小説,終末のヴァルキュリア

 ひたり、ひたりと水が滴(したた)り落ちる音がする、ナオコが目を覚ますとそこはまた石牢の中だった。暗く灯りがなく心細さが体を凍えさせ、ナオコが起き上がろうとすると頬が地面の石に張り付いている、痛みをこらえながらはがすとべりっと小さく音 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 穏やかな時間が僕には流れていた、森の中鳥たちの囀(さえず)りに歌われて、子ウサギに似た小動物に対し銃で仕留めた。一応、メリッサは家出したとはいえ、武器だけは渡して出ていった、つまり帰る気があるのだろう。なら、僕の誠意次第かな。

小説,終末のヴァルキュリア

 灼熱の街に咲く赤い花。それは黒い闇の世界にたたずみ、 泣きながら笑う一輪の花。花びらが舞い、狂気の世界にさっとまき散らされるように声が響き渡る、無くした夢に痛みを感じながら。

「全部、全部壊れろ!」

 リリィ ...

小説,終末のヴァルキュリア

 漆黒の蜃気楼、人々の生命を絡めとるように渦巻く暗澹(あんたん)たる世界で空を死の匂いで埋め尽くす。暗く沈む死の太陽の黒の球体。靄(もや)がかかった暗黒の体に赤い線がひかれて血で描いた様で、また、傷口を広げるように歪んだ口と目が現れる ...

小説,終末のヴァルキュリア

「おい、やめろ!」

 僕は男の店の主人の腕をつかみ、幼女との間に入って暴行を止めた。衝動的な感情に駆られて体は理性ではなく情で動いていた。

「なんだあ、てめえ。外人か、すっこん出ろ!」
 男の店の主人に ...

小説,終末のヴァルキュリア

「え………………? うそ……。うそ……だよね?」
 日向さんは言葉を詰まらせ、身を強張らせた。

「嘘じゃない私と佑月は付き合っているんだ」
 メリッサが畳みかけたため、僕はいたたまれなくて目をつぶったのであ ...

小説,終末のヴァルキュリア

 スナイパーのいると思われる山に真っ正面から登らずにのとなりの山に登った。もし、真正面から行くと相手に気づかれるかもしれない、敵は油断のならぬ相手、もしかすると何重にも罠を張り巡らせているかもしれない。なら、横から奇襲をかけるのが常道 ...

小説,終末のヴァルキュリア

「どういうことだ? 絶望的だと言っていたじゃないか、何か必勝の策が思いついたのか?」

 メリッサの問いに軽く明朗な口調で答える。

「必勝の策なんてないよ。ただ作戦は思いついた。僕は自信がある」
「佑月( ...

小説,終末のヴァルキュリア

「ねえ~ユヅ。ドルトの町についたよ、これで、やっと、宿に寝られるね!」

 一週間ほど移動で歩いたがメリッサはずっとこの調子だった。
気持ちが沸き立つのは理解出来るが、このハイテンションに付き合うのは本当に疲れる。ど ...

小説,終末のヴァルキュリア

 嵐が去って僕たちの次の目標地ベリカに向かって、鬱蒼(うっそう)とした森の中を歩いていると、漫然と木々を見つめている、白くて可憐な柊の花のようなものが咲いていた。じっとみつめていると、メリッサがこちらの様子を覗(うかが)って、「あれは ...