小説,終末のヴァルキュリア

 僕はフード付きのマントに身を包んだ。顔を闇に潜め、フードの暗い奥から光をのぞく。神経をとがらせて、蟻(あり)一匹も見逃さない、SG552の安全装置をセミオートにスイッチを合わし、一度構える。幻影が行き交う中、一人の影に向かって引き金 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 得てして優れた能力は使いづらい。もし何事にも無制限に扱えたならば、この世界の規律に矛盾が生じる。世界は危うく精密なバランスで作られている。人の手が入ると自然界はすぐにねじ曲がった方向に傾く。

 だとすれば、時間を飛ぶなん ...

小説,終末のヴァルキュリア

 時間は帰ることの出来ない一本道。およそ誰もが書き換えたい過去がある。そして、戻れないからこそ未来へと希望を抱く。最後に老いていき、振り返って過去がどうであったか、良きことも悪しきこともすべて老いた自分につながる大切な記憶で、死を迎え ...

小説,終末のヴァルキュリア

 白銀の光りが瞼(まぶた)へと差し込み、まどろみから解き放たれる。透き通った艶やかな髪をなびかせたメリッサが笑顔で僕の顔を覗き込んでいた。清浄なる女神の眼差しで、僕の心が聖なる国へと旅立っていった、そう、空を目指す海鳥のように。

小説,終末のヴァルキュリア

 門をくぐると、世界がカラーパレットに彩られていた。

 赤い屋根、青い店の看板、薄く黄ばんだ煉瓦造りの家、植えられた街路樹の緑、濃紫の教会。前に見えるのは透き通った水色の噴水、屋根が光りに照らされ橙(だいだい)色に輝く。

小説,終末のヴァルキュリア

 風に吹かれて戦乙女の銀色の髪が舞う。揺らめく黄緑の木々の葉が囁(ささや)くように、僕たちの旅路を歓迎する。葉の間隙(かんげき)からオレンジ色の光が差し込む。柔らかな森の只中、僕たちは一歩一歩足を進めていく。

「ママ~!  ...

小説,終末のヴァルキュリア

 朝日が窓から差し込んだ。天(あめ)から降り注ぐ光が僕には眩くて、胡乱(うろん)げに目をしかめる。

 椅子に座りティータイムに勤しむ僕は、俗世との乖離(かいり)を憶え、何か優越感に浸っていた。

 この茶葉はこの ...

小説,終末のヴァルキュリア

 日は沈み、静かなる安息の夜を迎えた。昼間の騒動も落ち着き、人々には休息が必要だった。もちろん僕たちにも。

 僕とメリッサとナオコは宿屋の大きなベッドで川の字で目をつぶっていた。無論真ん中はナオコだ、変な想像はよしてくれ。 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 僕は街道を駆けめぐった。巨大飛行艇アルキメデキスから距離と角度を測り、正確な弾道が取れるポイントを探す。何せ相手は空高く飛んでいる、なら重力を考慮して軌道を測定しなければならない。丁寧に銃の照準で調べていると、側面を取るに最適な2階 ...

小説,終末のヴァルキュリア

「ヴィオネス様! 武器をお換えください。地上戦では不利です!」
「そうか、あれがあったな」

 どんどんヴィオネス達の地面が盛り上がっていく。何事かと銃を構えた。バチリと電気が弾ける音を上げ雷光が迫ってくる。僕は電流 ...