小説,終末のヴァルキュリア

 明けて暮れても僕の気持ちは晴れなかった。戦いであれば、相手が誰であろうと倒すのが当然である。それは理解できたが、相手が年端のいかぬ少女の姿であったことに、心に影を差し込ませる。

 元より、メリッサやナオコのため、この手を ...

小説,終末のヴァルキュリア

 月の光に導かれて一匹の蝶がひらりと羽ばたく。鬱蒼(うっそう)と茂る木々、光は木を境に別(わか)ち暗闇の中、虫たちの祭りが始まる。一筋の蜘蛛の糸が月に濡れて輝いている。

 その中一羽の蝶が森へと迷い込む、死に誘(いざな)う ...

小説,終末のヴァルキュリア

 リリィは泣きながら街をさまよう。自分の居場所、描いていた未来図、それらが全て消えてしまった。手を壁に付いたが、煉瓦(れんが)は冷たい。

 静まった街の声は彼女を孤独にさせて、よりどころのない矮躯(わいく)をふらふらとあて ...

小説,終末のヴァルキュリア

 灼熱の街に咲く赤い花。それは黒い闇の世界にたたずみ、 泣きながら笑う一輪の花。花びらが舞い、狂気の世界にさっとまき散らされるように声が響き渡る、無くした夢に痛みを感じながら。

「全部、全部壊れろ!」

 リリィ ...

小説,終末のヴァルキュリア

儚(はかな)き夢の花、歪な花弁は甘い香りを残して散り、消え去る。水なき雨が花を求めた蜂(はち)を痛めつけていた。

 ララァが消え、存在は陽炎(かげろう)のごとき、幻であったか。ふと、地面を見るとララァが街で盗んでいたペンダ ...

小説,終末のヴァルキュリア

 過去とは書き換えられないからこそ価値がある。後悔したり、絶望したり。そういった人生の苦しみ痛み、そして挫折した足跡があるからこそ、未来が輝いて見える。僕はそう思う。

 
「リリィ、こっちに来てはだめ! ご主人様、 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 僕はフード付きのマントに身を包んだ。顔を闇に潜め、フードの暗い奥から光をのぞく。神経をとがらせて、蟻(あり)一匹も見逃さない、SG552の安全装置をセミオートにスイッチを合わし、一度構える。幻影が行き交う中、一人の影に向かって引き金 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 得てして優れた能力は使いづらい。もし何事にも無制限に扱えたならば、この世界の規律に矛盾が生じる。世界は危うく精密なバランスで作られている。人の手が入ると自然界はすぐにねじ曲がった方向に傾く。

 だとすれば、時間を飛ぶなん ...

小説,終末のヴァルキュリア

 時間は帰ることの出来ない一本道。およそ誰もが書き換えたい過去がある。そして、戻れないからこそ未来へと希望を抱く。最後に老いていき、振り返って過去がどうであったか、良きことも悪しきこともすべて老いた自分につながる大切な記憶で、死を迎え ...

小説,終末のヴァルキュリア

 漆黒の蜃気楼、人々の生命を絡めとるように渦巻く暗澹(あんたん)たる世界で空を死の匂いで埋め尽くす。暗く沈む死の太陽の黒の球体。靄(もや)がかかった暗黒の体に赤い線がひかれて血で描いた様で、また、傷口を広げるように歪んだ口と目が現れる ...