小説,終末のヴァルキュリア

儚(はかな)き夢の花、歪な花弁は甘い香りを残して散り、消え去る。水なき雨が花を求めた蜂(はち)を痛めつけていた。

 ララァが消え、存在は陽炎(かげろう)のごとき、幻であったか。ふと、地面を見るとララァが街で盗んでいたペンダ ...

小説,終末のヴァルキュリア

 過去とは書き換えられないからこそ価値がある。後悔したり、絶望したり。そういった人生の苦しみ痛み、そして挫折した足跡があるからこそ、未来が輝いて見える。僕はそう思う。

 
「リリィ、こっちに来てはだめ! ご主人様、 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 僕はフード付きのマントに身を包んだ。顔を闇に潜め、フードの暗い奥から光をのぞく。神経をとがらせて、蟻(あり)一匹も見逃さない、SG552の安全装置をセミオートにスイッチを合わし、一度構える。幻影が行き交う中、一人の影に向かって引き金 ...

小説,終末のヴァルキュリア

 得てして優れた能力は使いづらい。もし何事にも無制限に扱えたならば、この世界の規律に矛盾が生じる。世界は危うく精密なバランスで作られている。人の手が入ると自然界はすぐにねじ曲がった方向に傾く。

 だとすれば、時間を飛ぶなん ...

小説,終末のヴァルキュリア

 時間は帰ることの出来ない一本道。およそ誰もが書き換えたい過去がある。そして、戻れないからこそ未来へと希望を抱く。最後に老いていき、振り返って過去がどうであったか、良きことも悪しきこともすべて老いた自分につながる大切な記憶で、死を迎え ...

小説,終末のヴァルキュリア

 漆黒の蜃気楼、人々の生命を絡めとるように渦巻く暗澹(あんたん)たる世界で空を死の匂いで埋め尽くす。暗く沈む死の太陽の黒の球体。靄(もや)がかかった暗黒の体に赤い線がひかれて血で描いた様で、また、傷口を広げるように歪んだ口と目が現れる ...

小説,終末のヴァルキュリア

 白銀の光りが瞼(まぶた)へと差し込み、まどろみから解き放たれる。透き通った艶やかな髪をなびかせたメリッサが笑顔で僕の顔を覗き込んでいた。清浄なる女神の眼差しで、僕の心が聖なる国へと旅立っていった、そう、空を目指す海鳥のように。

小説,終末のヴァルキュリア

 門をくぐると、世界がカラーパレットに彩られていた。

 赤い屋根、青い店の看板、薄く黄ばんだ煉瓦造りの家、植えられた街路樹の緑、濃紫の教会。前に見えるのは透き通った水色の噴水、屋根が光りに照らされ橙(だいだい)色に輝く。

小説,終末のヴァルキュリア

 風に吹かれて戦乙女の銀色の髪が舞う。揺らめく黄緑の木々の葉が囁(ささや)くように、僕たちの旅路を歓迎する。葉の間隙(かんげき)からオレンジ色の光が差し込む。柔らかな森の只中、僕たちは一歩一歩足を進めていく。

「ママ~!  ...

小説,終末のヴァルキュリア

 朝日が窓から差し込んだ。天(あめ)から降り注ぐ光が僕には眩くて、胡乱(うろん)げに目をしかめる。

 椅子に座りティータイムに勤しむ僕は、俗世との乖離(かいり)を憶え、何か優越感に浸っていた。

 この茶葉はこの ...