこで僕の死だ。

 50……30……20……10――僕は駆け上がりジャンプして相手を押し倒した!

「捕まえたぞ! スナイパー!!!」

 柔らかい肩を掴み、その姿をよく見る、え……少女……? とても美しい黒髪の少女がそこにいた、見覚えがある――。

「まさか……日向直子(ひゅうがなおこ)……さん……?」
「私の名前の知っているのは誰!?  え……池田佑月(いけだゆづき)……君……?」

 間違いない、スナイパーは僕の中学の初恋の相手、日向直子そのひとだった。

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