小説,終末のヴァルキュリア

 ひたり、ひたりと水が滴(したた)り落ちる音がする、ナオコが目を覚ますとそこはまた石牢の中だった。暗く灯りがなく心細さが体を凍えさせ、ナオコが起き上がろうとすると頬が地面の石に張り付いている、痛みをこらえながらはがすとべりっと小さく音 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 穏やかな時間が僕には流れていた、森の中鳥たちの囀(さえず)りに歌われて、子ウサギに似た小動物に対し銃で仕留めた。一応、メリッサは家出したとはいえ、武器だけは渡して出ていった、つまり帰る気があるのだろう。なら、僕の誠意次第かな。

小説,終末のヴァルキュリア

「パパ、お腹空いた」
「僕も空いてるんだ、少し待ってくれ」

 街の人や宿の人間と会話が通じない以上、自分で食料調達するしかない。一般市民や農村から強奪する気はない、いらぬ騒動は自分の立場を悪くする。ラグナロクは少し ...

小説,終末のヴァルキュリア

「ねえ、ママが家出ってどういうこと?」

 子どもとしてナオコが心を痛めるのは当然だ、母親が家出なんて。しかし、何て説明すればいい、子どもに。父親役の僕が母親役のメリッサにうまく欲情しなかったって言えるのか……? いや、無理 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 ここミランディアでは穏やかな日々を過ごしていた。敵襲されることはなかったし、エインヘリャルと出会うこともなかった。移ろいゆく日々を家族で過ごせることは僕にとって、たいへん喜ばしいことだった。

 日本では社会に出てからは孤 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 明けて暮れても僕の気持ちは晴れなかった。戦いであれば、相手が誰であろうと倒すのが当然である。それは理解できたが、相手が年端のいかぬ少女の姿であったことに、心に影を差し込ませる。

 元より、メリッサやナオコのため、この手を ...

小説,終末のヴァルキュリア

 月の光に導かれて一匹の蝶がひらりと羽ばたく。鬱蒼(うっそう)と茂る木々、光は木を境に別(わか)ち暗闇の中、虫たちの祭りが始まる。一筋の蜘蛛の糸が月に濡れて輝いている。

 その中一羽の蝶が森へと迷い込む、死に誘(いざな)う ...

小説,終末のヴァルキュリア

 リリィは泣きながら街をさまよう。自分の居場所、描いていた未来図、それらが全て消えてしまった。手を壁に付いたが、煉瓦(れんが)は冷たい。

 静まった街の声は彼女を孤独にさせて、よりどころのない矮躯(わいく)をふらふらとあて ...

小説,終末のヴァルキュリア

 灼熱の街に咲く赤い花。それは黒い闇の世界にたたずみ、 泣きながら笑う一輪の花。花びらが舞い、狂気の世界にさっとまき散らされるように声が響き渡る、無くした夢に痛みを感じながら。

「全部、全部壊れろ!」

 リリィ ...

小説,終末のヴァルキュリア

儚(はかな)き夢の花、歪な花弁は甘い香りを残して散り、消え去る。水なき雨が花を求めた蜂(はち)を痛めつけていた。

 ララァが消え、存在は陽炎(かげろう)のごとき、幻であったか。ふと、地面を見るとララァが街で盗んでいたペンダ ...