終末のヴァルキュリア 第六十八話 不器用な愛①

2020年7月4日

「佑月! 心配したぞ──!? ……エインヘリャル……!」

 訝(いぶか)しそうに立ち止まり、メリッサが日向さんに対して身構えた。しかし、日向さんは何事もないかように、迷い込んだ子羊にやさしく接した。

「ちょっとそんなに警戒しないでよ。貴女、池田くんのヴァルキュリアでしょ。スコープで小さく見えてたから、そうだよね。大丈夫、私、味方だから、ね」

 日向さんが笑いながら、立ち上がり敵意がないことを示す。
「どういうことだ……?」

 メリッサは僕に説明を求めてくる。
「私ね、池田君と同級生だったの! いろいろとつるんでてね。すごい仲良かったんだよ、それでね、一緒に戦おうってお互いに誓い合ってたの」

「そうなのか佑月……? それに、日向……直子……?」

 僕はこくりとうなずく。

「そうか、ヴァルキュリアって人の記憶を読み取ることができるんだよね、へえ~彼のこと佑月って呼んでるんだ。私も昔みたいに佑月くんって呼んでいい?」
「いいよ」

 僕は口数が少なくなっていく。

「佑月くんってかっこよくなったよね。昔はすごく内気な感じだけど、今じゃ自信を持ってて大人の男って感じ。そりゃ女ならときめくでしょ! なんてね」

 日向さんは明るく笑いながら頬を染め、熱っぽい目でこちらをちらりと見る。

「どういう意味だ……?」

 事態が把握できないのか、はたまた事態が呑み込めるゆえなのかメリッサは戸惑った様子だ。

「もう、そんな顔しないの。私こう見えて友好的なんだから、お友達になりましょう、貴女……名前はって聞いちゃいけないんだっけ。確かヴァルキュリアは自分のパートナー以外に呼ばれるのを嫌うって聞いてたし。ああ、なんて呼べばいいんだろう、困るなー」

「いい……私はメリッサだ」

「私は日向直子! 現在彼氏募集中です! 募集要項は30代で、かっこよくて、私のクラスメートで、私と気の合う人。そして優しい人。あと、包容力はたぶんあると思う」

 日向さんはこちらに向かって片目をつぶり敬礼をし、桃色の頬で柔らかく笑っている。

「何の話をしてるんだ」

 メリッサが困っている、というよりもこちらにどういうことだと問い詰める言い方だ。

「メリッサちゃん、だめだよ、彼との微妙な距離感を感じなきゃ、女の子でしょ」
「それは、私は女だが、日向直子お前は女なのか?」
「ええ、見てわからないの?」

「わかっているから聞いてるんだ」
「……? どういう意味?」

「こちらが聞きたいんだ、お前は日向直子だろ佑月の大切な……」

「佑月くん、大切に思っててくれてたんだ、よかったー、彼なんかつれないところがあるんだよね、そう思わない?」

「私は特段そうは思わないが」

「……? あなた佑月くんのヴァルキュリアだよね」
「そうだ」

「──なんか無愛想だね、女の子は愛嬌がよくないと」
「別になりたくてなったわけではない」

「女の子なんだから、女の子しようよ、佑月くんもそう思うでしょ?」

 僕はなんと言っていいか、言葉に詰まり、返答に迷った。

「私は、佑月にそのままで良いと言われた」
「あら、射程範囲外なのかな」

「どういう意味だ?」
「佑月くんってね、意外と女の子に弱いの、女子力アピールしたらすぐ照れちゃって、可愛いんだよね」

「……ほう」
「……ねえ、きみ、もう一度聞いていい? きみ、佑月くんのヴァルキュリアだよね?」

「そういうお前は佑月の何なんだ?」
「……カノジョ……かな?」

 日向さんは顔を真っ赤にして、困った感じでこちらを見つめている。中学生の美少女の姿で言われると、僕は顔が熱くなったことを感じた。

「ゆ……づき。これはどういうことだ……?」

 メリッサはこちらを見つめている。

 僕は次の言葉が出なかった。そんな残酷なことを言える男だったらいいと思った。でも僕は無理だった、何も言えない。

「佑月くん……?」
「佑月……?」

 緊張感が走る。これが運命というのか、何故こうなったのか、誰かがこうしたのか、考える時間が欲しかった、だが、女性たちは時間を求めてはいなかった。罰なのか? 誰かを愛するということの。思い出に浸ることも許されないというのか。

 しばし沈黙の時間が流れていく、空気がだんだんよどんでいくのがわかった、僕は神を恨み、憎みながらこう言い放った。

「日向さん、僕は……メリッサとつきあってるんだ」

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